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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第五章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1~#2編

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第47話 分野が違えば推しも違う

「サイキック@メイメイ単推しさんって、MINAさんのストーキングをして……たんだよね?」


 メイメイの熱烈なファンなのに、なぜMINAさんのストーカーを?

 単推しとはいったい……。


「えっと、その、それは……」


 その子さんがメイメイとMINAさんを交互に見比べて気まずそうにしている。

 ははーん。これは別垢での推し活がバレたオタク……の図か?


「ちょっと待ったー!」


 ハルルが突然立ち上がり、話に割って入る。


「待って待って待ってよ! ちょっと待ってってば!」


「はい、ハルルさん、待ってますよー。そのままもうちょっと待っていてくれる? 今この名探偵・七瀬楓が華麗に事件を解決中なので、座って静かにケーキでも食べていてくれるとうれしいんだけど?」


 なんかほら、思ってたのと違う展開だし……。

 ここまでセッティングしてくれたことには感謝しているよ?


「待ってよ! 私だって≪The Beginning of Summer≫のメンバーなんですけど⁉ アイドルなんですけど⁉」


 自分の薄い胸をドンと叩いてからちょっとせき込むハルル。

 2回アイドルって言った。


「あ、うん。アイドルだね」


「アイドルですね」


「アイドルです~」


「映画にも出演しているわね」


 すっごーい。大活躍中のアイドルで良かったじゃない。さ、ケーキ食べて静かにしていてね?


「なんでサツキと私で露骨に態度違うのよ! メイメイ単推しって!」


 ハルルがちょっと涙目。

 はいはい。メイメイのファンが現れたからって嫉妬なのね? ハルルのファンはいっぱいいるんだから別に良いじゃないのさー。


「ほらほら、そんなに大声出したらほかのお客さんにも迷惑だからね。ハルルはそっちで静かにケーキ食べていて?」


「だからなんでさっきからちょっと部外者扱いするのよ! 同じクラスメイトなんだから私のことも応援してよ!」


「あ、えっと……春さんのことも応援してます……」


 その子さんが少し怯えながらそう言った。


 あーあ。無理やり言わせてるー。ファンに気を遣わせてるー。ひどいアイドルもいたもんだなあ。


「そ、そぉ?」


 ちょっとうれしそうにするんじゃない。

 ほぼお世辞でしょうが……。わかるでしょうに。でも応援してるって言われてちょっと喜んでいるハルルが単純でかわいいから黙っておこう。


「あー、えっと、話を戻すとー。その子さんはメイメイとMINAさんの両方のファンってことで良いのかな?」


 一応確認ね。


「その……あの……」


「大丈夫だよ。2人とも誰かさんと違ってそういうので暴れたりしないから」


「誰かさんって誰よ! ムキー!」


 そういうところだよ……。アイドルがドラミングするんじゃないよ。


「わたしははるさんのことも推してます」


「レイちゃん……あり、がとう……」


 いや、だからちょっとやさしい言葉をかけられたからって泣くんじゃないよ……。

 でもね、ハルル。レイはボクのことを最推ししてるからね⁉ ハルルはただの一般推しだから!


「えっと、わたし、モデルのMINAさんも好きだし、アイドルのメイメイさんも大好きで……」


「いいよいいよー。それが普通だよ。分野が違えば推しも違う。普通普通ー」


「それが普通です。わたしもアイドルのかえでくんと、役者のかえでくんと、マネージャーのかえでくんと、ルームメイトのかえでくんと、クラスメイトのかえでくんと」


「レイ、ストップ!」


 それは普通じゃない。あと話がややこしくなる……。


「その子さんがなぜそんなに私のことを推してくれるのか訊いても良い?」


 レイが静かになった一瞬の静寂をついて、MINAさんが口を開く。

 MINAさんの目は、その子さんのことを真っすぐに見つめていた。


「はい……。簡単に言えば一目惚れ、でした」


「一目惚れ!」


 ステキな響き。ぜひその話、詳しく聞きたい!


「はい。同じクラスになって初めて美奈さんと出逢った時に『好き』って思いました」


 ああ、キュンキュンする♡

 好きに理由なんて必要ないよね!


「あり、がとう?」


 MINAさんがちょっと引いてる。なぜだ⁉


「ほかの人とぜんぜん違っていて。スラッとしていてキレイで、みんなに囲まれてて笑っている姿を見るだけで胸が高鳴って……」


 恋する乙女じゃん!

