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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第五章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1~#2編

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第24話 黒蜜プリンは1人10個までですよ

 2/17(土)の朝。

 例の爆破テロ事件で仕切り直した『定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1(オンライン配信)』当日の朝だ。


 1月の時の東京公会堂の時よりも厳重な警戒態勢の中、ボクたちは代々森競技場第一体育館に入った。

 もはやメンバー1人につき1人のボディーガードがつく勢いで警備されている状態だ。ちょっと息が詰まりそう……。


 聞いたところによると、代々森競技場の敷地は昨日の午後から封鎖されていて、昼夜問わず警備が行われていたらしい。

 なんと有人警備だけでなく、今回は警視庁に正式に認められた形で『ボンバーマン見つけるワンDX(正式採用版)』『ボンバーイレイサーにゃんだふる(正式採用版)』が複数配備されていた。


 事件が起きた当初は、毎日のようにテレビ番組に取り上げられ、このロボットたちがまるでヒーローであるかのように報じられていた。そういったマスコミの力も手伝ってか、警視庁でもロボットの性能を検証することとなり、その有用性を認める形で今回警備に採用されたとかなんとか。

 さすがにその辺りのことは、機密事項になるらしく、研究チームに所属していないボクたちにはぼんやりとした情報しか伝わってきていない。サクにゃんたちがすごいし、ずっと忙しそうってことしかわからない……。無力。



 着いて早々、マネージャー5人だけで集まって、プチミーティングを行うことになった。

 オンライン公演ではあるけれど、もちろんやることはある。一応、公演の間の動きなんかを軽く確認しないとね。


 でも最初に話題になるのはやっぱり防犯体制の話だ。


「お客さんが入らないのに、この厳戒態勢はちょっと怖いね……」


「いまだに犯行の目的も、ターゲットもわかっていないのだから、これくらいは当然の対応じゃないかしら」


 意外と言ったら失礼かもしれないが、ウタが厳重な警備体制について賛同していた。


「そういうものなのかー。なんかほら、無観客だし、配信場所も公開していないから、ボクも今回はわりと安全めなのかなーって思ってたよ」


「犯人が本気なら、準備段階で場所の目星はついているでしょうし、まだ内通者の存在も否定できていないのよ」


 あー、そうだった。

 内通者、ね。

 事務所も、関連グループ企業まで含めると、内部の人間というのはかなりの人数になるわけで。その中に内通者が紛れ込んでいてもおかしくはないのだ。


「それにね。この警備体制は事務所側が用意したというより、こちらからの提案なのよね」


 都が口を挟む。


「そうなんだ?」


「こちらちゅーか、主に花さんやな。『スタッフ含め全員の安全が保障されるべきや』ってな。上に対してあっつい演説をぶちかましたらしいで」


 花さん。

 やっぱり頼りになる人だ……。ボクたちの知らないところでたくさんがんばってくれているんだ。


「わたしたちは何も知らずにここにきてしまいましたね。はなさんには、あとでしっかりとお礼をしなくてはいけません」


 レイの言うことはもっともだね。いっぱいありがとうって言おう!


「そうだね。いつも裏でどっしりと構えて、ボクたちのことを見ていてくれるから、ボクたちは目の前のことに集中できるんだ。感謝しかないよ」



* * *


 控室に戻ると、サクにゃんがノートパソコンとにらめっこしていた。


「あ、みなさん。ブリーフィングは終わりましたか? 警備状況は順調ですよ」


「サクにゃん、警備ロボットの確認は大事なことだと思うけど、今はライブの準備を優先したらどう?」


 1人だけ着替え終わってないし。


「せやで。あれから犯人は沈黙したままやんか。新たな犯行声明もでとらんし、もう満足したか諦めたんと違うか?」


 さすがに楽観的過ぎる見方……と思ったけれど、シオはこの場の空気を軽くしようとして言っているだけなのは明らかだった。


「そう、ですね……。サクラはアイドルです。急いで着替えて準備してきます!」


 サクにゃんはノートパソコンを閉じずに、開いたまま都に引き継いだ。


「それで……やけに静かに隅っこでコソコソしているキミたちは何をしているのかな?」


 ボクが声をかけると、ビクッと体が強張る3人組。メイメイ、ナギチ、ウーミーの3人だ。


「せ、精神統一ですわ~」


「ですわ~」


「ですわ~」


 ふーん。

 精神統一ねえ。


「いや、まあ、別に良いんだけどさ。さっきから匂いがすごいのよ。都のお腹がぐーぐー鳴ってるから、コソコソしないでみんなにも分けてあげてよ」


「ちょっと! 私のお腹は……そんなには……鳴ってないわよっ!」


 そんなに。1分間に3回くらいね? それはそんなに、だよね。


「私が作ってきた全集中プリンよ~」


 ナギチが巨大なクーラーボックスをこちらに向けてくる。

 大量のプリンが覗いていた。


「この熱々の黒蜜をかけると~、集中力がマシマシになるの!」


 黒蜜の暴力的な香り。

 これが部屋中に漂っているわけで。さすがにこれを匂いだけでガマンしなさいっていうほうが精神に良くないのではないでしょうか。


「そのプリン人数分ある?」


「1人10個は食べられるようにほら、プリンはクーラーボックスに。黒蜜は保温タンブラーにたっぷり♡」


「それは用意しすぎでは……。お腹タプタプで踊れなくなるから1人3個までにしておきなさいよ?」


「はいですわ!」


「え~、は~い」


「えっ⁉」


「ナギサ、私もプリンいただいていい?」


「もちろんよ~。ハルにゃんも食べて食べて~♡」


 ん、今「えっ⁉」って言ったヤツいたな。


「ねえ……メイメイ、それ何個目?」


「えっと……8個目です……しゅん」


 もうダメって言われるのがわかったのか、シュンとしてしまった。


「まったく……あと2個だけだよ。ほかの人の分は食べちゃダメ」


「は~い。自分の分だけですよ~」


 メイメイがニコニコ顔に戻る。

 まあ、メイメイに限ってはプリン10個くらいじゃお腹がタプタプすることはないもんね。

 ※一般の人は決してマネしないでください。


「じゃあボクもご相伴に預かるとして……あ、おいしい。プリンに黒蜜って合うんだね。初めて食べたかも」


 和風になるというか、なんかもう和菓子みたいかも。


「プリンの砂糖には黒砂糖を使っているから、黒蜜と相性がいいのよ♡」


 なるほど。最初から黒蜜をかけるためのプリンなんだね。さっすがナギチ!


「あ~、なんかみんな美味しそうなもの食べてますね! サクラも食べたいです!」


 着替えとメイクを終えたサクにゃんが戻ってきた。


「もちろんちゃんとあるよ~。サクにゃんこっち座って♡」


 ナギチが自分の隣を指さしてから、クーラーボックスから新しいプリンを取り出していた。


 いつもと変わらない日常。

 こんな緊迫した周りの状況にもかかわらず、みんながリラックス空気を作り出そうとがんばっている。


 今日こそは必ず、定期公演#1を無事に開催するぞ!


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