第23話 人探しなら、メイカエレイ探偵団におまかせ⁉
「メイカエレイ探偵団に、その人の調査をお願いしたいのだけれど」
ノー!
断固拒否する!
「えーと、定期公演の準備もあるし、ボクたちも暇じゃなくてね……」
やんわりと乗り気ではない雰囲気を出していく。
察して!
なんとか断れないものだろうか……。
これ以上≪REJU≫シリーズのことは広げたくないんだよ……。ただでさえ≪REJU_s≫のほうを毎日飲まされてるのに、≪REJU_b≫のほうまでってなったら、さすがにボクの体がもたないよ……。
「なんでもお任せって言ってたじゃないのよ! 親友の私のお願いは聞いてくれないんだ? えーんえーん」
ハルルが両手で顔を押さえて、泣き声をあげる。
ウソ泣き下手か……。女優志望、しっかりせいっ!
「ビル内で見かけたなら事務所の関係者でしょ。探さなくてもそのうち会えるでしょー」
まあ、たぶんもう二度と会えないけどね。ごめんね。
「そうだけど~。でも知りたいのよ~」
「何をさ?」
「その人の名前、所属、何している人なのか」
「会った時に聞けば良いのでは?」
「だって恥ずかしいじゃない……。年齢、身長、体重、家族構成、恋人がいるかどうかも知りたいし、食の好みも――」
「待って待って。それをボクに聞かれても答えられないから!」
こわい。
マジと書いて本気だ。
だいたいいつも、ハルルはほしがり過ぎなんだよ。オタク気質で全部手にいれようとするから……。
レイ……レイさーん。助けてー。どうしよう……。
(正体は明かさずに会わせてあげたほうが良いと思います)
ええ……。ボクが別人の演技をするってこと?
(それが一番穏便に済む方法だと思います)
隠しきれる自信ないなあ。どうしたらいいんだろう。
(わたしに考えがあります。まずは時間を稼ぎましょう)
時間を稼ぐって?
音もなく背後に現れたレイが、トイレの洗面台の鏡越しに映る。ばっちり探偵団ルックだ。
レイがボクの頭におそろいのマントをかけてくる。探偵団のマント……これに着替えろってことなの……。
「話は聞かせてもらいました。その依頼、メイカエレイ探偵団がお引き受けします」
「レイさん!」
メイメイもそうだけど、ハルルのその「待ってました」的なあれ、なんなの?「何でいつも話を聞いているの?」とか、「音もなく突然現れておかしいな?」とか、そういうのないわけ?
「はるさんの恋のお相手、このメイカエレイ探偵団が見事に探り当てて見せます」
「もう、恋人だなんて気が早いわよ~♡」
ハルルが顔を真っ赤にしながら、レイの肩を高速で叩き続ける。
必殺ゴリラ張り手! レイの肩は大丈夫か⁉
「やっぱり式は洋式がいいわ。関係者だけでひっそりとね♡ やだも~、カエデちゃんの前で恥ずかしいわ」
だ、ダメだ……完全にどこかへ逝ってしまわれてる。
誰も恋人だなんて言ってない……。気が早いのはハルルだよ。
「はるさんのイメージはチャペル式でしょうか?」
「そうね~、やっぱりウェディングドレスを着たいわ♡ みんなの前で誓いのキス……キャ~♡」
いや、そこ話広げていくの? それ今必要な質問だった?
「お相手の方が神前式を希望された場合どうなさいますか?」
「白無垢ね。それも気にはなっているのよね~。もちろんダーリンにお任せするわ♡」
ダーリン……。
「承知いたしました。オーダー確認いたします。ご希望はチャペル式で参列者は事務所関係者。お相手の希望次第では神前式でも可、ですね?」
いや、ファミレスの注文じゃないからね。
「はい、それでお願いします♡」
お願いします、じゃないよ。非実在人物との結婚式の話を進めないで?
「続いて披露宴の段取りですが――」
「いや、それは後にして……。まずは相手の人を探すほうが先じゃない?」
これ以上聞いていると頭痛くなる……。
ボクとしては相手の人も探したくないんだけどね。
「そうよね。ダーリンが式だけを望むかもしれないし」
違う。そうじゃない!
「2人ともウェディングドレスをご希望ですか? それともダーリンさんにはタキシードを希望されますか?」
それも違う。
「そこが一番迷うわよね~。スーツが似合っていて素敵だったからタキシード……でもやっぱり2人ともウェディングドレスかな♡」
そうじゃないだ……。
「ご希望承りました。それではそのように進めさせていただきます」
いや、進められても困るんだけど。
「このあとわたしたちメイカエレイ探偵団は調査に入りますので、あとは大船に乗ったつもりでゆるりとお待ちください」
「レイさん、ありがとう。いつも頼りにしているわね♪」
ハルルが笑顔で手を振って見送ってくれる。
ああ、ようやくトイレから出られた……。
ひどい目にあった。
「レイ……安請け合いしてどうするのさ。確認だけど、相手の人ってボクなんだよ?」
ノリノリで結婚式の話まで進めて……諦めさせる方向じゃないわけ?
「大丈夫です。わたしに考えがあります。まずはさつきさんをお呼びしてから、今後の流れを説明します」
ええ……メイメイも呼ぶの……。面倒事が増えそう……。