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第24話 鈍感系主人公

「ステキです~。ハルちゃんが恋~♡」


 メイメイを呼び出して、メイカエレイ探偵団の3人が集結。ボクとレイの部屋のリビングに集まっていた。


「いや……ぜんぜんステキじゃないんだけど」


「ステキですよ~。ハルちゃんはカエくんが好きなのに、大きくなったカエくんのことも知らずに好きになるなんて運命です~」


 改めてそう言われると気恥ずかしい。

 でも、まあ、ハルルのボクに対する感情は、恋とは違う気がするんだけどね。


「ハルルって友達いないじゃない? ボクが初めての友だちっていうか……だから距離感がわからないんじゃないかな」


「そんなことないですよ~。私とハルちゃんは友だちですけど~、腕組んだりチュ~したりしませんし」


「いや、ボクとハルルもそんなことはしてないんだけど……腕は組んでくるか……」


 あとほっぺたにもチューはしてくるか……。


「恋ですね」


 さらりと言うレイの表情からは何の感情も読み取れない。レイは独占欲が強そうでいて、こういう時は激しく主張したりしないのだ。「わたしのわたしの」とは言ってくれない。ちょっとだけさみしい気持ちはある。


「わたしのわたしの」


「いや、今言わなくて良いから」


 無表情でやめてね?


「件のダーリンがカエくんの成長した姿だって知ったら、ハルちゃんショック受けますかね~?」


 メイメイが難しい顔をして腕を組む。どうだろうなあ。反応が予想できない以上、やっぱり知られたくはないな。


「わたしは、はるさんには正体を明かすべきではないと考えます」


「そうなんだ。その心は?」


「理由は明白です。はるさんは猪突猛進タイプなので、かえでくんと理想のダーリンさんが同一人物だとわかれば、理性のタガが外れてしまうと予想されるからです」


 レイがきっぱりと言い切る。

 猪突猛進タイプ……なるほど、たしかに。


「ちなみに理性のタガが外れるとは……?」


「無事ではすみませんね」


「え、怖い」


「詳しくは、新栞約聖書の1350ページをご覧ください」


「レイちゃん過激です……」


 何その新栞約聖書って……。そっちも怖い。絶対悪魔の書みたいな内容だよね、それ。


「バイブルです」


 自ら聖書って名乗る本ほど怪しいものはないと思うんだけど。


「預言にある通りの災厄が降りかからないようにするためにも、ここは正体を明かさずに回避するシナリオで行くのが良いと思います」


 預言……災厄……ワードがいちいち強い!


「私もそれに賛成です~。カエくんとお別れしたくないです~」


「その災厄が降りかかると、ボク死ぬの⁉」


「それはわたしの口からは……」


 レイ、悲しそうに目をそらすのはやめて?


「わかったわかった。もうその聖書の話は良いから、レイの考えているシナリオを聞かせて」


 このままだと災厄が降りかかる前にストレスでどうにかなるわ!


「わかりました。まずは設定ですが――」



 レイの話を要約するとこうだ。

 ダーリン(20歳)はアメリカ支部の研究員という設定。

 所用で日本支部を訪れたが、用事が済んだので数日以内に帰国する予定である。

 もともと日本のアイドルには興味があり、ハルルを一目見た時から、とてもかわいいと思っていた。帰国前に一度会って話がしたいと思っている。

 ただし、アメリカに恋人がいるのでお付き合いしたり結婚したりはできない。


「うーん? アメリカ支部なんてあるのか知らないけど、数日以内に帰国予定の研究員ってところまででそれ以降の設定は必要?」


 なんていうか、メッセージだけもらったことにして、「ごめんね、恋人がいるから付き合えないし結婚できないよ、アメリカに帰るね」って感じに収めれば良くない?


「かえでくん、それではダメです」


「ダメですね~。それだとたりませんよ~」


 たりない、とは?


「はるさんの気持ちが膨らんだまま、逃がす先がなくなってしまいます」


「なるほど? 恋……を終わらせてあげないといけないってこと?」


「そういうことです。かえでくんにしては察しが良いですね」


 何その評価。

 鈍感系主人公みたいな扱いはやめて?


「鈍感系主人公のかえでくんにもわかりやすく説明します」


 はっきり言ってくるね⁉ ボクは気配り上手の脇役のつもりで生きてるからね?


「≪REJU_b≫を服用した状態で、はるさんとデートしてもらいます。どこかに出歩くということではなく、ラウンジ辺りでアイドル論について語り合うといった展開が良いと思います」


「それと~、やっぱりハルちゃんの歌も聞いてあげてほしいかな~。全力のパフォーマンスで恋を昇華させましょう~」


 なるほど。アイドルに興味がある設定だから、歌を聞きたいというのも自然な流れだね。

 恋する気持ちを良い思い出に変える、と。


「なんか良さそうに感じるね。いっちょやってみますか~」


「賛同していただきありがとうございます。それではデートのセッティングはわたしのほうでしておきますので、かえでくんは準備を行ってください」


 レイが小さく頭を下げてくる。その横で、メイメイが親指を立ててウィンクしてくる。


「準備とは? 当日薬を飲めば良いだけでは?」


 なんかほかにすることあるの?


「かえでくん。役作りを舐めているんですか?」


「いるんですか~?」


 いいえ、そんなことは滅相もございません……。ああ、いやな予感しかしない……。


「ししょーのところで、アメリカの研究員ダーリン20歳の役作りの特訓ですよ~」


 ああ……やっぱりそうなるのか……。

 やだなあ。

 ねえ、そこまでする必要ある?


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