第55話 謎解きスタンプラリー5~ vs ハンター
「ハンターがきてる……どうしよう⁉ 逃げるか噴水の陰に隠れるか、どっち⁉」
えーと、ここはひとまず隠れよう!
たぶん動いて南に進むと見つかる気がする。あの狭いサングラスの視界に入らなければ見えないことにしてくれるってルールだったよね、確か。
なんとか違う方向に進んでくれれば……。心臓がバクバクだ!
「ハンターが南側に進んで、こっちの噴水のほうに来ちゃったらたぶん見つかっちゃう……。でも、そのまま素通りして西側に進んでくれれば……」
なんとか……ボクの運に賭ける!
気配を消せ。ボクは噴水の一部だ。ここには誰もいませんよ!
その時だった――。
「あっれ~! もしかしてチィタマ? やっほやっほ~! チィタマだ~♡ そんなところにしゃがんで何してるの~?」
声の主はマキだ!
バーベキュー広場のほうだ。こっちに向かって、マキが手を振りながら歩いてくる。
なんて最悪なタイミングで登場するんだ!
「バッカッ! しゃがんで! ハンターがいるからっ!」
小声で呼びかけてみるも、噴水の音でぜんぜん届いていない。
ジェスチャーでしゃがむように指示を出しても、マキはまったくそれを感じ取ってくれていない!
「な~に? 愛しのヒマリちゃんですよ~♡ 再会のハグでもする?」
空気読んで! そんな場面じゃないんだってば! しゃがんでしゃがんで!
無情にもハンターがこちらを捕捉した。
「うわーダメだ、気づかれた!」
捕捉されたのはマキだ!
ハンターはロボットのような動きで首を振って見せた後、マキに向かって猛然とダッシュをしてくる。
「ヒマリ、逃げて! ハンターに見つかってる!」
「え、マジ⁉ もう捕まりたくないんですけど~!」
ようやくハンターの存在に気付いたマキが、慌てたように今来た道を引き返していく。
あれ⁉ マキの足、靴じゃなくてスリッパだ! もしかして、さっき捕まった時のお仕置きで靴を取られたの⁉ ぬはー、スリッパだとぜんぜんダッシュできてない……。そりゃスリッパじゃ走れないよね……。
その時だった。
突然、マキの姿が忽然と消えた。
あれ⁉ 何もない原っぱなのになぜ⁉
どこいった⁉
「ヒマリが消えた⁉」
ボクは立ち上がって確認する。
いないぞ。マジで消えた。
ということは――。
「ハンターこっち来るじゃん! いーやーだー!」
目標を見失ったハンターが次に補足したのは、ボク・チィタマだ!
最悪最悪! やばいよー! 逃げなきゃ、どっちに⁉ とりあえず南か!
スカートがめくれ上がるのを気にしている余裕もない。
全力のチィタマダッシュ! ニャンニャンニャン!
四つん這いじゃなくて二足ダッシュだけど、今だけは許してニャン!
ボクのほうが走り出すのが速かったからか、一気にハンターとの距離が広がる。
いや、たぶんボクのほうが足速そう!
いける、逃げ切れるぞ! がんばれチィタマ! ニャンニャン!
「うぉ、分かれ道! えーと、どっちだ……たぶんこっち西だ!」
地図を見ている余裕はない。
急いで太いほうの道へ向かってダッシュする。
太い道のほうが安全なはずだ!
と思ったのが間違いでした……。
「あああああ! ここ行き止まりぃ!」
目の前には巨大な流れるプールがそびえたっていた。
道が広いと錯覚したのは、プールへの入場列を整理するためのスペースだったのだ。意図的にプール前の道路を広くしてあるなんて罠じゃん……。
「ここってプール入り口だよ……」
絶望的状況。
少し遅れてハンターが到着する……。
ここからなんとか……どうする。フェイントでかわす⁉ 道幅広いしいけるか⁉
ハンターとお見合い。
右か左か……。視線でフェイントをかけるも、ハンターは一切動かない。
ダメだ、ハンターってロボットか。
強引に左からかわして逃げようとしたところをがっちりとタックルで確保されてしまった……。
チィタマプール前にて死す。
「ダメでした……。つかまってしまったニャーン!」
なんでボクはあそこで西に進んでしまったんだよぉ。
ちゃんと地図が頭に入ってさえいれば……。
◆挿絵
「あの……ボク、どこに連れていかれるんですか……?」
ハンターの人は何も答えてくれない。
ただ手を引かれてどこかに連行されていく。……方角的には管理棟かなあ。
うわー、マジでやだー。お仕置きやだー!
「痛いのは嫌なんですけどニャン……。あ、そうだ。痛いお仕置きはヒマリとナズナが好きなので、そっちにお願いするニャン。たぶんそっちのほうが取れ高ばっちりだニャン」
どうにかボクはやさしいやつでお願いします。
「猫だから痛いのはホントにダメなんだニャン……」
必死の訴えにもハンターの人は何も答えてくれない……。
鬼! 悪魔!
誰か助けてー! ヒマリー! ナズナー!
おい、カメラマンの人! 笑ってないで助けてよ!




