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第3話 アイドルグループのマネージャーですか?

「いや、だれだよ⁉」


 思わず叫んでしまう。

 

 目を覚ますと突然、美少女(?)になっていました。


 マンガで読んだことあるやつー。

 はいはい、夢ね。ゆめゆめ。

 

 どうせ夢ならメイメイに会いたいよ。

 メイメイは今何をしてるのかな……。


 鏡に映るのは、少し悲しげなたれ目の女の子。色の上下ジャージ姿。

 

 申し訳ないけど、ボクの夢、地味だな!

 まあまあ愛嬌はあるしかわいいんだけどさ。

 どうせならメイメイになるとか……なりたくはないか。それは恐れ多いわ。だとしたら≪初夏≫のメンバーとか。うーん。



「七瀬さん、次、お願いします」


 お手洗いから戻ると、お姉さんに笑顔で迎えられてしまった。


「すみません、遅くなりました……」


 頭を下げながら、小走りで長机の前に立つ。スタンバイ。

 

 次は歌うんだっけ?

 ……この夢どうするのさ。

 まあ、≪初夏≫の曲なら歌うけどさ?


「七瀬さん、ダンスは大丈夫なので。次は歌だけで」


「あ、はい。すみません」


 がっつりポージングしてスタンバってしまった。はずかしい。

 無表情のままスッと立ち上がる。いや、顔赤いわ。


「いきます」


 お姉さんの合図とともに音楽がかかる。

 先ほどと同じ、『The Beginning of Summer』だ。


 ボクは目を閉じ、歌い始める。


 ああ、なんて気持ちがいいんだろう。

 ダンスの時も思ったけれど、体はしなやかに動くし声もいい。無理せず高音が歌える。気持ちいい。ずっと歌っていたい。


 終わってしまう。もっと――。



「ありがとうございました」


「ありがとうございました。結果は別室でお伝えしますのでしばらくお待ちくださいね」


 お姉さんはそう言ってお手洗いとは反対方向にある扉を指さす。 

 結果? カラオケの点数かな?

 わりとうまく歌えたからけっこう良い点出るんじゃないかな♪




 示された扉を開けた先は、さっきと同じつくりの部屋。

 長机はなく、イスが5脚。すでに4席は埋まっている。


 視線が集中するのを感じる。

 軽く会釈しながら、空いているイスに腰掛け、改めて周りを見渡してみた。


 高校生くらいの女の子が4人。みんなおそろいのえんじ色のジャージを着ている。

 

 すでに全員ボクへの興味は失っているようで、スマホをいじったり、ストレッチしたり、それぞれの活動にいそしんでいた。


 ダンスして歌って、結果が出る……。

 もしかしてオーディション?


 こんな夢を見るなんて、ボクってアイドルになりたい願望でもあったりしたのかしら?

 女の子になって、≪初夏≫の新メンバーになりたい願望?

 いやいや、ないでしょ、さすがに。それは性癖歪みすぎ。


 背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。



* * *


 30分ほど待たされたところで、入ってきたところの扉が開く。


「みなさん、お疲れさまでした。そしてお待たせしました」


 お姉さん、と大人3人たちがぞろぞろと部屋へ入ってきた。



「ではこちらの紙をご覧ください」


 そう言って、ジャージの女の子1人ひとりに文字がびっしり書かれた1枚の紙を手渡していく。


「内容は事前にお話ししていた通りです。念のため最初から最後までよく読んでから署名捺印し、後日お持ちください。未成年の方は保護者の方の署名が必要になりますのでよろしくお願いいたします」


 なになに?

 雇入契約書とな。

 なんだ、アルバイトの面接だったのかあ。

 アイドルオーディションじゃないじゃん! この夢、やっぱり地味‼


 それで時給は、ふむふむ……。


 業務内容が、甲指定のタレント・アイドル育成、マネジメント業務。


 これってアイドルのマネージャーってこと?

 アルバイトの面接じゃないの?


「すみません、この内容って……」


 恐る恐るお姉さんに話しかけてみる。


「はい、どこか不明点がありますか?」


「えっと、このアイドル育成、マネジメント業務ってつまり?」


「事前にお伝えしていた通りです。七瀬さんには、これから弊社でプロデュース予定のアイドルグループのマネージャーとして働いてほしいのです」


「アイドルグループのマネージャー……」


 そうですよね、そう書いてありますね。この夢、地味を通り越して複雑!

 アイドルのマネージャーが何やるかなんて知らないよ!


「不安そうですね。業務内容は研修期間に覚えていただくことになりますので安心してください」


 お姉さんはにこやかにほほ笑む。

 

「はい、研修期間……」


「もう少し具体的に申し上げると、これからアイドル候補の子たちのオーディションが行われますので、候補の子たち1人1人にみなさんが専属マネージャーとしてついてもらうことになります」


「候補の子にマネージャーがつくんですか?」


「そうですね、少しめずらしいかもしれませんね。5人1組のグループを複数作り、グループ同士で競ってもらう形式のオーディションを予定しています。みなさんは同じグループの子たちを担当してもらうマネージャーグループになります」


 ややこしい。

 アイドル5人にマネージャー5人。

 アイドルグループ同士が競ってオーディションを勝ち抜くのか。


「そのグループが勝ち抜くと?」


「1組のグループと正式契約し、デビューとなる予定です」


 そうですよね。オーディションだからそうなりますよね。


「みなさんマネージャーグループもその時同時に正式契約となります」


「なるほどです」


 そういうことではなくてね?

 なんかアイドルオーディションバトルに巻き込まれたぞ!

 

 この夢なんか壮大になってきたかも⁉

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