 いいわー。すごくいいわー。


「おっけおっけ。わかったわ。ありがとう。そんなに好きでいてくれるのはとってもうれしい。でも、SNSにあることないこと書いたり、写真をアップされるは困るの。わかってくれる?」


「はい……。本当にごめんなさい」


 その子さんはテーブルに激しくおでこをぶつけながらMINAさんに謝る。


「わかってくれればそれで良いの……。できればSNSの写真は消して、事実無根だってことを謝罪してもらえると助かるのだけれど」


「はい! すぐに!」


「あ、待って! ただ謝罪するだけじゃなくてさ――」


 かいつまんで『クラスメイトがふざけて投稿しました作戦』のことを説明する。


「実はクラスメイトで、悪ノリしてしまいました、と?」


「そうそう、みんなに迷惑かけてごめんなさいって投稿してほしいな。その子さんの顔は隠してかまわないから、MINAさんとボクと3人で写ってる写真を添えて謝罪してもらえれば良いよ」


「それを私がリポストするから」


 それで本物の写真だってことを証明するってわけさ。


「わかりました。ご迷惑をおかけしました」


 その子さんがMINAさんに向かって改めて深々と頭を下げた。


「良いよ良いよ。得体のしれないストーカーじゃなくて私も安心だよ。そんなに好きでいてくれるならこれからも応援してほしいな」


「……良いんですか?」


「もちろん、でも距離感と節度を守ってね?」


 MINAさんがウィンクする。

 懐が深いなあ。


「はいは~い! 私も一緒に写真撮りたいです~」


 メイメイが立ち上がって手をブンブン振っている。


「んー、≪初夏≫は学校名とか公表してないからなあ。クラスメイトとして写るとちょっと困るんだよね……」


 さすがにボクの一存で「はい、良いよ」とはならないよ。一応そういう方針でやってるから、事務所確認が必要になっちゃう。


「私もファンの子と写真撮りたいです……しゅん」


「いやまあ、SNSにアップしないってことで撮るだけなら良いけどさ。それこそ距離感と節度を守ってよね?」


 とくにメイメイのほうがね。


「むりむりむりむりむりむりです!」


 まさかのその子さん側からの拒否!

 なぜだ⁉


「メイメイさんと写真を撮るなんてそんなそんなそんなそんなそんな!」


「その子……私の時と態度が違い過ぎない?」


 MINAさんの指摘。

 いや、ごもっともですわ。


「MINAさんはステキでキレイで好きです。でも、メイメイさんは私の命っていうか、なんかもう神的な存在で、こうして同じ空間にいるだけで昇天してしまいそうで……」


 ややこしくなるから勝手に召されないでください。

 まあね、メイメイは天使だからそういうこともあるかもしれないけどね。


「さすが、サイキック@メイメイ単推しさんって感じだわ。間違いなく本人だね」


 サイキック@メイメイ単推しさんと言えば、いっつも真っ先にコメントをくれる人。そして、メイメイのことをこれでもかってくらいに神聖視してる特殊なファンの人。その認識通りの人物が、まさにリアルな形でここにいたわ。

 サイキック@メイメイ単推しさんは、顔出しのファン配信をしたりしないし、オンライン個別トーク会にもまったく顔を出さないから、その姿は謎に包まれていたんだけど、その正体がまさかのクラスメイトだったとはね……。不思議なものだよ。

 なんかもしかしたら、ボクの脳が生み出した空想上のファンなのかと思っていたくらいなんだけど……とにかく実在して良かった!


「メイメイとハルルはSNSにアップする写真には写らないで。せっかくだからレイは入っておく?」


「はい。せっかくですから入ります」


「OK。じゃあ4人で写るってことで良いかな?」


「私はそれで良いわよ」


 MINAさんの了承も得た。


「じゃあハルル撮ってくれる? その子さんのスマホが良いかな」


 ハルルにスマホを渡すように促す。


「……良いけどね。こんな時ばっかり便利屋扱いで……まったく……」


 ハルルは文句たらたらだった。

 部外者扱いしたのをまだ根に持ってるみたい。しょうがない人だなあ。


「ハルル。それ撮り終わったら、せっかくだからみんなで一緒に撮ろうか。オフショットだからSNSアップはなしのやつで」


「カエデちゃんとツーショットも……?」


「はいはい。撮りましょう」


 わかりやすくハルルの顔に笑顔の花が咲く。

 ホントかわいいね。


「はい、みんなもっと寄って~。仲良さそうに笑って~。ちょっとレイちゃん! どさくさに紛れてカエデちゃんと腕組まないで!」


 すっかり機嫌を良くしたカメラマン・ハルルの細かい指示が飛ぶ。

 さあ、これでストーカー事件も解決か。今回もメイカエレイ探偵団は世界の平和を守ったのだった。



「あ、このケーキのチョモランマどうするのさ……」


 この量はどのスタッフがおいしくいただくのでしょうか……?


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