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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第一章 オーディション 編

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第24話 メイメイ目撃する

 夕方のダンスレッスンのためにスタジオに到着すると、なぜかメイメイに絡まれた。いつものニコニコ顔ではない。


「じ~~~~~~~~」


 メイメイがセミのような鳴き声をしながら、じろじろと見てくる。


「な……んでしょうか?」


「じ~~~~~~~~~~~~~~~~~~」


 めっちゃ見てくる……。しかもかなり不機嫌そうな顔。


「えっと、早く柔軟しないとダンスの先生来るよ?」


「カエくん……昨日、何かありましたね」


 ドキンッ!


「え、何かって? 何? 昨日? 何もないよ?」


「今心拍数が20ほど上がりました。何かありましたね!」


 いやなんで心拍数の上り幅とかわかるの。まさか……メイメイもレイと同じでボクの何かを読み取られてるの⁉

 ……まあそんなわけないよね。

 しかし、何かあったかと言われれば、何かあったのかもしれない。でも何もなかったかと言われれば何もなかったような気もする。


「うーん。何もなかったと思うけどなあ」


「ほんとに~? じゃ~あれは何なの~?」


 メイメイがジト目でこっちを見ながら、ボクの背後を指さす。

 そこには……胸の前で腕を組み訳知り顔なレイの姿が! あれはまさにライブ会場でよく目撃される、後方カレシ面!!


「あら、さつきさん、ごきげんよう。今日も良いお天気ですね。お互い一日がんばりましょうね」


 ああ、しあわせすぎて世界のすべての人に祝福あれ、って天使の笑顔だわ。

 これは誰が見てもわかりやすく何かありましたね……。


「もう夕方です~。あれはおかしいです~。昨日の夜、絶対何かあったでしょ~!」


 ヒィ。なんでボクが責められてるの……。

 レイがしあわせそうなこととボクに何の関係が……まあありますよね、普通に考えて。


「昨日の夜は……ちょっと遅くまでダンスの練習をしたりしたくらいかな……カナ?」


「何で疑問形なんですか~? 私が立ち入りを禁止されている部屋で、いったい何が行われてるんですか~? 言えないようなことですか~? じろじろじろじろじろ~」


 メイメイがボクの周りを360度グルグル回転しながら、バスケットボールのディフェンス張りにプレッシャーをかけてくる。


「さつきさん、かえでくんが困っているじゃないですか。昨晩はとくに何もありませんでしたよ。わたしたちはいつも通りですぅ。ええ、ルームメイトなのでいつも仲良しですからね♪」


 うっわー、レイってば、ここぞとばかりマウントをとって火に油を注ぐタイプなのね……。メイメイが「ぐぬぬぬ」ってなってるじゃん。

「かえでくん以外には拡張観察はしていません」って言っていたけれど、これ、ホントに目で見て観察しただけなの? それでここまで的確にダメージを与える煽りを……恐ろしい子。


「まあまあまあ、もうすぐ対バンだからってそんなにバチバチにしなくても、ね? そういう対決じゃなくて、オーディションのためにやっていることだから仲良くね?」


「カエくんがそう言うなら……私たちもがんばる……」


「うんうん、メイメイたちにオーディション合格してほしいから対バンって方式で応援しようって思ってるんだからね。みんなでがんばろう!」


 ボクのことやレイの事情はいつか知ってほしいけれど、それは今じゃない。今はオーディションに集中させるべきだと思う。


 メイメイたちの合格は疑っていないけれど、彼女たちはボクの知っている≪初夏≫のメンバーとは少し違っている。

 これが長い長い夢ではないのだとしたら……単純にボクの知っている過去の出来事を繰り返しているとか、やり直しているとか、そういったものではないのかもしれないと思うようになってきた。


 じゃあなんだと聞かれても、今わかっていることは何もないに等しい。

 わからないからこそ、全力を尽くすべきだと思う。

 ボクが尽くすべき全力は、まず目の前のこととして、メイメイたちを≪The Beginning of Summer≫としてデビューさせる。それに集中しよう。自分のことなんて後回しでいい。



* * *


「カエくんカエくん! さっきはレイちゃんに気を取られて言い忘れてたんですけど、今日の夕食後にちょっとだけ……その、自主練に付き合ってほしいです!」


 今日のカリキュラムを終えた後、メイメイが深刻そうな表情で訴えてきた。


「もちろんいいよ!」


「わ~い。ありがとうございます~」


 パッと花が咲くように、メイメイは笑顔になった。かわいいね。ボクはメイメイのお願いにはいつだって即答だよ。


「なんか大事そうだし、食事前でもいいけど、何の練習? 歌? ダンス? それとも筋トレ?」


「え~と、発声練習?」


「何で疑問形なの。発声練習ね、オッケー。じゃあレコーディング室を予約しちゃうね」


 端末を開き、サクっと予約。施設の空き状況もわかるし便利だねっと。

 ん? なぜかモジモジしているメイメイ。


「どうしたの? あ、やっぱりお腹減った? やっぱり食事の後にしようか?」


「ちがいます~。レコーディング室じゃなくて……」


 モジモジ。メイメイ。モジモジ。


「うん、どこがいいかな? 部屋……は行き来禁止だから、下のカフェとか?」


「はい~。あ~でも……やっぱりレコーディング室で!」


 メイメイは少し迷っていたようだったが、覚悟を決めたようにそう言った。これは、誰にも聞かれたくない話かな。


「オッケー。予約取れたから行こうか」


 ボクらは連れ立ってレッスン室を後にした。


* * *


「じゃあ、座ろっか。何か話があるんだよね?」


 レコーディング室のドアを閉めると、ボクはさっそく話を切り出した。

 メイメイは、廊下を歩く時も、エレベーターの中でも、ずっとそわそわしていて無言だった。それだけ重要なことなのだろう。


「あ~う~ん。え~と、その~すごく言いにくいんですけど……」


 上目遣いにこちらを見てくる。

 あ、かわいい。よし、その表情をブロマイドにしてすぐ売ろう!


「あの~。え~と、カエくんって、恋愛経験豊富ですか⁉」


 ………え?


「恋愛です~。昨日から恋愛のことが気になって気になって、しかたないんです~」


 ………え?


「もしも~し、カエく~ん? 話聞いてますか~?」


「ななななな、なに言ってるの⁉ アイドルが恋愛とかダメだからね⁉」


 ダメゼッタイ!

 メイメイにカレシなんてパパが許しませんよ!


「あ~私のことじゃないです~」


「なーんだ。なーんだ。なーんだあ。アニメ? マンガ? おすすめのやつを教えようか?」


 ふう、取り乱してしまった。危なく非実在の相手の存在を抹消するところだったゼ。


「そうじゃなくて~、私見ちゃったんです……」


「ん、何を?」


「えっと、その、アカリちゃんとウタちゃんが……キスしてるところ!」


 ……はい? なんだって?

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