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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第一章 オーディション 編

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第27話 メイメイ演技する

『ヒントはここまでよ。あとは自力でたどり着いてね♪』


 メイカエレイ探偵団が決定的瞬間を目撃した……その瞬間、レイの端末の電源が落ちて画面が真っ暗になってしまった。


「ちょ~レイちゃ~ん! 大事なところで見れないんですけど~!」


 画面がブラックアウトする寸前のアカリさんの言葉が耳に残った。

 何を解くヒント? 2人が付き合っていることなのか……。 

 

「ねえ、さっきのアカリさんが言っていたヒントってなんのことだろう?」


「カエくん何のことですか~? アカリちゃんが何ですか?」


「くっ、端末復旧しても侵入できないです……。音声が取れていなかった時点で気づくべきでした……」


「何に気づくべきだったって?」


「監視しているわたしたちという存在は、とっくに気づかれていたんですよ。映像だけ意図的に見せつけられたということでしょう……正直くやしいです」


 レイが地団駄を踏んでいる。こんな余裕のないレイは初めて見たかもしれない。しかしこれはこれでよい……。


「んー、このあとどうする? 今プリン持って帰っても、さすがにあれかなって思うけど、メイメイいける?」


「誰が覗いていたかまではわからないはずです。たぶん……」


「たぶんかあ。こわいなあ。でもさっき言ってたヒントっていうのも気になるし」


「かえでくんはさっきから何を言っているんですか? ヒントって?」


 メイメイに続き、レイも不思議そうな顔をしている。


「え、だから、最後映像が消える直前にアカリさんが『ヒントはここまでよ』って」


「かえでくん、さっきのは監視カメラの映像だけなので、音声は最初からありません」


 なんだって……。ボクに聞こえていた2人が抱き合う時の布が擦れる音や息遣いは空耳なのか。まさかボクのイヤフォンだけ壊れた?


「さつきさんはプリンを持って帰ったほうがいいです。遅すぎると逆に怪しいですし」


「そ、そうですよね~。私何も知りませんの顔して部屋に戻ってみます~。それじゃあ~」


 待て待て待てーい! 右手と右足、左手と左足がそれぞれ同時に出てるから、不自然すぎるから!


「メイメイは演技できない系? アイドルになってお芝居の仕事はNGなのかなー?」


「あ~カエくんひどいです~。マネージャーさんがアイドルの可能性をつぶすようなこと言っちゃダメなんです~。私だって本気出せば演技くらい!」


 お、泣きの演技はなかなかいいじゃない。


「食堂でかえでくんと偶然出会って、ついつい話し込んでしまったというストーリーで行きましょう。戻ったらすぐに夜食にプリンを買っていたら叱られた話をしてください」


「レイちゃんナイス! それなら私にも行けそうな気がしますよ~」


「ほどよく真実を混ぜ込むと演技はしやすいですからね。後学のために覚えておいてください」


「勉強になります~、レイちゃん先生」


 メイメイが端末に何かをメモっている。なになに?

『食堂でカエくんと出会った話とプリンの話をすると真実が混ざって演技ができる』

 なんかあっていそうなずれているような。そのメモ、あとで見返して意味わかるのかな。


「それとメイメイ。楽しい演技をする時は、これまでの経験の中で一番楽しかったことを思い浮かべようね。逆に悲しい演技の時は、これまで一番悲しかったことを思い浮かべる」


「楽しかったこと……今、毎日が楽しいです~。メイカエレイ探偵団結成がこれまでで一番楽しかったことかも!」


 ああ、100点を通り越して100億万点の笑顔。

 できるじゃん、演技。そのエピソードでボクが感動してしまって……ちょっと泣きの演技しちゃうわよ……。

 レイ、背中をさすってくれてありがとう……2人がいて、ボクも今が一番うれしい出来事を更新しているかもしれない。


「さつきさん、もし2人がまだ部屋にいても、その演技でうまく切り抜けてくださいね。バレなければ探偵団の活動は明日も続けられますからね」


 えーこれ続くの。楽しいのは良いけれど、レイのやっていることはいろいろなものに違反しているからね?


 ニコニコしながらメイメイはエレベーターに乗って部屋に帰っていった。



「さて、ボクたちも部屋に帰りますか」


 エレベーターの上ボタンを押そうとした瞬間、袖を引っ張られる。


「何を言っているんですか? 探偵団の活動はこれからが本番ですよ?」


「え? さっき、明日って」


「せっかく、さつき調査員が潜入捜査をしてくれているんですから、今が調べるチャンスですよぅ」


 レイがトレンチコートの袖をまくっている。なんだかやる気だ。

 でも全然話が見えないんだけど、潜入捜査って何?


