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第4話 小宮桜生誕祭2024 その1~誠心誠意アイドル業に取り組みます

「みなさんこんにちは~!≪The Beginning of Summer≫です!」


 ハルルの第一声。

 楽しい楽しい生配信のスタートだ。

 

 全員席に着いて、カメラに向かって笑顔で手を振る。

 配信の時には固定化された席順だ。

 前列に左からハルルとサクにゃん。後列にナギチ、ウーミー、メイメイ。


「そして~!」


「「「「小宮桜生誕祭2024」」」」


 4人がきれいに声を合わせてタイトルコール。

 ボクたちマネージャー陣が一斉にクラッカーを鳴らす。

 ハッピーバースデーのBGMも一緒にね。


「みなさん、ありがとうございます!」


 桜色のドレス姿のサクにゃんが立ち上がって、深々とお辞儀をする。



“おめでとう!”

“さくらー!”

“あいあいあいあいしてるー!”

“ボクらのサクラ愛してる~!”

“誕生日おめでとう”

“桜満開!!!”

“ウーミーさん、今の心境は?”

“夜桜の下で配信見てる。お供はもちろん出羽桜の桜花!”

“おめおめおめー”


「ということでですね。今日はなんと、我らが小宮桜、16歳の記念すべきバースデーなんですよ~!」


「サクにゃんおっとな~♪」


「サクちゃんおめでとう~」


「さっちゃん……本当におめでとうございますわ」


「ちょっと~。ウミ! うれしいのはわかるけど、泣かないのよ~」


「みっちゃん、どこか痛いの? 大丈夫ですか?」


 ハルルが苦笑しているのをよそに、サクにゃんが本気で心配してウーミーのもとに駆け寄る。

 ウーミー、涙はまだちょっと早いな……。今オープニングだからね?



「大丈夫、大丈夫ですわ。さっちゃんがみなさんにお祝いされているのがうれしくて……」


「ありがとうね! サクラも16歳になれてうれしいです!」


 泣きながら抱き合う二人。


“なにこれ目から水が”

“もらい泣き”

“心が浄化されていく”

“ええ話や”

“エンダーーーーーーー”

“愛してるって最近~”

“キマシタワー!!!!!”

“#海桜スペシャル”

“早くもクライマックス!”


 いやそうなのよ、これ、完全にエンディングの絵なのよね。……ねえ、総合演出のシオ?……ってお前も泣いてるのかーい!


 何? サクにゃんの成長に感動して? 完全に親目線やないかーい!


 ダメだ。今日のシオは使い物にならなそう……。ああっ、こんな日に限って都もウタもいない。なんだよ別件って! アイドルの生誕祭以上の別件なんてないでしょ! このあと壮大なサプライズが待っているっていうのに! 全員のチームプレイで行かないとうまくいくものもうまくいかなくなるんだよ? 脚本のメイメイは出演中なんだし、ボクたちが汗をかいてシナリオ通りに進めなきゃ!


(かえでくん、わたしは準備できています)


 おお、怪人X!


(フハハハハハハハ)


 さすが、完璧だ!

 今回のシナリオでレイにかかる負担は大きい。頼みますよ。


(我に任せよ)


 完璧だ!



「もしも~し、サクラさ~ん? そろそろ、お席に戻っていただいて~」


 ハルルが台本(偽)の通りに進行をしようと声をかける。


「誕生日を迎えた大変おめでたい日に、これからの意気込みと言いますか、抱負みたいなものを語ってもらいたいな~って思うんですけど、大丈夫かしら?」


 ハッとした顔でウーミーから体を離すサクにゃん。


「はい! サクラとしたことが! 今日は主役! ちゃんとします!」


 カチコチサクにゃん。

 いや、まあ、いつもちゃんとしてはいるから、そこは心配してないんだけど、硬くなりすぎて噛み噛みサクにゃんが出てこないようにね?


 サクにゃんが慌てて自席に戻り、ポンポンとドレスのスカートを整える。


「はい! 抱負語ります! よろしくお願いします!」


 気合い入ってるなあ。

 体育祭の選手宣誓並みに気合いが入っている。


「今年は、これまで以上に飛躍の年とするべく、粉骨砕身して皆様のお役に立ちたいと思っています! つきましては――」


 硬い!


『抱負硬すぎるよ! もっと柔らかいテイストにして!』


「目標達成に向けて日夜努力し、皆々様の熱い支援に十分お応えできるように誠心誠意アイドル業に取り組んでまいりたいと思います!」


 ダメだ。カンペを見やしない。

 体育祭の選手宣誓を通り越して、政治家の選挙活動までいっちゃってるじゃんか……。

 なんだよ、誠心誠意アイドル業に取り組むって……。


 コメント欄爆笑の渦じゃん。

 真面目系ポンコツって書かれてる。これは反論できない!


「さっちゃん、ブラボーですわ!」


 ウーミーが1人立ち上がって拍手を送っている。


 ダメだ、おバカさんがもう1人いたわ……。


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