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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第四章 定期公演 ~ Monthly Party 2024 ~ #1(Pre)編

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第38話 新年の会合。みんなしあわせになりたいね

「あけましておめでとうございます」


「もうとっくに正月過ぎてんで。今日何日や思ってるん?」


「いや、ほら、マネージャー全員顔を合わせたのは今日が初だから、とりあえずね?」


 新年早々(?)花さんに呼び出されて、狭い会議室にボクたち5人は集まっていた。


「つまり初吸血して良いということかしら?」


「良いわけないでしょ」


 ウタはなんで純粋な目をしてそんな頭のおかしなことが言えるの? そんなんで初笑いはとれないよ?


「うたさん。かえでくんの血は大変貴重なのです。世界にゾンビウィルスがバラまかれたときに、かえでくんの血から特効薬を精製するんです」


「いや、さすがにそんなたいそうなものではないけど、吸われるのはちょっと……」


 レイもウタも極端なんだよねえ。ちょうど中間で平穏な感じで頼みたいんだけど。ね、都?


「私のことを見ないでくれる? そっちの集団の仲間みたいに扱われたくないわ」


 そっちの集団ってひどい! って、あれ? なんか都ふっくらしてる?


「まさか……餅の食べ過ぎ?」


「言わないで! 私のことを見ないで!」


 都がシオの後ろに隠れる……でも隠れて切れていない。


「シオは細いから……」


「カエちん。そのくらいにしとかんと、ミヤちゃんに張り手されんで」


「張り手……」


 入門……


「しないわよっ!」


 そう言いながら、都がシオの背中に見事な張り手をかます。シオが声もないまま膝から崩れ落ちていく。


「ああっ! シオ、しっかり! まだ息はある⁉」


「犯人はミヤ……ガクリ」


「シオーーーーーーーーー!」


「11時45分。ご臨終です」


「そ、そんな……。私はちょっと背中に触っただけなのに……」


 ああ、惜しい人を亡くしてしまった!


「あなたたち、元気なのは良いのだけれど、まだ正月気分が抜けないのかしら? そろそろ仕事の話をしたいわね」


 ひとしきり黙ってみていた花さんが、いい加減にしろとばかりに深いため息をついた。さーせん。ひさしぶりなもので、都で遊んでしまいました!


「花さん。うちはふざけてないで……。マジで息が止まったんやって! 背中の骨が何本か折れたっちゅ~ねん!」


 ようやく立ち上がったシオが、まだ痛そうに背中を触っている。


「しおりさん。こちらをどうぞ。とりあえず冷やしてください」


 レイがシップを手渡している。


「お~レイちゃんおおきに。……届かへんからついでに貼ってくれへん?」


「はい。それでは失礼して……」


 シャツの下から手を入れて、器用にシップを貼っている。

 服、脱げばいいのに。誰も見てないんだから。


(かえでくんのエッチ)


 なんで⁉ 女同士じゃん!


(エッチ)


 ええ……。理不尽!



「さて、もういいかしらね。一応集まってもらったのは新年だし、全員で顔を合わせて今年もがんばっていこうという決意表明の意味も含めているのよ。でも、あなたたちが元気そうにじゃれ合っているのを見て安心したわ」


 花さんが腕を組んで苦笑している。「はい、ボクたちはいつでも元気です! 若いからね!」とは言わない。新年からガチで刺されたくないもの。


「花さんはどんな正月を過ごしたんですか? 初詣いきました?」


「ええ、まあ。東京大神宮に」


「……なるほど」


 はい。ガチのあれね。恋愛成就のやつ。もう誰か結婚してあげてぇぇぇぇぇ! 美人だし、仕事もできるし、ちょっとお菓子食べ過ぎだけど太ったりしてないよぉ!


「花さんも今年こそはご縁があるとええな……」


「恋愛成就の護符を作ってあげましょうか?」


 ウタが何やら空中に印を結ぶような動作をしだす。ウタって護符とか作れるの⁉


「護符⁉ 御利益あるのかしら?」


 花さんが興味を示したぞ。


「ええ。私、吸血鬼の末裔なので、血文字で護符を作ることができるの」


 うわー。触れたらあかんやつやー。花さん、そこで撤退だ!


「吸血鬼の末裔……ぜひお願いするわ!」


 うわー、あえて踏み込んだー! 花さんマジかー⁉ 目の前で自分が吸血鬼ですって言ってる人の手を握って、怪しげな護符を頼むんだ……。ああ、このマネージャーチームはもうダメみたいです……。まともな人がボクしかいないです。誰か助けてー!


「わたし、師匠からこんなものをいただいていますけれど、はなさんに必要なものですか?」


 レイがカバンから取り出したのは――


「「「「「惚れ薬⁉」」」」」


 全員で重なるようにピルケースのラベルを読み上げた。


「ダメダメダメ! そんな危険なもの早く海に捨ててー! 人類には早すぎるから!」


「いいえ、私に預けなさい」


「私も……興味なくはないわね」


「上長命令です。すぐにそれを渡しなさい」


「まあ、そこまで言うんやったら? うちが預かってあげてもええで?」


 全員がレイににじり寄る。


「えっと、どうしましょう……。この薬は1つしかなくて……」


 レイがピルケースを振ると、中で1粒の錠剤が転がる音がする。


 なんで1個しかないんだよぉ!

 もめごとの種じゃんかー!


「レイ、落ち着いて……そのピルケースをこっちに寄こすんだ!」


 それは人類にはまだ早い。危険だ! ボクが処分する!


「わかりました。かえでくん、おねがいします。あっ」


 こちらへ歩いてこようとした、何かにつまずいてバランスを崩す。


「レイ!」


 ボクの体が反射的に動き、レイを支えていた。ふぅ、危ない。


「かえでくん、ありがとうございます」


「うん。ケガがなくて良かった。じゃあピルケースを」


 無事、レイからピルケースを受け取る。

 これで戦争は回避された……あれ?


「中身が入ってないぞ」


 ピルケースを振ってみるも、スカスカ……何の音もしない。開けてみても中身は空っぽだった。


「えっと、これは……」


 今つまずいた拍子に中身がどこかへ飛んで行った、のかな⁉

 ということは――


「お宝……欲しけりゃくれてやる。探せ! この世の全てをそこに置いてきた!」


「うぉぉぉぉぉぉ!」


 花さんが雄たけびを上げて床を這いつくばる。


 もちろんほかのメンバーもコンマ何秒遅れかで、同じように床掃除を始めていた。


 なんて醜い争いなんだ……。しかしなりふり構っていられないのが性か……。


「見つけた人にだけしあわせが訪れるんだなあ」


「まるで四つ葉のクローバーみたいだね」


 ゴールドラッシュに沸き立つ海賊たちを見下ろしながら、レイに話しかける。


「そうですね。ところでかえでくんは探さないのですか?」


「ボクはみんながしあわせならそれでいいかなー。でも、争いのもとになるならホントは処分したいけどね」


「かえでくんはやさしいですね」


 レイがボクの手をギュッと握ってくる。


「ん、レイ? これっ」


 レイのもう片方の手がボクの唇を押さえ、その次の言葉を紡ぐことができなかった。


 ボクの手に握らされたのは小さな錠剤。

 血眼になって地面を徘徊する4人……。


 諸悪の根源をそっとポケットにしまいながら、世界平和を祈るボクなのであった。


 こんなものがあるから世界から戦争がなくならないんだなあ。


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