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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第五章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1~#2編

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第8話 映画の舞台挨拶 前日

 ボクとハルルは、ビルの前まで迎えに来てくれたタクシーに乗り込んだ。


「やあやあ有名人たち~。元気しとるかね~?」


 すでにタクシーの後部座席に座っていたマキが、ニヤニヤしながら先制パンチを浴びせてくる。


「もう、やめてよねー。今週マジで大変なんだから……。ほら、もっと奥詰めて」


 マキを後部座席の運転席側の奥に押しやり、ボクが真ん中に、ハルルを手前の助手席側に座らせる。


「洋子ちゃん、おひさしぶりです。あ、新年あけましておめでとうございます」


「おう、あけましておめでとう。ニュースは見ている。なかなか大変そうだなあ」


 助手席の洋子ちゃんがわざわざこちらに向き直り、挨拶をしてくれた。


「あけましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!」


 ハルルも緊張気味に挨拶をする。


 ボクたちの荷物を後ろのトランクに詰め終わったタクシー運転手が運転席に乗り込んだ。


「それでは出発いたします。このあと高速道路を利用しますので、必ずシートベルトの着用をお願いいたします」


 OK。シートベルトにゆるみなし!

 運転手がボクたちの姿を確認してから、タクシーはゆっくりと走り出した。



「えーと、新幹線で名古屋に行って、今日は前泊だよね。この4人で行動?」


「そうだよ~。ほかのスタッフさんたちは明日合流~。出演者だけで豪遊しようぜい♡」


 マキの明るさに助けられて、ボクもハルルも少し緊張が解ける。


「この間の特典映像の撮影お疲れだったな。スケジュールの都合が合わなくて、立ち会えず、すまなかったな」


 前の座席から洋子ちゃんの声が聞こえてくる。


「いや、特典映像ですし、わざわざ監督が出張るものでもないでしょう」


 それに見られたら見られたであれは大変はずかしい展開だったと思うの……。なんていうか……あれはどこをどう編集したら買った人が見て楽しい映像になるのか不安……。


「なかなか楽しい現場だったと聞いているぞ。チィタマ大活躍の回だったそうじゃないか~」


「もうやめてくださいよー。今からあれ、まるごとお蔵入りになったりしないですかね? 特典映像だし、このあとの名古屋とか別府でおいしいものを食べてる映像とかに差し替えません?」


 あれは世に出してはいけない気がしているよ。とくにラストのマキとハルルの死んだ魚のような目……。今からでもぬるい企画に差し替えてお茶を濁したい。


「私、あの時の謎解きイベント……記憶が途中からないのよね……」


「わたしも記憶が……」


 あ、これ、人間の防衛本能で記憶を封印しているやつや……。やっぱりあかん映像なんじゃないの……。


「全部のカメラ映像チェックしたが、なかなかに傑作なんじゃないか~? 初回限定版をType-ABCと3種類にして、映像特典をつける案が急浮上していたぞ」


 マジでその冗談はやめてくださいよ……。


「あれがノーカットのフル映像で世に出たら……マキとハルルのポンコツっぷりが世間に見つかっちゃう!」


「それがかわいいんじゃないか? 私だったらファンになるだろうな」


 洋子ちゃんがガハハと笑う。

 他人事だと思ってからにー。


「ハルルはもともとポンコツ売りだから良いとしても、マキは仕事なくなっちゃうんじゃないの?」


「ちょっと! 私ポンコツ売りなんてしてないわよ!」


 ハルルが真っ赤になって肩をポカポカ殴ってくる。

 いいえ、あなたはまじめ風のポンコツ売りですよ……。それが一部のファンに大ウケしているのです。そしてボクもハルルのそこが一番好きなのですよ。


「わたしは……役者だから大丈夫! そういう演技をしましたよ~って言えばなんとでもなる♡」

 

 そっかなあ。そういうものかなあ。

 あれを演技と言い張るんですね……。役者ってすごいな(棒)


「ヒマリとして謎解きイベントに参加していたんなら、華麗に謎を解いてほしかったものだけどなあ」


「うっ、それは……」


 言葉に詰まるマキ。同じく胸を押さえてへこんでいるハルル。


「ナズナはしっかりしている風ポンコツキャラだから、ハルルはそのままで大丈夫だよー」


「なんでよ! ナズナはしっかりしているわよ! 私もしっかりしているわよ!」


 そのやり取りを聞いて洋子ちゃんが「お前たちは私生活でも変わらんな~」と、さらに大笑いしていた。



「しかしあれだな。ライブの事件のことは本当に何事もなくて良かった。お前たちが無事でいてくれて本当に安心したよ……」


「そう、ですね……。犯行予告に対する対応が良くなかったのかな……。上の判断ミスって結論づけて責任を放棄するつもりはないですけど……でも、犯行予告が出ていてもやっぱり開催したかったし……」


 早々に中止や延期の指示が出ていたら、果たしてそれをうまく飲み込めただろうか。


「でもこうして無事に生きている。今はそれだけで良いじゃない? そういえばサクラさん、だっけ? いろいろなロボットを発明していてすごいんだね~。ニュース見てびっくりしちゃった」


 マキがそっとボクの手を握ってくる。

 洋子ちゃんもマキも、ホントに心配してくれてありがとうね。


「あ、うん。個人開発ではなくて、系列の大学病院のほうの医療ロボット研究チームの発明だよ。怪しげな機械もいっぱい作っていて、なんだかんだ悩まされてるけど……」


「サクラはがんばり屋ですからね。ニュースに出るたびに、かわいさと一生懸命さに人気もうなぎのぼりで!」


 ハルルがまるで自分のことのようにうれしそうに語る。


「ハルルの個人取材は、まあこれからだと思うよ。都がなんかそれっぽいこと言ってた」


 ドキュメンタリーの主役はやはりグループのリーダーでしょうからね。ビシッと頼みますよ。


「それね……。概要だけは聞いているけれど、ちょっと不安だわ……」


「まあまあ、あれはなるようになるんじゃないの? 企画段階って聞いてるし、ホントに映像化するかもわからないけど」


「なんだかおもしろそうな話だにゃ~。まとまって話せるようになったら教えてちょうだいな♡」


 もちろんね。

 ボクたちの成長のドキュメンタリーだとすると、たぶんこの映画のことも触れられると思うし、マキや洋子ちゃんにも取材協力が行くんじゃないの? その時はお願いします。



「お、そろそろ東京駅だな。駅弁を買って新幹線に乗り込むぞ」


「え、名古屋ってすぐなのでは? 駅弁食べる時間なんてあります? 名古屋駅に着いてから何か食べたほうが……」


「それはそれ、これはこれ♡ 新幹線で飲むビールは格別なのさ♡」


 あ、ダメだ。

 出張中のサラリーマンみたいな人たちがいるわ。


「ハルル、どうする? ボクたちも……東京バナナでも買っていく?」


「そんなの買わないわよ……。ひつまぶし、味噌カツ、味噌煮込みうどん、小倉トースト……名古屋のためにお腹を空けておくのよ!」


 あ、ガチで名古屋を楽しみにしてる人がいたわ。


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