第56話 定期公演#2 その5~ドキドキ♡いたずらする?される?映像を見ても平常心を保て!~負けたら1日はずかしメイド対決~!(3)
ナレーションの都の弾むような声により、1回戦終了の宣言がなされた。
『第1回戦終了です。いや~、非常に白熱したバトルでしたね! 会場のみなさんも、配信のみなさんも大盛り上がりでした』
そう、ですか。それはようござんしたね……。
もう舞台上のボクたちはダブルノックアウト状態なのですがね……。
ほら見て、ハルルの顔をさ。
完全に魂が抜けきってる……。今の心拍数45……って昇天しちゃう!
「ハルル! 戻ってこいっ! 寝たら死ぬぞ!」
「……寝てないわよ。もうおうち帰りたい……」
心拍数70。
お、ギリ蘇生した。
「まあボクも帰りたいよ……。今回は完全にレイにはめられた……。このあとまだハルルの用意した映像を見ないといけないんだよね。あーホントもう帰りたい……」
「そ、そうよ! 次! 次は私の自信作よ。絶対勝つわっ!」
と、ハルルの目に生気が戻る。
ずるいなあ。
ボクだけ2回攻撃受けるのおかしくない?
(さっきの予行演習で心臓が慣れたかもしれませんよ)
うーん。
ホラー映画をたくさん見るとびっくりしなくなる、みたいな? そんなことあるかなあ。
『第1回戦の映像は、映画「朝日は西から昇る」のBlu-ray・DVD特典のためにヨニウニランドで謎解きスタンプラリーを行っている時の映像でしたね。映像提供された楓さん、少し解説をお願いします』
「そう、ですね……。各自ハンディカムカメラを持って競い合ったんですけど、一応、結果はBlu-ray・DVDを買っていただいてご確認くださいってことで」
まあ、これを見たら、謎解き対決の結果がどうなったかは、だいたい想像ついちゃいそうだけど。
『壮絶な戦いの行方はいったい⁉ といったところでしょうか。春さんからもコメントありますか?』
「カエデちゃんキライ……」
「なんでよ! ボクもレイにはめられたんだって!」
と、ドローンカメラがレイの顔をアップで抜く。
それはそれはステキな笑顔で、カメラや会場全体に手を振って観客アピール。それはそれはかわいらしい笑顔で愛想を振りまいていた。
くっそー。ここぞとばかりにかわいこぶっちゃって……レイ、恐ろしい子っ!
『今回も零の大勝利で終わってしまうのでしょうか。あ、はい、それでは2回戦の映像の準備ができたようです。会場の2人も準備よろしいですか?』
対決の主旨変わっちゃってるじゃん。
「よろしくないです」
「体調不良のため早退します」
『2人とも気合十分ですね。準備はバッチリのようです』
無視かよー。
会場笑いすぎー!
『それでは後半戦。1分間の映像スタートです!』
都の宣言とともに、巨大スクリーンに映像が流れ始める。
【お姉ちゃんお姉ちゃん。見てー、あそこにぞうさんがいるよー。おっきいねー】
【ホントね~。あれはアフリカゾウって言うのよ。世界最大のゾウさんなの】
あ、これはやばい……。ある意味さっきの映像特典のやつよりももっとやばいよ……。ハルルとボクのエチュードじゃん。でもあまりにひどくて、さすがの洋子ちゃんもNGを出して映画の公式サイトにアップされなかったという問題作……。
【世界最大って? お耳が大きいの? お鼻が長いの?】
【体の大きさかな? それと牙も、とっても長いでしょう?】
動物園でゾウを眺める姉と妹の設定だ。
物知りなお姉ちゃん役にハルル。好奇心旺盛な妹役にボク。
【大きいねー。お姉ちゃんもあれくらい大きくなれたら良いのにねー】
【お姉ちゃんがあんなに大きくなったらお部屋に入れなくなって困っちゃうわよ~】
ハルルが苦笑しながらボクの頭を撫でる。
「ちょっとハルル⁉ こんなの流してどうする気なの⁉ このままだとボクもろともひどい自爆するだけだよ⁉」
このエチュードがひどいのは別にボクが失敗したからではないのだよ……。これを白日の下に晒したら、ハルルだって甚大な被害を受ける羽目になるんだよ?
「甘いわね。私はこの映像を100万回見ることで心を無にする修行をしてきているわ」
「あ、それずるい!」
なんて汚い自爆技なんだ!
同じダメージを食らうにしても、いきなりこれを出されて動揺しているボクだけ圧倒的に不利っ!
【えー、でもお姉ちゃんいっつも大きくなりたい大きくなりたいっておっぱいマッサージしてるじゃないのー】
【ちょちょちょちょちょっと、カエデ⁉ ああああああなたいきなり何言ってるの⁉】
映像のハルルは顔を真っ赤にしてプルプル震えている。
ここにいるリアルタイムのハルルは瞼を閉じたまま微動だにせず。心拍数も微動だにせず。
会場全体は大きな笑い声に包まれ、床が振動している。
ハルルが胸のサイズを気にしていることは、もう公式のキャラ付けってくらいにはファンの間で有名だ。きっと配信コメントのほうでも大盛り上がりだろうなあ。
【お姉ちゃん、態度はゾウさんみたいに世界一おっきいのにねー。おっぱいと態度が逆になればいいのにね】
てへへ。ボクはかわいい妹だよー。マジキチスマイル☆
【誰の態度が世界一大きいって~? お姉ちゃんの悪口を言っているのはこの口か~! この口か~!】
【いひゃいいひゃいよ! いひゃいよおねえひゃん!】
ボクのほっぺたは両側にグイッと引っ張られて、まるでお餅みたいに伸びてしまっている。力任せに引っ張らないで!
【誰かー、たすけてー! ゴリラに襲われてるー!】
【誰がゴリラだっ! 自分だっておっぱい小っちゃいくせに人のこといじってからに~! 悪い子はこうだウホ!】
【ひゃっ! ちょっとハルル⁉ やめっ、揉まないで! カメラカメラ! カメラ回ってる!】
キレたハルルの大暴走。
ボクを押し倒して馬乗りになると、容赦なく胸を揉みしだき始めたのだ!
「ひどい……今思い出してもひどすぎる……」
【こんなかわいいブラ付けてからに~! ま~たレイちゃんに買わせたのね!】
【ちょっと、マジでやめっ! 手つめたっ! 中に手入れないで!】
いきなりガバッとブラの下に直接手を入れてきて……。
はっ! 今この映像全世界に生放送で流れてるんだった!
カットカットカット!
絶妙なカメラワークでハルルの背中越しにボクの胸は映ってないけど……この顔は映さないで! モザイクかけてー!
【あらあら♡ 一丁前に恥じらっちゃってかわいいわ♡ お姉ちゃんが大~きくしてあげるわね♡】
【やめてお姉ちゃん! それ以上は! ボクお嫁に行けなくなっちゃう……】
【あら、それで良いじゃない。お姉ちゃんと一生一緒に暮らしましょう♡】
ハルルがニタリと笑った横顔が映ったところで、映像が終了した。
あんな顔を世界に流されちゃったら、ホントにボクお嫁に行けなくなっちゃう……。
もうダメ……。




