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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第五章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1~#2編

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第49話 レイ……こういうの好きなの?

 今日も今日とて厳戒態勢の中、ボクたちは代々森体育館の楽屋入りした。

 研究チームの開発したロボットたちは、『ボンバーマン見つけるワンDXver.2.0』『ボンバーイレイサーにゃんだふるver.2.0』として、さらに爆弾発見の精度と無効化の範囲を広げた形で投入されているとかなんとか。


「でもさあ、結局爆弾テロの犯人はまだ見つかっていないんだよね?」


「そうなのよ……。私のほうでも何度も再調査はしているのだけれど、決定的な証拠がつかめずにいるわ」


 あ、吸血鬼さんやっと起きたんですね。おはよう。


「新たな犯行声明みたいなのもないんだよね?」


「ないわね」


「厳重な警備だし、諦めたのかなあ」


「それはどうかしら……」


 ま、そんな簡単にはいかないか……。そうだったらいいなっていう希望を述べただけです。一抹の不安を抱えながらも目の前の定期公演に全力を注ぐだけだ!


「ところで今日の出演は誰だっけ?」


 今日のお当番ソロユニット曲は誰だったかな?


「オホン。本日のセットリストを発表するわ」


 都が端末を開きながら、気持ち声を張る。

 いや、もちろんセットリストは知ってはいますけど、念のため最終確認の儀式だよ。


「マネージャー陣の出演場所だけで良いよ? 念のためボクたちの動きを確認しておきたいだけだから」

 

「そう? 3曲目に桜さんと栞の『Dreamy Games』。MC明け4曲目に渚さんと零の『涙の雷雲』ね」


「つまり今日の出演は、シオとレイ。そしてMCコーナーでなぜかボクか……」


「どうしたのかしら? 気持ちが乗っていないようだけど」


 不思議そうな顔をする都。

 

「いや、何その顔? 逆に聞くけどなんで気持ちが乗ると思ったの? 乗るわけないですよね? MCコーナーに出るって聞かされたのは今朝なんだよ……」


「そうなの? 私は知っていたから別に驚かないわよ」


「私も知っていたわ」


「うちも知ってたで」


「もちろんわたしも知っていました」


「って、ボク以外全員知ってるじゃんか! え、何? つまりボクにだけ秘密にしてたの⁉」


「私たちは春さんの味方だもの」


 うわー、しれっと裏切り宣言だよ!

 え、ほかのみんなも頷いている。仲間だと思っていたマネージャー陣に裏切られた!


「わたしはかえでくんの味方ですよ」


「いやいやいや、レイも今朝まで黙ってたじゃんか!」


「そのほうがおもしろいと思ったので」


「理由がひどすぎるっ! おもしろさでミニスカートのメイド服着せられて何万人もの前に立たされる身にもなってよ!」


「写真見たけど似合ってたわよ。自信持ちなさい」


「え、写真って⁉ ボク一度もメイド服試着してないよ⁉」


 いったいどういうこと……。

 レイのほうを確認する。


「みなさんにお配りしたのはうたさんに作成していただいたイメージ画像です」


「イメージ画像……合成写真ってこと? ちょっと見せて!」


「でもこれはうたさんが特別に作ってくださったものなので……」


 渋るレイの端末を勝手に操作して、最終更新が最も新しい怪しげなフォルダを指定する。開かない……。パスワードがかかってる! このパスワード、いつものボクの誕生日じゃない!


「これ、パスワード入れて」


「ですが、うたさん……」


 レイがウタのほうを見て、フォルダを開けて良いのか確認する。


「第1段階まではいいわよ」


 第1段階って! パスワード何段階かかかってるの? ちょっとこわい。


 レイが小さく頷き、パスワードを入力するとフォルダが開いた。

 中に入っているのは3枚のjpgファイルと、1つのmovファイルかあ。


「写真と動画?」


「写真のほうだけなら見てもいいわよ」


 うーん。そう言われると動画のファイルもめっちゃ気になるんですけど……。とりあえず写真見るか。


 1枚目。


「うわ、ホントにボクだ! 山吹色のメイド服着てる! え、これ合成写真なの⁉」


 グリーンのスクリーン前でスタンディングの写真だ。ポーズはなし。

 あまりに自然な出来栄えで、ボク自身でさえ自分が写っているようにしか見えない。


「これくらいは誰にでもできるわ。普通に写真を撮っただけだし」


 と言いつつ、ウタはすごく自慢げな表情を見せている。こういう技術はシオの分野かと思っていたけれど、ウタも得意なんだね。


 2枚目。


「これは……悔しいけど、ちょっとかわいいな」


 いわゆる女の子座り。正座から足を外側に開いてぺたんと床に座っている。両手を股の間に挟んでいてあざとらしい。さらに小首をかしげておねだりするような表情で……いや、可愛いけど、誰よこれ。さすがにボクはこんな表情したことなくない⁉ どっから持ってきた素材なのさ⁉


