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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第五章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1~#2編

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第3話 血を吸う行為は神聖な儀式?

「ウタさんやー。いつも言ってますけど、とくにライブの日の朝はね、時間通りに集合してくれないと困るんだよねえ」


「ごめんなさい。朝は血糖……生き血が足りなくて」


 ウタがバスの座席の上で正座をして反省中。

 シートベルトして正座って器用だね。うん、法律は守れていてえらいね。


「ほら、シオと都も何か言ってやってよー」


「な~、うちは勇者やあらへんのやで……。棺桶を引きずって歩くのはちと無理やったなあ」


 シオがトントンと自身の肩を叩く。その首筋には荒縄が食い込んだ跡が赤く残っていた。痛そー。限界までがんばったのだということが容易にうかがえる。


「シオが途中まで棺桶のベッドごと引っ張ってくれてたんだよ? 何か言うことは?」


「ごめんなさい。改善施策として、移動用のキャスターをつけておくわ……」


 こ、こいつ……また寝坊する気だっ!


「ま~ね~、中身だけ運ぶなら軽いものだし、私ももう慣れたわよ」


 と、都。

 パワー系のリーダーがそう言うんじゃ……これ以上は怒りづらい。まあ仕方ないか。いや、だったら最初から棺桶は都に引かせればよかったのか……ボクの采配ミスだ。


「生き血さえあれば私もすっきり目覚められるのよ……」


 まだ言ってる……。

 最近ずっとこの吸血鬼設定(?)を押してくるようになったなあ。前にも増して黒いドレスばかり着るようになったよね。それになんか体の周りにコウモリのエフェクトまで散らしながら歩いて、本格的にそっちのキャラで行く気なのかな。


「そんなに生き血がほしいの? 私ので良かったら飲む?」


 都が袖をまくって腕を差し出す。


「……良いの? 本当に? 都さん……もしかして私のことを……」


 ウタが熱を帯びた潤んだ目で都のことを見つめる。


 これは……。

 どうやらウタの中では血を飲むということはかなり特別な行為なのかな?


「ま、献血みたいなものかしらね? それに血を抜いたら痩せるって聞いてこともあるし」


 それはダメー! ちゃんと医療施設で正しい手順を踏んで献血してください! 不衛生な口で噛みついて血を吸ったりしたら、感染症になるリスクもあるんですよ⁉


 あー、あれ? でも単純な疑問が湧いてきたぞ。


「なんかさ、それこそ研究室で人工血液とかパパッと作ればいいんじゃないの?」


 人から吸わなくても新鮮な血液が飲み放題ですよ? 体に良いかは知らないけど。


「非常に現代的な考え方ね。効率を重視するのは情緒がないわよ」

 

 ウタが冷めた目でこちらを見てくる。


「血を吸うのに情緒も何もないでしょうよ……」


「血を吸う行為は神聖な儀式なのよ。それを人工血液で代用しようなんて……」


 ウタがこれみよがしに大きなため息をついて見せる。

 やっぱり何か特別な意味があるんだね。いやでも、神聖な儀式って言われても、それに共感できる人はこの中には誰もいないんじゃ……。


「これまではどうしてたのさ? その神聖な儀式とやら。誰から血をもらってたの?」


 と、かねてよりの疑問をぶつけてみる。ウタは黙ったまま答えない。


「もしもしウタさん? これまで血液はどうやって入手していたんですかあ?」


 いくら尋ねても聞こえないふりをするウタを見て、突然シオが吹き出した。


「やめややめや。ウヒヒヒヒ。もうこれ以上はあかんわ。あんな~ウタちゃんはな~、まだ吸血童貞なんやで」


 シオが笑いながら言うと、ウタは耳まで真っ赤にして下を向いてしまった。

 吸血童貞って何だよ……。まーた知らない単語が出てきたわ。


「まだ血を吸ったことがないんよ。吸う吸う詐欺みたいなもんやな」


「ち、違うわよ! 初めては大切な……」


 消え入るような声でそうつぶやきながら、ちらりとボクのほうを見てくる。そこでこっちを見るのはずるくない? 吸血にそんな重い意味があるの? じゃあどうぞって気軽に言えないでしょ……。


「詩、ごめんね。私の血を飲む? なんて気軽に言ってしまって……。初めての想いではステキなものにしたいわよね」


 都が涙ぐみながらウタを抱きしめる。

 え、今どこに感動要素があったの⁉


「都さん……」


 あれ? ウタさん⁉ もしかして、都にやさしくされて、ちょっと好きになってません? 実はやさしくしてくれる人なら誰でも良いんじゃ……。それはそれでなんかめっちゃモヤるんですけどー!


「とうとうウタちゃんが血を吸うんですか~?」


 メイメイがポッキーを加えながらひょっこり顔を出してきた。

 危ないからバスの中でうろうろしない! もっと危ないから物を加えながら歩かない! あとデリケートな問題だから気軽な気持ちで話題に入ってこない!


「そうですか。吸血を……むにゃむにゃ。それではこちらの『いつでもどこでもかんたん吸血くんType-blood』を腕に装着して……むにゃむにゃ」


 サクにゃんは良いから寝てて! ピンポイントで余計な発明品持ってこなくて良いから! 

 まったく、蚊と吸血鬼以外に需要ないでしょ、そんな発明品……。


 と、レイに服の裾を軽く引っ張られる。


「かえでくん、東京公会堂が見えてきましたよ。いよいよですね」


 東京公会堂が見えてくる。ちょっと設備が古くて、どこか懐かしい感じのする区の施設だ。


 ああ、いよいよ定期公演が始まるんだ。これから1年間よろしくね。

 

 さあ、ボクたちの新たな挑戦の始まりだ。


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