「さつきさんが2人のいる現場に突撃する様子をモニタリングですよぅ」


 あ、はい。そういうことね。


「映像、音声きます。通信良好」


 レイの端末の画面が切り替わり、赤い絨毯が大写しになった。

 めっちゃカメラぶれてるなあ。映像視点の低さ、これは……ケーキ箱にカメラを? レイ、いつの間に……。


「このカメラのことはメイメイには……?」


「真実を混ぜるのは少しだけですよぅ」


 良い笑顔でちょっと何言ってるのかわからないですが、メイメイは知らなそうですね。探偵団内でも隠し事を……。


『プリン、プリン、抹茶に紅茶にほうじ茶プリン~』


 オリジナルのプリンソングを歌いながら、メイメイが廊下を行く。

 めっちゃうれしそうだなあ。でもスキップするとプリン崩れちゃうよ。



『ノックノック~。夏目早月ただいま戻りました~』


 ノックって声に出して言うのはマンガの世界だけなのでは? あと部屋に入る時の挨拶がめっちゃ不自然だよ……。


『んふふっ、サッちゃんおかえり♪ 遅かったね!』


 どうやら部屋にいるのはアカリさん1人のようだ。視野が狭いのでたぶんだけど。


『え、っと……食堂で! 偶然、そう偶然カエくんと出会いまして! それで話を、プリンのことについて……あの、プリンいいよねって話と、夜甘い物を食べると太るからって怒られちゃいました』


 演技へたくそか! さっきの話が全然活かせてない……。

 ああ、プリンの箱をアカリさんに近づけないで! カメラがバレちゃう!


『カエちゃんそんなこと言うんだ。マネージャーさんってアイドルの体型維持も気にしてくれるんだね♪』


『わたしは太りやすいから気をつけろ~って口うるさいんですよ~』


『愛されてるね♪』


『こんなに運動してるんだから大丈夫ですよ~。カエくんのはただのいじわるです!』


 ええー、そんなふうに思われてたの……ショックすぎる。心を鬼にして言っているのに……泣いちゃう。


「夜に甘い物は危ないです。どんどんお肉がついちゃうから……食べるなら昼間が良いと思います」


 うんうんとうなずくレイ。

 レイさんにはもっと甘い物を食べてほしいです! ふかふかでぷにぷにに……よし、明日『シェフのきまぐれプリンアラモードスペシャル限定バージョンカスタムマックスタイプ2』を買ってきてあげよう。


『そんなこと言ってるとカエちゃん泣いちゃうぞ♪ それにベタベタに甘やかしてるレイちゃんにとられちゃうんじゃない?』


『カエくんは私のです~』

「かえでくんはわたしのものですぅ」


 2人の声が重なる。

 ボク、モテ期きてました⁉ ……女の子になってから。


『カエちゃんモテモテ~♪うらやまし~♪』


『アカリちゃんは! アカリちゃんはどうなんですか⁉ その……ウタちゃんと……』


『ウーちゃん? んふふっ、ナイショ♪ うそうそ、ウーちゃんとはそんなんじゃないよ』


『だって! ……あれはじゃあ!』


『え~キスしてたって?』


『はい~。キスしてたの見ちゃいました』


 ああ、メイカエレイ探偵団のピンチ!


『アイサツみたいなものかな♪ アカリ、帰国子女だからね♪』


 アカリさんがメイメイに向かって投げキッスをする。


『うそです~。海外でも唇同士ではキスしないって何かで見ました~』


『そうかな? アカリは唇同士でアイサツしたいな♪ サッちゃんともしよ♪』


 アカリさんがメイメイの腰に手をまわして抱き寄せる。

 ああ、メイメイがキスしてしまうかも! ……ケーキ箱がガサガサしてて画面映らないけど。って、レイ……鼻息が……興奮しすぎだからね?


『ダメです~。わたしは好きな人としかキスしたくないんです~』


『アカリのことキライ? ショック♪』


『そうじゃなくて~』


『うんうん、カエちゃんとしたいのね♪』


『カエくんともしたくないです~』


 したくない……か。まあそうだよね……そうだよね……。カエくんちょっとショック……。いや、ボクだってメイメイとそういう関係になりたいわけじゃないし!


『カエちゃんのことキライなの? カエちゃんは自分のものって言ってたのに』


『そうじゃないんです……。カエくんはとっても大切だけど、そういうのじゃないっていうか……大切で、ずっと一緒にいたいから……』


『だってさ♪ あとは自分で考えてね、グッナイ♪』


 映像、音声切断。


 またまたバレてましたか……。

 見ているのをわかっていて、あえてボクに向けたメッセージ、だよね。


 大切な存在。ずっと一緒にいたい存在。

 恋人になりたいとかそういうのじゃない……。

 

 きっとボクも同じ感覚なんだ……とは思う。

 自分よりも、きっと世界のすべてよりも大切な存在。

 

 絶対に守りたい。

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