「良いでしょ。宣材写真に使っても良いわよ」


「何の宣伝に? こんな宣材写真、メイド喫茶で働く時くらいしか使えなそうだけど……」


 いや、うん。かわいいんだけど……ボクこんな表情できないってば……。


 最後の3枚目。


「これ、またパスワードがかかってるんですけど?」


「それは18歳未満閲覧禁止よ」


「どういうこと⁉ ボクの顔を合成して何してんのさ⁉」


 話次第では出るとこ出ますよ⁉


「かえでくん、見たら後悔しますからやめておきましょう」


「でもこの写真に写ってるのは、ボクなんでしょ⁉」


「うたさんのイメージ画像ですから、かえでくんではないです」


 そりゃ実際のボクではないだろうけど……でもボクと同じ顔の人物が18歳未満に見せられない何らかのポーズをとっているんでしょ⁉


「じゃあこっちの動画ファイルは⁉」


「それはこの写真のメイキング映像です」


「メイキング? ウタが合成写真をがんばって作っているところ? それなら別に見ても良くない?」


「いいえ、撮影風景なので……」


 合成写真なのに撮影風景……? もはや意味不明なんですが。


「ウタちゃん。カエちんも17歳になったことやし、おまけの18禁っちゅ~ことで1つ見せてあげてもええんとちゃうか?」


「何よ、その理屈」


「依頼主の零も17歳で見ているわけだから少しはね?」


 都も援護射撃に回る。

 理屈が崩壊しているけれど、なんとなく見せてもらえそうな雰囲気なので黙って様子を見ておこう。


「見ても絶対怒らないなら……」


「怒りません。ボクももう17で大人だからね。合成写真の1枚や2枚でいちいち怒ったりはしないよ」


 あまりにひどかったら静かに訴えるかもしれないけどね?


「じゃあ零さん、いいわよ……。楓、絶対怒らないでよね!」


 だいぶ念押すなあ。

 さすがにそこまで念を押されると、ちょっと見るのが怖くなってくるよ……。


「はい、こちらです。わたしの家宝です」


「家宝って……いや、うーん。まあ、うん、怒りはしないけどさ。レイ……こういうの好きなの?」


「はい、とても好きです」


 レイったら、めちゃくちゃ頬を赤らめるじゃん。

 その性的嗜好を告白されて、ボクはどうしたら……正直知りたくなかった。つまりレイはボクに対してこういう姿を求めているわけで……もう、こっちが恥ずかしくなるんですけど!


 というわけで3枚目の写真。

 そこでボクが取っていたポーズとは……。


 さっきの女の子座りのまま、両手でスカートを捲って下着をチラ見せしているところだった。あ、でも背中側から撮ってるから、実際には見えていないというじらし感。肩越しに顔をのぞかせて、恥じらうように目を閉じているおまけつき……。


 18禁っていうからなんかもっとヤバい何かかと思ったけど……危ない危ない! このパターンだと許されるわけじゃないからね? めっちゃハードル上げておいて、すっごいのが来ると思って、そこまでじゃなかったからって許されるわけじゃないんだからね!


「え、じゃあこの動画って……」


「メイキング映像です」


「だから何の……」


「だからこの撮影風景ですよぅ」


 パスワードを解除してもらって、5分ほどの動画を無言で見る。

 

 ボクは気が遠くなるのを必死にこらえつつ、最後まで見終わってからウタに1つだけ確認した。


「ここでポーズ取ってる人……誰?」


「楓……の予備の体よ」


 予備の体……? クローン体ってこと? つまりそれって、ほとんどボクってことじゃないですかね。


「命令通りに動くマネキンみたいなものだから安心なさい」


 いったい何に対して安心したら良いんですかね?


「勝手に思考したりしないから、ドッペルゲンガーに襲われる心配はないわよ」


 あ、そっちの心配⁉

 そういえば、シオはドッペルゲンガーに襲われかけてたもんね⁉


「それで、ボクがその説明で納得すると思う?」


「私なら納得するわね」


「はあ……もうこんなことしないでね?」


 予備の体なら、いつか使う日が来るかもしれないんだから、こんないたずら撮影に使ってないで、ちゃんと麻里さんに返してきて!


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