表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

301/339

第5話 小宮桜生誕祭2024 その2~今川焼戦争再び

「え~、以上、衆議院議員候補・小宮桜さんによる選挙演説でした~。みなさん盛大な拍手を~」


 というカンペをハルルが読み上げた。

 メンバー、そして裏方のボクたちも拍手をして盛り上げる。


“気づかない間に立候補してたwww”

“急に衆議院でんなw”

“バースデー出馬ワロスw”

“今選挙やってないからな”

“地方の市会議員くらいならいける”

“議員舐めんな”

“お?議員さんちーっす”


 政治家になるのは、トップアイドルになったあとですよね。でもサクにゃんは仮にアイドルを引退したとしても、その後議員にはならないだろうな。しいて言ったら誰だろう……予算委員会で「総理、異議あり!」とか言っているメイメイ……はちょっと想像つかないな。


「は~い、それではさっそく今日の企画を発表……の前に、サプライズプレゼントをご用意しました~。オホンオホン」


 ハルルがわざとらしくボクに合図をする。

 例のモノを持ってこい、という指示だ。台本(真)通りなので、別に指示されなくてもわかっているのだけれど、真実味を出すために、このやり取りすらも台本に書かれているのだ。


「ハッピーバースデーのケーキ! ではなくてですね。サクラ……桜の季節、というわけで、日本各地の桜餅&道明寺を集めてみました~!」


 ボクはお盆にたくさんの桜餅&道明寺を乗せて、カメラ前のテーブルまで運んでいく。


“おっす楓”

“楓きた”

“かえでちゅゎあ~ん”

“カエデカエデ!”

“パンツ見えてるぞ”

“どこどこ”

“騙されたかw”

“べ、別に見たくねえし!”

“けっこう種類あるな”

“桜餅って食べたことない”

“桜の葉でくるんだ和菓子だろ”

“道明寺って何?寺?”



「こらカメラ! 下から撮るんじゃない! コメント欄が調子に乗るから、そういうサービスはしなくていいからね⁉」


 まったく。

 すーぐコメントを拾ってサービスしようとするんだから。

 でも残念。下にちゃんとペチコート履いてますー。パンツは見えませんー。


「ほら、カメラさん、ボクのスカートの中じゃなくてこっち撮って。ね、きれいでしょう。左半分が桜餅で、右半分が道明寺ね。ちなみに道明寺は関西で主に食べられている桜餅の種類のことー。『道明寺』というお寺で最初に作られた桜餅だからそう呼ばれています。同じく関東風の桜餅も、最初に作られたお寺の名前『長命寺』とも呼ばれたりします。以上説明でした」


 パチパチパチ。


「カエデちゃん説明最高! 私知らなかったわ~」

 

「カエくん博識です~。わ~わ~、ドンドンドン! ヒュ~ドロドロドロ」


「楓さんステキですわ! わたくしは道明寺の食感ほうが好きですわ~」


「カエちゃん、あ~ん♡」


 3人ともわざとらしいから! バレたら困るからもっと自然にして! あとナギチはホント静かにしてて。


“暗記乙”

“道明寺は知ってるけど長明寺っていうのは知らなかったな”

“関東では桜餅の名前のほうが通りがいいな”

“長明寺がどこにあるのか知らない”

“今度は熱い渋茶が一杯怖い”

“先に桜餅食ってんじゃねーよw”



「はい、ではボクは引っ込みます。サクにゃん、誕生日おめでとう。みんなで仲良く食べてね」


「コーチ! ありがとうございます!」


 サクにゃんが深々と頭を下げる様子をアップで抜きつつ、ボクはフレームアウト。

 ふう、仕事(表向きのやつ)は終わったー。


「どれもおいしそうね~。サクラはどの桜餅が気になる?」


 ハルルがサクにゃんに話を振っていく。


「サクラは……このピンクの皮が桜の花びらみたいになっている桜餅が気になります」


 サクにゃんが指さした桜餅にカメラが寄る。


「かわいいわね。えっとこれは……埼玉のお店で売られている桜餅らしいわよ。つまり長命寺のほうね」


「そうなんですね~。サクラは関東派でみっちゃんは関西派……」


「戦争、ですわね……」


 サクにゃんとウーミーが向かい合って立つ。

 急に不穏な⁉


「ちょっと2人とも⁉ 桜餅にそんな戦争はないわよ⁉ 長命寺も道明寺も両方売っているお店のほうが多いんだからね?」


「戦わなくて良いんですの……?」


「やだな~2人とも。長命寺も道明寺も粉から違うから、まったく違う食べ物だよ~♡」


 さすがパティシエール・ナギサ。製造方法から入ると説得力が違う!


「ね~。今川焼と回転焼じゃないんだから~♡」


 あっ。


「おやきです~!」


「大判焼きです!」


「今川焼!」


「今川焼……? 聞いたことがありませんわ」


 ああっ! 始まってしまった!


“さすがにこればっかりは譲れねー”

“大判焼きが全国シェアNo.1これマメな”

“おやきに決まってるだろ”

“今川!”

“御座候に決まっておろう!”

“回転焼き以外認められていない”

“ベイクドモチョチョ”


 ダメだ。コメント欄でも始まってしまった……。どうしてみんなあの丸くて焼いた食べ物に並々ならぬ情熱を燃やすんだろう。みんな普段そんなに食べてないでしょ!


『ハルル! 今川焼戦争は切り上げて、実食に入って!』


 そう、そろそろ台本(真)の夏目早月道明寺殺人事件に入らなければ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