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ボク、女の子になって過去にタイムリープしたみたいです。最推しアイドルのマネージャーになったので、彼女が売れるために何でもします!  作者: 奇蹟あい
第一章 オーディション 編

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第20話 ボクがここにいる意味

『マネージャー vs アイドル』対バン大作戦の決行日を、オーディションの1週間前の日曜日に定めた。

 今日が日曜日なので来週の今日、つまり1週間後が対決日ということになる。


 さっそくアイドル候補たちを呼んで目的と内容の説明をしたけれど、さしたる混乱もなく、むしろ大歓迎という雰囲気だったのは少し以外だった。正直もっと荒れるのかと思った。

「オーディション前にそんなことやってられるかー」とか、「マネージャーがアイドルと対バンするなんて調子乗ってんじゃねー」とか……まあ、ちょっと考えればあの子たちがそんなこと言うわけないか。


 この対バンを一番歓迎していたのはサクにゃんだった。


「コーチと対決できるなんてすっごいうれしいにゃん!」

 

 サクにゃんは目を輝かせながら飛び跳ねていた。ネコミミも元気に動いていた。そして数日前から、白くて長いしっぽも生えていた。

 どっちもどういう仕組みなのかわからないけれど、サクにゃんの感情に合わせて勝手に動く、らしい……。


 サクにゃんとは最初にちょっと一緒にダンスをしたくらいだったのに、それからずっとボクのことをコーチと呼んで慕ってくれている。ちょっとくすぐったい。

 でもコーチと呼んでくれるからには、サクにゃんに何かをもたらしてあげたい。ボクも気合いでがんばるにゃん!


 対バンに一番難色を示したのは、意外にもメイメイだった。


「絶対いやです~。1週間もカエくんの部屋に立ち入り禁止なんて! 鬼! 悪魔!」


「わたしたちはマネージャーで、さつきさんはアイドルの卵。立場をわきまえてくださいね!」


「いやです~。レイちゃんキライキライ! いっつもいっつも消灯時間だからもう自分の部屋に戻れってガミガミガミガミ」


「規律違反は重罪です。消灯時間は絶対なので。守らなければ謹慎処分になりますので、速やかにご自分の部屋へおかえりください。わたしはかえでくんを寝かしつけるという重要な仕事があるので、いつまでも部屋に居られると迷惑なんです」


「え、まさか、カエくん⁉」


 メイメイ、何その目⁉

 やましいことなんて何もありませんよ⁉


「いやいやいや、まさか⁉ じゃないよ! そんな仕事ないからね⁉ 寝室はちゃんと分かれてるからね!」


 という流れがありまして。

 レイの提案で対バンの作戦内容が漏れると不公平になるから、1週間はマネージャーとアイドル候補それぞれの部屋の行き来を禁止したのだった。


 レイさん……ホントに作戦のため……なんだよね?



* * *


『マネージャー作戦本部』


 さっきまでマネージャー5人で集まっていた会議室に再び戻ってきた。

 そしてホワイトボードには新たなタイトルが書きこまれる。


「今日中に作戦の大枠だけでも決めておかないと、平日に全員集まって話し合える時間はあまり作れそうにないから、長丁場だけどみんながんばれるかしら?」


 もちろん! それぞれのバディたちも別の会議室で作戦を立てているんだ。ボクらマネージャーもがんばるに決まっている!


 ボクらは顔を見合わせながら、力強くうなずきあった。

 思いはみんな同じようで安心した。



------------

対バンおしながき

1.課題曲(アイドル候補グループ)

2.MC3分(アイドル候補グループ)

3.課題曲マネージャーグループ

4.MC3マネージャーグループ

------------


 オーディションの準備も兼ねているので、パフォーマンスはその課題曲1曲のみで行う。それ以外は何をしても自由。


「それでは曲の歌割とフォーメンションなのだけど、基本的にはバディに対応するパートを――」


 市川さんが話始めようとしたところで、三井さんが咳払いをして注目を集める。


「バーン! まずはこれ決めな、なっ?」


『グループ名大募集!』


 あ、はい。まあ、たしかに?「ボクたちはマネージャーグループです」っていうのもなんか締まらないというか。


「私はサポーターズがいいと思うわ」


 腕を組んで足を組んでセクシーセクシーな詩姉ちゃんが早速意見を出してくる。


「サポーターズ? 詩、由来というか理由を聞いても良いかしら?」


「私たちはマネージャー。サポートする者、サポーターズ」


「なるほど、そういうことね。ありがとう」


 市川さんは小さくうなずく。納得したご様子だ。

 まあ1個目の案としては無難で良いのでは、とボクも思う。


------------

グループ名大募集!

