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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第五章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1~#2編

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第53話 定期公演#2 その2~ハルル、まさかの口パク疑惑⁉

 2曲目『サツマイモラブ』のラストで、ウーミーがサクにゃんを抱き寄せながら頬にキスが決まる。

 うーん、なんとなくだけど、だんだんこなれ感が出てきているから、そろそろテコ入れが必要かなー? まあそれはさておき、本日最初のMCコーナーが始まるね。


「みなさ~ん、こんばんは~! 私たちは~」


「「「「「≪The Beginning of Summer≫で~す」」」」」


 今日のお当番はハルル。

 誰かさんのMCとは違って、安心して見ていられるね。むしろ見ていなくてもちゃんと進むのがわかるからね。


「は~い、定期公演『The Beginning of Summer ~ Monthly Party 2024』#2始まりました~! 1階席~、見てる~⁉」


 うおおおおおおおお!

 ハルルの煽りに合わせて、1階席のペンライトが激しく明滅する。

 

“うおおおおおおお”

“おまえは1階席ちゃうやろw”

“ハルル~みてるよおおおお”

“気持ちは1階席!”

“現地いきてー!”

“心は観客席に置いてきた!”


「みんな良いわよ~! 続いて~、2階席~!」


 1階席と同じように歓声が上がる。


「あれ~? ちょっと声が小さいぞ~! もう1回! 2階席~!」


 うおおおおおおおおおおおおおお!

 2階席のみんながボルテージを上げてくる。がんばれー負けるなー!


「続いて、3階席~! 見えてるか~い⁉」


 うおおおおほぁおあぁぁふぁふぁほぉぉぉほぁぁぁぁぁおぁぁぁぁ~~!

 3階席、めっちゃ騒ぐやばいヤツおるやんっ⁉


「元気いいね~! 何かいいことでもあったのか~い! 最後、おまたせ~、アリーナ~~~~~~!」


 うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!

 おほっ、さすがアリーナ! もう何を騒いでいるのか聞き取れない! みんなが元気なのは十分に分かった分かった!


“ほんまAIか、こいつらw”

“テンションたけーよw”

“オンラインまで声が聞こえてくるのやばw”

“出禁にしたほうがいい奴混じってそうw”

“ほ、ほーっ、ホアアーッ!”


「ハルちゃん楽しそう~! それ私もやってみたいよ~」


 メイメイが手を叩きながらハルルに近づいていく。


「良いわよ~。サツキもやる? でも1回だけね?」


「あ~、私もやりたい~!」


 ナギチも声を上げる。


「サクラもやってみたいです!」


「え~、じゃあみんなで声を合わせてやってみる?」


「それが良いと思いますわ!」


 今打ち合わせしてるの?

 ホントキミたち自由だなあ。


「せーの」


「「「「「アリーナ~~~~!」」」」」


「「「「「1階席~~~~!」」」」」


「「「「「2階席~~~~!」」」」」


「「「「「3階席~~~~!」」」」」


「「「「「配信のみんな~~~~!」」」」」


「「「「「全部~~~~!」」」」」


 フルコースで堪能する≪初夏≫の5人。

 まあ、観客席も配信コメントも楽しそうだから良いけどね。



「ふぅ、みんな元気元気! 今日も定期公演を一緒に盛り上げていきましょう!」


 ハルルが締めて、サクにゃんをチラ見する。


「はい! サクラはこの後の曲の準備があるので一旦捌けます!」


「サクラ。ソロユニット曲楽しみにしてるわね。またあとで~」


 サクにゃんが会場とドローンカメラに手を振ってから、足早に臨時控室へと戻ってくる。

 サクにゃんが走り去るのを確認しながら、ハルルがトークを続けていく。


「このあとは~、定期公演の恒例となる『ソロユニット曲コーナー』ですからね!」


「今日のお当番は……はて、誰だっけ?」


 人差し指をあごに当ててて、わざとらしいナギチのとぼけ顔。


「え~、ナギサちゃん知らないんですか~?」


「このあとは、なんとあの有名な2人組の登場ですわ~」


 うん……。ナギチ、メイメイ、ウーミーの3人は演技を勉強し直そうか。急に台本丸暗記したセリフになってるじゃんか……。


「みんなそのわざとらしいセリフはなによ。このあとはサクラとマネージャーのシオリさんが登場よ。2人のソロユニット曲『Dreamy Games』が生歌初披露よ!」


 ハルル、ナイスツッコミ。


「え~、生歌なんですか~? 定期公演#1の時はハルちゃん口パクだったのに~」


「ちょっ、サツキ、急に何言ってるのよ⁉ 私もミャコさんも100%生歌だったわよ! 急に変なウソつかないでちょうだい!」


 メイメイの突然のボケに慌てふためくハルル。悪い笑顔を浮かべているメイメイ。

 ちょっと見直したところだったのに、やっぱりアドリブに弱い……。


“悲報!ハルル口パク疑惑!”

