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第22話 ハルルが一目惚れ?

「カエデちゃん! ごめんなさい!」


「いや……なんですか?」


 ボクはハルルに呼び止められて、壁ドンをされていた。


 トイレの中で。


「急に謝られたのも意味がわからないけど、とりあえずその態度も場所も不適切だよね?」


「壁ドンしてみたかったの! 良いでしょ!」


 それが良くないから言っているんですが……。


「トイレから出たら、まずは手、洗って?」


「私は平気よ? カエデちゃんに汚いところなんてないもの」


 その発言はマジ引く……。

 

「口の中に入れても汚くないわよ」


 なにその、「目の中に入れても痛くない」の亜種的な決定的に間違った慣用句の使い方。マジ引くわー。


「そんなことはどうでも良いのよ!」


 さらにドン! ゴリラ怖い……。


「私、カエデちゃん以外の人に見惚れてしまった……のかもしれないわ」


 さようでございますか。よござんしたね。


「なんかもう、すっごくかっこよくて……チラッとすれちがっただけなんだけど、その人のことを考えると夜も眠れないの……」


 ハルルが虚空を眺めてうっとりとしている。


 恋、ですかね。

 アイドルが恋するのにはリスクがあるけれど、恋愛禁止を掲げているグループではないので、節度を保っていれば、まあ……どうなんだろう。それはバディの考えもあるだろうから、都にも相談しないと何とも言えないけれど。


「良かったね! ハルルが本気ならボクは応援したいって思うよ!」


 視野が狭くなりがちな人だから、ちょっと心配ではあるけれどね。


「私……でも……カエデちゃんのこと……」


「ボクたち親友だよね! ハルルの恋、応援するから、何でも話してよね!」


 ふぅ。先にこのキーワードさえ出しておけばセーフか。


「親友……親友! マキさんよりも⁉」


 ハルルの目が輝きだす。

 食いついたけど、相変わらず独占欲強いなあ。


「もちろん! ハルルが一番の友達に決まってるじゃないの!」


 ボクはハルルの手を握りながら、満面の笑みでそう返す。


 というわけで一番の親友ポジションについてみました。あとのことはまったく考えてない。てへぺろ。

 あ、ハルルも手、洗ってない……。


「親友♡」


 まあ、そういう分類をすることでハルルが喜ぶならボクは何でもいいけどね。友達も親友もそんなに大きな違いはないでしょうに。


「ねぇ、親友のカエデ。何でハンドソープを5プッシュもして手を洗ってるの?」


「えっ?」


 だって、ハルルがトイレから出てから手を洗ってなかったから。


「ワタシソンナニキタナイカシラ」


 急に瞳が濁って…………こわいこわいこわい!


「そうよね……私なんてしょせん雑菌みたいな存在だし、消毒されて消えてしまえば良いんだわ」


「いや、そこまでは言ってないから……でもとりあえずハルルも手を洗おう?」


 いかん。聞いてない。

 ドロドロした陰に飲み込まれそうなほど闇落ち……浮き沈みの激しい人だなあ。


 もう埒が明かないので、ハルルの手を取り、ていねいに洗ってあげることにした。

 指先から手首までしっかりと泡をつけてこすって、と。

 何?


「人に手を洗ってもらうのって、くすぐったいけど気持ちいいわね」


「そう? 自分だと洗い残しがあったりするから、たまには洗ってもらうと良いかもね」


「たまには私がカエデちゃんの手も洗っていい?」


「え、うん、まあ良い、と思うけど……」


 それはレイに聞いたほうが良いかな。

 なぜかって?

 そりゃ、ボクの手はいつもレイが洗ってくれる決まりになっているからだよ。



「それで、ハルルが一目惚れした人ってどんな人なの?」


 ハルルの手を洗い終わったところで話を戻してみる。


「一目惚れだなんてそんな……ちょっと気になるかな、っていう程度で~」


 いやいやいや、今その人のこと想像してるでしょ? 顔が真っ赤だし、頬緩みっぱなしだし、どう見ても一目惚れの症状ですよ! お薬出しておきますねー。


「背が私よりちょっぴり高くて~、細身でスタイルが良くて~」


 ふむふむ。

 ハルルは背が高くて細い人が好きなのかあ。


「スーツが似合っていて~」


 なるほどなるほど。

 サラリーマン的な人に憧れがあるのね。


「長い髪を無造作にくくっている感じがグッときて~」


 ほう。

 ずいぶんなワイルド系? スーツに長い髪ってけっこう特徴あるね。その辺を歩いていたら印象深くて覚えていそう。


「童顔なのにキリッとしてて~」


 童顔?

 急にここまでのイメージが崩れたな。

 細身の王子様的な感じかと思ったけど、うーん?


「えっと、ちなみにどこで出会ったの?」


「35階のエレベーターホールよ。私がエレベーターに乗ろうとしたら、ちょうどその人が中から出てくるところで」


 あー、なるほどね?

 そういうことね?

 はいはい、はいはい。


 ……それ、たぶんボクだわ。


 ボクですよ!


 ≪REJU_b≫を飲んで、20歳になってちょっと調子に乗っちゃって、スーツなんか来ちゃって、できるマネージャーっぽい雰囲気を醸し出しつつ、ビルの中をうろうろしてたボクですよ!


 うわー。どうしよう⁉


 今さらホントのこと言えない!


「カエデちゃん、どうしたの? 顔色が……? もしかして、カエデちゃんもその人に会ったことあるの⁉」


 期待に満ちた顔で、肩をがっしりとつかんでくる。

 手、拭いてからにして? ボクの服、びちゃびちゃになるからさ。


「いや、うーん、どうだった、かな。覚えてないなー」


「そう、なの……。私、もう一度会いたいわ」


 やばいなー。この流れはやばいなー。


「メイカエレイ探偵団に、調査をお願いしても良いかしら⁉」


 いーやーだー!


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