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第20話 3rdシングルのオンライン個別トーク会……メイメイのテンションが低いぞ?

 今日からしばらくは、平日の夜と土日にかけて、3rdシングル予約購入特典のオンライン個別トーク会が始まる。


 4/26(金)が3rdシングルの発売日で、4/27(土)が定期公演#3という日程感。


 しかし、あれだね……まだシングルのタイトルが発表されていないからって、名前が『3rdシングルタイトル未定』オンライン個別トーク会って……こんなんで予約させていいのかなって思うけど、この業界の慣例みたいなものだから、それに対してお客さんもまったく疑問を持っていないんだよね。改めて考えるとへんなのー。


 今回のリリイベは実質このオンライン個別トーク会だけで、ミニライブなどはなし。まあ、今年は定期公演をやっているから、さすがにスケジュールきつすぎ問題はあるかな。あと2週間で3rdシングルから2曲の振り付けをマスターしないといけないし……。


「今日ははじめましての人が多いから緊張しますね……」


 気づけばメイメイは、さっきからずっと、ペットボトルのフタを開けては1口水を飲み、またフタを閉めて、すぐまたフタを開けて1口水を飲み、を繰り返していた。

 緊張してるって自己申告? うーん、ボクとしては緊張よりも、テンションの低さのほうが気になるんだけどね。


「言うほどそんなにはじめましてかな? 予約リスト見てよ。この人も、この人も、この人も、『ゲリラ豪雨』ずっと見てくれてた人じゃん?」


「オンライン個別トーク会で直接話すのは初めてなんですよ~」


 メイメイの目が泳ぎまくっている。

 ひさしぶりに登場した弱気なメイメイだなあ。しばらくファンの人たちの交流がなかったから、また前の人見知りに戻っちゃった?


「まあそりゃね、直接話すのはそうだけどさ。ずっと一緒に配信してコメントしてくれてた人たちばっかりだから、変によそよそしくアイサツするより、いつも通りテンション上げて話しかけてあげたほうが、ファンの人たちも安心するんじゃないかな?」


「そうですけど~」


 何をそんなにモジモジしてるのさー。大丈夫だよ、みんな味方だって。


「そういえば、今日は対決カードなし?」


「カード……用意すれば良かったかな……」


 メイメイはボールペンを指で回しながらため息をつく。


 対決カードとは、1stシングル発売記念のオンライン個別トーク会の時にメイメイが編み出した知らない人とも会話を盛り上げる必殺のアイテムなのだ。

 たとえば『私が好きなラーメンの種類』と書かれたカードを引いたとして、ファンの人がメイメイが好きなラーメンの種類を当てられたら勝ち、というシンプルなゲームをするわけ。

 ちなみにメイメイの答えと一致して勝負に勝つと、トーク会終了後にメイメイのSNSアカウント上に宛名とサインの入った特別写真がアップロードされるので、各自好きにダウンロードして保存できるという特典付き。オンライン個別トーク会終了後に、本日の私服で撮影するから、その日限りのレアアイテムだぞー。


「ま、対決カードは今日の様子を見てみて、必要そうなら明日の枠からは準備しようね」


「はい~」


 うーん、やっぱりテンション低いなあ。しかたない。ここはこんな時のために用意しておいた、とっておきのアイツの出番かな?


「そうだ、メイメイ。せっかくこれからオンライン個別トーク会が始まるわけだし、テンションぶち上げの景気づけに、甘いものでも食べる?」


「甘いもの! 食べます~!」


 ふふ。やっぱりメイメイにはスイーツだね。一瞬で目が輝いてまあ、スイーツを前にしたメイメイはホントにかわいいね。


「じゃあこれー。ボクが手作りしたトリュフチョコレートだよー」


「トリュフ⁉ トリュフかぁ……」


 目に見えてテンションが下がるメイメイ。

 先日トリュフキノコを入れて大失敗したトラウマだろうね。ま、これはわざとだけど。


「これがホントのトリュフチョコレートだ! 食らいやがれ! あーん!」


 大きくて真ん丸のボールを、メイメイの口に放り込む。


「お、おいしいです~! これはもしかして、シェフの味⁉」


 お、するどいね! メイメイ作の激マズトリュフキノコチョコレートを食べた後、ボクは食堂に駆け込んだわけ。それでシェフに頼みに頼み込んで、チョコレート菓子の修行をつけてもらったのさ!

 シェフの修行は死ぬほど厳しかったよー。テンパリングだけで毎日みっちり5時間は修業したからね……。最後手伝ってもらってようやく……しかしどうだい? ボクだってけっこうやれるでしょ?

 

 とか言っていると、あっという間に20個のトリュフチョコレートがメイメイの口に吸い込まれて消えていた。


 みごと完売だ!


「お粗末!」


 あ、もちろんメイメイはアイドルなので、おはだけ的な演出はありません。悪しからず。


「元気出ました~! カエくんありがと~!」


「あ、うん。それは良かった。もう二度と食べ物で遊ばないようにね……って、口の中が茶色い……ダッシュで歯を磨いてきてくれる?」


「は~い。ダッシュします~!」


 オンライン個別トーク会開始まで残り5分。

 ココアパウダー盛り盛りのトリュフチョコレートを与えたのは失敗だったか……。今度からは口が汚れないスイーツを学んでこようと思います。


 反省終わり。


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