第37話 ハルル究極の選択!~いたずらする? いたずらされる?
「はるさんは、いたずらするのとされるのはどっちがお好きですか?」
うわ、質問こわっ!
話の流れ的に絶対ボクに関係あるやつじゃん!
「そ、そうね……」
頬を赤らめながらこっち見ないで!
やばそうな企画にボクを巻き込まないで!
「う~んと……えっと……」
ハルルが唸ったり、顔が赤くなったり、急にモジモジしたり、ちらちらこっちを見てきたり……。2択なのにめちゃくちゃ悩むじゃんか……。
「私はカエくんにいたずらしたいです~。『ゲリラ雷雨』を復活させて、また配信中にファンの人たちと一緒に……んふふっ♪」
メイメイ! 小悪魔な笑顔!
そういうのはずるいからやめて!
「わたしはもちろんいたずらされたいですよぅ」
「えっ⁉」
だってレイさん、いつもいたずらするほうじゃないですか⁉
「舞台上は非日常です。いつもと違うほうが刺激的だと思いませんか?」
こっちは小悪魔を通り越して妖艶な……。舞台上でボクはいったい何をされてしまうんでしょうか……。
「いたずらする……される……どっちも捨てがたい……ああっ!」
そして悩み過ぎて頭が爆発しそうな人の図がこちらです。悩みの内容が最低過ぎますけどね……。
「ボクはどっちも好きじゃないかなーって」
もっとほかの企画を考えましょ? ね?
「カエくん……なんでも協力するって言いましたよね?」
メイメイ……今それ言うのずるくない?
完全に後だしじゃんかー。
「かえでくんは喜んで協力すると言っています」
言ってない言ってない!
勝手に心読んだふうにでっちあげるのやめて⁉
(はるさんを泣かせても良いんですか?)
それを言われると……。
でもハルルは泣いてるくらいのほうがかわいくない?
「かえでくんは、はるさんをいたずらして泣かせたいそうです」
「言ってない! 濡れ衣だ!」
「カエデちゃんが私のことをそんな目で……」
ハルルがじっとりと冷たい目でこちらを見てくる。
誤解だ! ボクは一言も……。
「私、カエデちゃんにいたずらされたいです!」
え、ええ……ええ……。
さっきのは冷たい目じゃなくて……。
「あのさ……まったく乗り気になれない企画なんだけど……一応聞くよ。レイ、その企画、ファンの人は見ていて楽しいものになるの?」
内輪で楽しむだけじゃダメなんだよ。
コアなファンだけでもダメ。
配信を通じて、最近ファンになってくれた人も、もしかしたら、まだこれからファンになるかもしれない人にも見てもらわないといけない。
この企画を見て、「ハルルのファンになろう!」って思ってもらえるようなものじゃないとね。
「はい。間違いなく、これを見た全人類がはるさんのファンになることでしょう」
レイ……真顔で言い切ったね?
ホントに信じていいのかな、それ……。
「かえでくんに誓って」
「いや、ボクに誓われても……そういうのは神とか、仏とかにしてくれない?」
「でも……わたしが1番信じているものに誓いたいです」
それ今言われるとむっちゃはずかしい。……真顔で言わないで?
ハルルも、超絶うらやましそうに見るのやめてよ……えっ、なんで? 感動してちょっと泣いてしまってるじゃないのさ……。
それでメイメイはさ、関心なさそうにキッチンに行って次のお菓子を物色するのやめてね。人んちでそれは失礼だってさっきも言ったよね……。
「わかったわかった! 具体的なプランを聞くよ。いたずらってどんなことするの? 落とし穴にでも落とす?」
「かえでくん、ふっ……そんな。舞台に落とし穴なんて作れませんよ」
小バカにしたように笑うのやめて⁉
ちょっとボケてみただけなんだからね?
「それでは詳細を説明いたしましょう。確認いたします。はるさんの選択したコースは『いたずらされたい放題コース』でよろしかったでしょうか?」
携帯のプランみたいな……。
「はい!『いたずらされたい放題コース』でお願いします!」
それ、ホントにぃ?
顔中落書きとかするかもよ?
「ご一緒に、『ちょっぴりアダルティーオプション』はいかがでしょうか?」
「はい!『ちょっぴりアダルティーオプション』100個お願いします!」
つけるなつけるな!
「配信は全年齢対象だからダメです!」
「それでは『健全で安心安全赤ちゃんプレイオプション』はいかがでしょうか?」
「はい!『健全で安心安全赤ちゃんプレイオプション』1000個お願いします!」
待て待てーい。
「怪しいオプション禁止! 配信してアカウントが凍結されないやつにしてよね!」
「それではご注文を繰り返させていただきます。『いたずらされたい放題コース』『健全配信OKパック』でよろしかったでしょうか?」
「はい!『いたずらされたい放題コース』『健全配信OKパック』でお願いします!」
もう何が何やら……。
「以降のキャンセルはできませんが本当によろしいですね?」
レイの念押し。
定期公演#2のMC企画はこれで決まりか。……しかたない、もう変更をせずにつっぱしるぞ。覚悟を決めろってね。
「はい、がんばります!」
わかったよ、ハルル。ボクも腹をくくろう。
でもこの場合がんばるのは、ボクだけな気がするんだけどね……。




