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第8話 ウーミーからの相談

「ごめん、もう1回言ってくれる? ウタがなんだって?」


 ウーミーの言った言葉がちょっと飲み込めなかった。


「ですから、詩さんがマネージャーをやめたいとおっしゃられたのですわ……」


 うーん、聞き間違いではなかったか……。

 にわかには信じがたい。


「そんなことを言ってたんだ……。理由とか……聞いた? それとどんな温度感で言ってきたのかな……」


 ウーミーにだけ愚痴や不満を言った、とか、その程度ならバディの間の会話だし、大きな問題ではないとは思う。でも、そうではないとしたら。


「昨日ボイストレーニングの後、少し時間がありまして、ラウンジでお茶でもという流れでしたわ」


 まあ、自然だね。


「改めて2人で先日のライブの振り返りをしてましたの。詩さんのいらした音響室からだと、舞台全体が俯瞰して見られるということで、フォーメーションのアドバイスを中心にしてくださいましたわ」


 まあ、普通だ。マネージャーとアイドルの会話。普通だ。


「最後に定期公演の話をする流れになったのですけれど、そこで急に泣いてしまわれまして……」


「え、何で⁉」


 ぜんぜんわからなかった。

 まだ定期公演1回もやってないし、なんなら詳細も発表になっていないんだけど⁉


「なぜ……でしょうか……」


 ウーミーもピンと来ていない様子だ。


「もう少し詳しく。定期公演の話のどのあたりでウタの様子がおかしくなったの?」


「ええ……。わたくしが『1月から毎月公演ができるなんて夢のようですわ』と申し上げましたの。すると詩さんが『そうね。ここで固定ファンを増やして一気に足場を固めるわよ』とおっしゃいましたわ」


「いや、普通だね。うん、まさにそのフェーズだし」


「それから、『公演まで約2か月ですけれど、新曲もありますかしら。グループの曲となるとまだ3曲ですし』と申し上げましたら、『まだ話は聞いていないけれど、さすがに6曲は必要よね。10曲あると安心なのだけれど』とおっしゃいましたわ」


 そうね。アンコールまで含めたら10曲ほしいところだけど、さすがに2カ月で新曲を7曲は無理だよー。ソロユニット曲を混ぜつつのセトリになるんじゃないかな。


「その後、わたくしが『1月は早月さんがメインMCですわね。ミュージカルを検討されているとか。楽しみですわね』と申し上げましたら、急に泣きだしてしまわれて……」


 ええ……。

 どういうことなんだ……。


「やっぱりぜんぜんわからなかった。もしかして、死ぬほどミュージカルが嫌いだったのかな……。でもそれだけだと別にマネージャーやめたい話とつながらないよね」


「そう、ですわね。定期公演の1コーナーのお話ですし、詩さんに出演の依頼があったわけでもなく……」


 ウーミーが不可解だ、といった様子で首をひねる。

 いや、ボクも同時に首をひねっているけれど。


「いや、うーん。ちょっと温度感がわからないなあ。まだ大事にはしたくない気持ち」


 もし軽い冗談だったりしたら、大事にして変に空気を悪くしてしまうことにもなりかねない。でも、もし切羽詰まった状況だったり、かなり決意を固めている状態だったりしたらそれもめちゃくちゃ困る……。


「なんだろうなあ。やっぱりミュージカルが嫌なのかな? もしかして、初回のMCがウーミーじゃなくてメイメイだったから? でもそれが気に入らないからってマネージャーやめるって話にはならないよね……」


「それでしたら抗議するなり変更を求めるなり、そういったアクションがあってからが普通だと思いますわ」


 まあそれが筋だよね。

 でも今のところ特にそういう話は聞いていないな。

 みんなどんな脚本なのか気にして声をかけてくれるから、好意的に捉えているものだとばかり思っていたよ。


 やっぱりわからない。


「んー、ボクが話を訊く? それでもホントにいいのかな。誰かほかの人っていっても、話を広げれば広げるほど収拾がつかなくなりそう……」


 めっちゃデリケートな問題だなあ……。


「そう、ですわね……。わたくしが『あの話どうなりましたか?』と伺うのもタイミングが難しいですわ……」


 そりゃね。世間話的に聞く話ではないから、切り出すポイントは気を使いすぎる。


「そうだなあ。軽く外側から感触を確かめていくなら……やっぱりシオかなあ。研究室でも同僚だし。何か変わったことはないか、くらいの確認なら問題ないと思うんだけど。ちょっと訊いてみて良いかな?」


「良さそうに思いますわ。わたくしも詩さんとお話する際に、違和感などないかは気にするようにいたしますわ」


 それまで曇っていたウーミーの顔が晴れる。うん、そのほうがかわいいね。


 よし、それじゃあ、シオから情報収集だなあ。何か知ってたら良いけど。

 とりあえずメッセを送ってみるかな。


『お忙しいところ失礼します。お元気ですか? 新作のネタが手に入りそうなので、お時間を頂戴したく存じます』


 これでいいかな、と。


『OK。2分後にラウンジで♪』


 いや、レス速いし、2分後も早いし。

 行くか、ラウンジ!

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