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第6話 『メイメイのゲリラ雷雨』第15回目3

「さ、お笑い落第点のカエデはさっさと捌けた捌けた! シッシッ!」


 マキがボクのことを虫でも追い払うかのように手をひらひらと振る。


 ぐぬぬ。

 うまいこと言えなかった……。かなしい。

 素直に従ってフレームアウトするしかないな……。


「みんな、サラダバー……」


“カエデサラダバーw”

“バーw”

“お笑い勉強して来いよwww”

“ししょーきびしーw”

“リズムネタが鉄板だぞw”

“今年のR-1期待してるw”


 サラダバー……。

 いや、お笑いやらないからね? もうR-1の予選なんてとっくに終わってるし!


(来年のM-1にエントリーしましょうか)


 うん……2人で出ようか……。

 やっぱり鉄板はリズムネタかあ。


(かえでくん、いけません)


 ん、レイが脳内に念話を……。

 って、何が? お笑い?


(「リズムネタは麻薬だからやってはいけない」と、マーケット先輩がしくじり先生で言っていました。王道の漫才でいきましょう)


 ほぅ? 麻薬……とな?


(リズムネタで売れると世間がそれだけしか求めなくなり、飽きられたら一発屋で終わってしまうそうです。長く売れていくためには絶対に王道の漫才でいきましょう)


 長く売れていくためには? とりあえず一発当てられたら、まずはそれで良くないかな?


(いけません。お笑いは奥が深いのですよ。甘く見てはいけません。リズムネタは先輩芸人の方々がマネてくださる間が旬です。それを過ぎてしまうとフリートークができない、ひな壇芸人にもなれないコンビというレッテルを貼られて、どこの番組でも使われなくなるのです)


 うーん。そうかあ。レイがそんなに言うならリズムネタはやめておいたほうが良いのかな……。だけど、レイはいろいろできるじゃない? 双子ネタもいけるし。もしかして、いっそのことM-1よりもトリオでキングオブコントのほう良い気がしてきたんだけど、どうかな?


(それもいいかもしれませんね。そうですね。師匠に許可を得て、100人くらいに分かれてみましょうか?)


 いやそれは……たぶんお笑いを超えて事件になるからやめておこう。ボク的には、おもしろいのは六つ子までだと思うんだ。それ以上だと、なんていうか、仰天ニュースとか、そういうカテゴリーになると思うから……。


(承知いたしました。ひとまずは5人に分かれて1人≪初夏≫をマスターしたいと思います)


 うん。それはそれですごいけど……おもしろいのかなあ。

 動画で配信したら、「うまく編集したね」って感心されるとは思う。レイならメンバー全員の演じ分けもできるだろうし。

 もし仮にライブでやったら……たぶん場内騒然として、やっぱり事件になるんじゃないかな? 普通に考えて、現実目の前にレイが5人同時に出てきたら、「実は五つ子だったのかな? ボクはミクちゃんが好き!」とはならないよね……。


(かえでくんかえでくん、呼ばれてますよ。さつきさんが呼んでます)


えっ、何⁉ やっば、聞いてなかった!


「えーと、メイメイ? 今呼んでた?」


「何度も呼んだんですよ~。カエくんが難しい顔をして下を向いてるから、ししょーが心配してますよ~」


 メイメイが高速で手招きしている。

 おっふ。もう一度配信に出ろってことね?


「うん。ちょっと考え事をしてて……ごめんね」


「カエデ~。お笑いは滑ってなんぼだから気にすんな♡ 大丈夫大丈夫~♪ 渾身のネタが空ぶって、夜に枕を濡らす芸人なんて山ほどいるって話だし~」


「いや、別にボクは滑って泣いていたわけではなくて……」


 ちょっと五つ子のことを考えてました、とは言えないな。

 しかしまあ、レイがあんなにお笑い好きだとは思わなかった……。


「そういえばさ、テレビに出るようになると、アイドルもお笑いを求められるし、タレント業は大変だよね、まったく」


 あー、たしかにね。

 まず爪痕を残すにはバラエティー番組って風潮はあるかもしれない。

 メイメイにお笑いかあ。うーむ?


「はい、お笑いの話おしまい! ここからはちょっとだけ仕事の話をさせてくれ~い。は~い、みんな元気~?」


 マキが急にカメラ目線になり、営業スマイルで手を振りだす。


「ん、仕事の話?」


 そんなの打ち合わせになかったぞ……。


「ししょーなんですか~? 告知なら事前に教えてください~。ちゃんと配信の概要欄にも入れたのに~」


「サプライズだよ、サプライズ! こういうのやってみたかったんだ~♡」


「何? 良いニュース?」


 マキがずっと営業スマイルを崩さないでいるところがちょっと怖い。


 え、マジでなんですか⁉

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