表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第六章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #3編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

306/444

第10話 ナギチ、怒ってます!

「なんでボクが……」


 あれはレイが勝手にやったことでしょうよ。


 蝶ネクタイ型の麻酔銃だっけ?

 レイが麻里さんから借りてきて、独断でナギチを消したんだよ?

 ボク関係ないじゃん。


「私、怒ってるんだからねっ!」


「はい……」


 目の前にいるのはナギチ。

 ほっぺたをぷっくり膨らませて怒っていますアピール全開中。


「起こさなかったのは悪かったと思っているって……」


「それもだけど!」


「他にも何か……ああ、桜餅食べられなかったから?」


 お取り寄せグルメのサイト、まだ桜餅を取り扱ってるかな。


「違いますぅ~!」


 不正解だったご様子。

 ああっ、余計に機嫌が悪くなったっぽい……。


「あれはレイが――」


「言い訳しないっ!」


「はい……」


 言い訳じゃないんだけどなあ。うーん、最後まで弁明させてもらえない……。


「カエちゃんは名探偵なんでしょ! 私が何で怒ってるのか早く当てて!」


 うわー、めちゃだるー。無茶ぶりも良いとこじゃんか。

 まさかこれって、正解のないクイズなんじゃ?

 リンゴをどこで買ったのか……聞いて欲しいの……そして残りのリンゴを一緒に買いに行って欲しいの……それが答え……のやつじゃない⁉


 つまり答えは沈黙……!


「なんで黙ってるの⁉ 私、怒ってるんですからねっ!」


 やべー、違った……。

 まったく正解がわからないよ……。


 うーん。

 針が痛かった……いや、たぶんナギチ、痛いのは好きだよね。

 ダメだ! いくら考えてもわからない!


 とりあえず――。


「ごめんね。ゆっくり謝罪したいから、ちょっと一緒に外、歩いてくれない?」


「……うん」


 おお。時間稼ぎ成功だ。


「ん……」


「何?」


「んっ!」


「ん?」


 ナギチがボクの顔の前にこぶしを突き出して唸っている。

 いや、マジで何?

 このこぶしに殴られろってこと?


「んっ!」


 あれ? もしかして……?


 ナギチのこぶしを自分の両手で包んでから、そっと指をほどいて手をつないでみる。


「うん……」


 顔を赤らめて頷くナギチ。


 お、おお……正解だったわ。

 ナギチ……お前はカンタなのか? 「ん」じゃ、人はわからないんだよ……。手を繋いでほしいなら素直にそう言ってくださいよ。


 いや、その……指を絡めて……恋人繋ぎはちょっと恥ずかしいんですけど……まあ、機嫌が直るなら少しはガマンしますけど……。



 ボクとナギチは手を繋いだまま、ビルのエントランスを抜けて外に出る。

 春だなあ。

 午後の日差しがとっても温かい。


「あ、ちょっと待って」


 ビルを出たところで、ナギチがパッと手を離し、ポケットから何かを取り出した。

 ああ、マスク。


「ナギチも芸能人だもんねー。マスクで変装したいくらいのお年頃だ!」


 そういうのって意識が大事って、たしかマキが言ってた気がするし。


「違うわよ……」


「違うの? サングラスもしたほうがいいよ?」


 顔よりでっかい色付きのレンズのやつー。


「だから変装じゃなくて花粉症なの!」


「なーんだ。ナギチ花粉症なんだ? でももう4月だよ?」


 スギ花粉もピークは過ぎてる気がするけど。


「私、ヒノキのほうがひどいのよ」


「あー、そうなんだ。ヒノキはこれからの時期だったっけ?」


「そうよ……ゆううつ~。黄砂もひどいらしいし~」


 ナギチが深いため息をつく、のに合わせてマスクが膨らんでからしぼんだ。


「黄砂かあ。ボクは黄砂も別に平気だし、花粉症にもなったことないんだけど、みんなつらそうだよね。ナギチは鼻水? それともくしゃみ?」


「私は、目以外は全部……薬飲んでてもつらいの……」


「うへー、それはきつそう……」


 そういえば、最近はアレルギー治療もいろいろ進化してきているって聞くけど。


「舌下治療とか、鼻の粘膜焼いたりとか、なんかそういう治療はしないの?」


「いろいろ試したけれど効果が薄くて……あとは……」


 あとは?


「麻里さんから勧められてる遺伝子改造手術をするしか……」


「いや、それはやめよう! 絶対やめよう!」


 遺伝子改造手術はやばい!

 ネーミングがとにかくやばい!


「だけど、麻里さんが言うには、『まったくアレルギー反応が出なくなる体になれる』って……」


「その言い方って、花粉症以外のことも含んでるでしょ。人じゃない何かに改造されるでしょ……」


 ボクが言うのもなんだけどさ、ナギチは人のままでいてほしいな……。


「でも、ついでにバストサイズも上がるし、ウエストも細くなるし、ヒップサイズも思いのままって……」


「ガチの人体改造じゃんか。だまされるんじゃない!」


 ナギチは実験体になるな!

 自然なままのナギチでいてほしい!


「でもでも、カエちゃんだってスタイルの良い子が好きでしょ?」


「……ううん? ぜんぜん?」


「うそだー。私がもっとスタイル良ければかまってくれるんでしょ?」


「ううん。ナギチは今のままですっごく魅力的だから大丈夫だよ!」


 人体改造はダメ、ゼッタイ!


「私のこと好き?」


「うんうん、好き好きー。ほら、こんなところで立ち話してないで、駅前の喫茶店に行って甘いものでも食べよう?」


「私のこと好き?」


「だから好きだってばー」


 まったく、何度言わせるのかね。

 5歩進むごとにその質問に答えていたら、いつまで経っても喫茶店につかないんだけど……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