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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第五章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1~#2編

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第45話 呼ばれなくてもじゃじゃじゃじゃ~ん!

 被服科の宮川その子さんは、お世辞にも見た目に気を使っているとは言えない系の女子だった。

 制服を着ていないとそれが顕著になってしまう。


 襟首がダルダルになっている茶色いセーター。ヨレヨレでダボダボの洗いざらしたジーンズ。化粧っ毛はなく、分厚い黒ぶち眼鏡をかけて、長い髪を大雑把に三つ編みにして括っている。


 ここまで喪女感を出さなくても良いのにっていうくらい陰の者、いわゆる『ザ・裏方』な子だ。地味系仲間としてはちょっと親近感は覚えていたボクみたいなやつが言うのもなんだけど……もうちょっとだけ着るものに気を使っても、とは思うよ?

 唯一特徴的なのは薄い綿の手袋をはめていることかな。服飾関係の仕事をするからなのか、手はとても大事にケアしているんだなというのがわかる。でも服とのギャップ……。


「なん……でしょうか……」


 その子さんは、ボクたちのことをめちゃくちゃ警戒していた。

 まあそりゃそうだよね。MINAさんを連れて、いきなり被服室を訪れて声をかけたりしたらね。

 MINAさんのことで会社からこってり絞られたはずだし、「近づくな、話をするな」って言われているだろうし。


「大丈夫大丈夫。なんていうか、その子さんを救いに来た、みたいな?」


 言ってて自分が恥ずかしくなった。ボクはヒーローか何かか? うまい説明が思い浮かばない……。


「はい……それで……」


 うう……余計警戒させたかもしれない。表情がめちゃ硬い。もはや怯えていると言っても過言ではない。


「カエデちゃん。代わって」


「ごめん、うまく説明できなくて」


 ボクを廊下の隅に追いやり、ハルルが前に出る。

 ちなみにMINAさんはボクよりもさらに後ろですまし顔のまま、今のところ一言も発していない。


「私、新垣春。同じクラスだし知ってるわよね?」


「はい。あ、えっと、その……クラス委員長ですからもちろん」


 委員長! ああ、そうだった! こういう時薄くでもクラス全員と交流のある委員長は助かる! 

 そう、ハルルはクラス委員長でけっこう頭が良かったんだよね。ポンコツキャラが板につき過ぎていてすっかり忘れてたよ……。


「今日はクラスメイトとして! クラスの問題を解決しにきたのよ! あくまでクラスメイトとしてね!」


 ハルルがやたらと『クラスメイト』という部分を強調する。これは会社とも仕事とも関係ないというアピールだ。


「は、はあ……」


 その子さんが生返事をする。いまいち状況が呑み込めていない様子。警戒心バリバリのままだ。


「MINAさんのことで会社から怒られたんでしょ? 大丈夫よ。大事にせずに収束させる画期的なアイディアを考えてきたの。悪いようにはしないから少し話をしない?」


 まるで配信中かと見間違うかのような完璧なアイドルスマイル。

 ライブの進行もトラブルの仲裁もハルルに任せておけば安心かな。今日はラクしよう。いてっ。何⁉ なんでお尻つねるの? 気を抜いてなんていないですってば。奢られた分はちゃんと働きますから……。ごめんなさい……。


「えっと、はい……でも、わたし仕事中なので……」


 その子さんはまだまだ怯えたような表情を崩さない。

 まあ3人で来たから、やっぱりちょっと圧が強めに感じるよね……。だけどとりあえず話をしないことには態度が軟化することはないでしょう。


「ま、とりあえず仕事は休憩ってことにして、ラウンジにでも移動しようよ。何か甘いものでも食べながら、ボクたちの明るい未来についてゆっくりと語り合おうじゃないか! ね?」


 正しく了解を取ろうとしても話が進みそうもないので、無理やりにでも連れて行こう。


 まずは被服室から引っ張り出してー。


 地味系女子同士仲良くしよう? 悪いようにはしないってば。ね?



* * *



「事件あるところに我らあり。我らあるところに事件あり」


「呼ばれなくてもじゃじゃじゃじゃ~ん! メイカエレイ探偵団ただいま参上ですよ~!」


 いや、なんでいるの?


「話は聞かせてもらいました」


「聞かせてもらいましたよ~」


「だから……2人ともなんでここにいるの?」


「事件あるところに我らあり。我らあるところに事件あり」


「呼ばれなくてもじゃじゃじゃじゃ~ん! メイカエレイ探偵団ただいま参上ですよ~!」


「いや……登場のセリフをアンコールしたのではなくてね? あとさりげなくボクに探偵マントを着せようとするのやめて? 仲間だと思われるじゃんか……」


 そ、その子さん、違うんですよ?

 ボクはこのおかしな人たちとは無関係なんです!

 ってハルルはなんでちょっとうらやましそうなの? マントつけたいの?


「さあ、こちらの席へどうぞ~♪」


 メイメイはマントを翻し、悠然とした態度で、奥の座席へと歩いていく。

 メイメイは店員さんか何かなの?


「かえでくん、そんなに心配しなくても大丈夫です」


「そうですよ~。おいしい料理をたくさん注文しておきましたからね~」


 たぶん誰もそんな心配はしていない……。


「早月さん、零さん、注文ありがとうね。助かるわ」


 MINAさんがしゃべった! この話し合いではだんまりを決め込むのかと思っていたけどそうじゃなかったのね。


「あ、その子さん、こっちは――」


 ハルルの紹介を遮って、その子さんがしゃべる。


「もちろん知ってます! メイ――夏目早月さん……と仙川零さんですよね。しゃべるの初めてですね、こんにちは!」


 その子さんは若干早口で名前を確認すると、深々と頭を下げた。

 意外と饒舌にしゃべるな、この人……。


「その子ちゃんこんにちは~」


「こんにちは。初めまして。仙川零、かえでくんのお世話係です」


 レイったらもう。


「こんにちは! こんなキラキラした方たちとお話できてうれしいです! おキレイですね!」


 なんか急にテンション上がってるのかな? 人が増えたから? 人見知りってわけじゃないのかあ。それにしてもキラキラって?


「ありがとう? それじゃあお互いの自己紹介もすんだところで席に着きましょうか」


 よし、プライベートな談合を始めていきましょうかね。クラスメイトとしてね?


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