・サポーターズ

------------


「では次は私。MUSKRat(マスクラット)なんてどうかしら?」


 ちょっとどや顔をしている市川さん。

 まあ、意図は分かりやすいけれど……うーん、とっても訊いてほしそうにしていますね……。


「じゃあ、次はボクの番かな。ボクの案は――」


「ちょっと! その前に私にもネーミングの由来を尋ねなさいよっ!」


「え、あ、うん。マスクラットってネズミだっけ? それじゃあ市川さん。みんなの名前の頭文字を並べたMUSKRatの由来を聞いてもいい?」


「楓……ひどいわ……。全部答えを言うのやめてもらえる? そうよそうよっ! みんなの名前の頭文字を並べてみたの! なんか文句ある⁉」


 うわー、逆ギレーだ。しかもちょっと泣いてるー。


「今のはかえでくんが悪いです」


「そうね、申し訳ないけれど10対0で七瀬さんが悪いわ」


「カエちんイエローカード、と」


 うわー、総バッシングだ。ボクが審判にイエローカード出されているイラストまで描かれてるー。


「市川さん、この度は誠に申し訳ございませんでした。以後このようなことがないように十分注意してまいる所存でございます」


 ボクは深く頭を下げた。


「……都。都って呼んで! 市川さん、なんて呼び方いつまで続けてるの? 私たちはチームで家族なんだからファーストネームで呼びましょうよ!」


「まあたしかにそうだね……。都ごめんね!」


「いいのよ、さ、楓の案も出して」


 都の泣き顔が笑顔に変わった。


 呼び方を変えるタイミングって難しいからね。

 誰もぎこちなくならない良いタイミングの提案ありがとう!



「ボクは……Reinforce(レインフォース)なんていいんじゃないかと思うんだけど」


「それはどういう意味?」


「直訳だと補強するって意味かな。アイドル候補のみんなを支える、手助けする、強くするって願いを込めてみたんだけど、どうかな」


 みんなノーリアクション。ちょっとメッセージ性強すぎたかな。

 

「うちは好きかな。レインフォースええね」


 三井さ……栞さん……シオが賛成してくれた。

 なぜか雨の中、傘をさしているボクのイラストが添えられているのはジョークなのか、わかっていないのか審議中。そっちの(レイン)ではないんだけど。


------------

グループ名大募集!

・サポーターズ

・MUSKRat

・Reinforce

------------


「次はうちの番かな。チアーズがええなと思うやけど~。衣装もフリフリのかわいいのにしいひん?」


 シオのイメージはチアリーダーかな。課題曲の曲調的には、チアリーディングの服はちょっと合わなそうだけど、応援団という意味の名前は悪くないかな。


「私のサポーターズに近いイメージ? 好感が持てるわ」

 

 詩お姉ちゃんが満足そうに何度もうなずいている。

 まあ、系統としてはボクのReinforceも仲間なんだけどね。


------------

グループ名大募集!

・サポーターズ

・MUSKRat

・Reinforce

・チアーズ

------------


「最後はわたしですね。シンプルに、ペンタグラムなどいかがでしょうか」


 レイは星型、というよりは五芒星の書かれたシルバーのペンダントを胸に抱いている。

 陰陽師みたいなデザインかっこいいなあ。


「零は東洋の占いにも造詣が深いのね。占い結果はどのグループ名が良いと言っているのかしら」


「これは占いではなく、破魔、魔よけの一種ですよ。わたしたち5人が集まって描くペンタグラムが悪いものを祓い、彼女たちをオーディション合格へ、そしてその後アイドルとしてスターへの階段を駆け上がるための道標となる一番星。そんな意味を込めてみました」


 レイはゆっくりとペンタグラムを天へ掲げた。


------------

グループ名大募集!

・サポーターズ

・MUSKRat

・Reinforce

・チアーズ

・ペンタグラム

------------


「それぞれの意見も出たところで、私たちのグループ名を決めてしまいましょうか」


 一番しっくりくるのは、やっぱり――。


「私は零のペンタグラムで決まりだと思うのだけれど、みんなはどうかしら?」


 1人1人の目を見て、意思を確かめるように都が言う。


「異議なしよ」


「しっくりくるよ」


「うちもペンダントほしいわ~」


 満場一致で決まった。


「本当にいいの? みなさんの意見もとても良かったと思いますし……」


「レイのが一番ピッタリだと思った。今のオーディションのことだけじゃない。もっと先のことも見据えていて素敵だと思った」


「ありがとうございます。かえでくん、みなさん」


 レイはみんなに向かって深々とお辞儀をした。



『私たちはペンタグラム!』


 ホワイトボードが流れ星で埋まっていく。


 ボクが知っている未来はこうだ。

 彼女たちはオーディションに合格し、アイドルとしての道を歩み始める。

 そして2年後、武道館でライブをするようなトップアイドルへと成長するのだ。


 たとえこの先がボクの知っている未来ではないとしても、彼女たちの成功を支え続けたい。


 ボクはメイメイに輝きを失ってほしくない。ずっとボクの、ボクらのアイドルでいてほしいんだ。

 

 ボクの知らない未来を見せてほしい。未来を一緒に作っていきたい。

 そのためならなんだってやってやる。


 ボクがここにいる意味を見つけた。

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