“あんな長ゼリフ覚えられるわけないと思ったんだよなー”

“なんだやっぱり口パクか”

“2人ともぜんぜん音外さないしおかしいと思ったんだよなw”

“あれで生歌やばい”

“そんなこと言ってもさすがにマネージャーのところは口パクなんだろ?w”


 マジで疑われてるじゃんか……。

 都も歌の練習いっぱいしてたしなあ。でもちゃんと聞いたらCD音源とは違ってるところもあったんだよ? 2人の声の重なりが若干ずれてるところか。ほら、2サビの入りのところとかね。


「みなさん聞いてくださいよ……。うちの事務所はハモリのかぶせ以外は許してくれないから、ライブ中ガイドもなくて大変なんですよ……」


 突然運営に対して毒を吐き出すハルル。いや、そんなアドリブはいらんのよ?


「そう? 私は別に気になったことないけど?」


「わたくしもかぶせのガイドは不要ですわ」


 歌うまのナギチとウーミーが正論でハルルを追い詰めていく。これは……ハルル泣くか?


「ま~ま~。ハルちゃんだってがんばってるんですから、ちょっとくらい失敗したってみんな許してくれますよ~」


 メイメイが場を収めようとしている……。自分が波風立てた張本人なのに!


「そうなんですよ~。私、がんばって生歌で歌ってるので、温かい目で応援してくださいね?」


 若干涙目のハルルを、会場のみんなが応援する。一瞬にして、8割くらいが赤いペンライトに切り替わっているね。みんなやさしい。ギリ泣かずに済んだね……。



「サクラ、準備できました! いつでもいけます!」


 おっと、会場の様子を眺めている間にサクにゃんの着替えが終わったみたい。金色のスパンコールの衣装に身を包み、銀色のスパンコールドレスを着たシオの手をしっかりと握っていた。


「ドレス似合ってるわよ! 2人とも、いってらっしゃい!」


 都が背中を押し、サクにゃんとシオが手をつないだまま舞台へと走っていく。


「おまたせしました~! サクラ戻ってきましたよ~!」


 サクにゃんが手を振りながら舞台へと上る。シオはサクにゃんに手を引かれる形。その表情は緊張で強張っていた。

 負けるな、シオ!


「みなさ~ん、サクラのマネージャーさんの栞さんですよ!」


「三井栞です。みなさんこんばんは~」


 標準語、だと……。

 シオ、緊張しすぎやろ! さっきまでの勢いはどうした⁉


“うぉー出た!美人原作者!”

“人気マンガ家!”

“超美人やんけ”

“前の配信で見た!”

“おれ栞推し!”

“モデル?”

“ちゃうねん。朝西の原作者やねん”

“朝西?”

“朝日は西から昇る。ハルルとカエデが出てた映画の!”

“原作者?マジなん?なんでマネージャーやってんの?”

“それなw”


 ホントそれなー。みんな不思議に思うよねえ。

 まあボクたちも不思議に思ってるけど、シオはシオで考えがあるみたいだからね。研究のこともあるだろうし、何より≪初夏≫のみんなが好きなんだってさ。

 あと、アイドルになってお金持ちに。それとアラブの王様と結婚しないといけないし!


「これから歌う曲は『Dreamy Games』って曲で、なんと栞さんがメインボーカルなんですよ!」


「せやで……。運営も何考えてんねん、ちゅ~話やけど、うちも運営の1人なんやけど……曲はもっと上の人が決めんねんな。そないなわけやから、うちがメインで桜さんがハモリってことで1つよろしゅうな。ま~、自分で言うのもなんなんやけど、ごっつかっこええ仕上がりになっとるから、楽しんで~な」


 だんだんとシオの言葉から硬さが取れていく。


 舞台に1人じゃない。

 周りに誰かいるって大切なことだね。いつもの仲間が一緒にいれば、たとえ何億人を前にしても緊張せずに会話が……ちょっと盛り過ぎたわ。さすがにそれは緊張する。

 でもあれだ。AIの観客席も、配信を見てくれているファンの人たちも、みんなみんなボクたちの味方だから、失敗したってぜんぜん怖くないよね。


 みんな家族。だから大丈夫って。自分にも言い聞かせてます! ふ~、このあとの出番、緊張するっ!


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