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第76話 サツマイモラブの裏側(中編)

 2曲目『サツマイモラブ』が始まる。


 サクにゃんとウーミーのダブルセンターの曲。

 百合カップルとして認知されつつある2人の原点となる曲……だけど、実は前回のスポフェスではサクにゃんの相方はコスプレをしたレイだったのだ。ということは関係者しか知らない秘密。


 今回が正真正銘、本来の5人による『サツマイモラブ』をお届けするよ。


 お届けするよ、とは言っても、ボクとレイと都の3人は引き続ぎ舞台袖で待機中。このままトラブルがなければ、本番中は何もすることがない。


 何もなければライブを楽しむだけだ。


 舞台袖からみんなの様子を伺う。

 みんな伸び伸び踊ってるね。会場の熱気がこっちまで伝わってくる! とてもいい雰囲気!


 ふと、横に立つレイのほうを見る。

 サクにゃんとウーミーを見つめる表情が柔らかい。まるで一緒に踊っているみたいに楽しそうだ。


 都は……いったい何の感情だろう。

 顔が赤くなったり、急に頭を振ったり、何か頭の中がとても忙しそうだ。

 あ、わかったぞ。


「都、お腹減ったの?」


 都にそっと近寄って耳打ちする。

 サツマイモ食べたくなってるんでしょ。


「ちちちちちちがうわよ! ちゃんとダイエットしてるから!」


 都がのけぞって叫ぶ。


 ライブ中だから、静かにしようね? ここからの肉声は客席まで届かないとは思うけど。

 まあ、でも図星かな? ダイエットの話なんてしてないもんね。ちょっと頬がこけてきてる気がするし、そろそろやめたほうが……。


「サツマイモは食物繊維も豊富だし、体に良いから食べても大丈夫じゃない?」


「でも糖度が高そうだし……」


「砂糖を入れてスイーツにしたらやばいだろうけど、そのまま焼いたりふかしただけなら平気じゃない?」


 サツマイモは栄養価も高いしバランスもいいからダイエット中の人にはおススメだと思うけどな。


「そう……かしら」


「今日は打ち上げに、おイモパーティー!」


「それはちょっとやだ」


 なんでよ!

 

「かえでくん、みやこさん、しゃべってばかりいないで、みなさんのパフォーマンスを見ましょう」


「そうだね! 都、ダメだよ? 食べ物の話ばっかりしてたら」


「私じゃないわよ……」

 

 まったく、都には困ったものだよ。

 お、そろそろ間奏だ!

 いくぞーみんなー! 準備は良いかー⁉


 ボクは懐からペンライトを取り出しスイッチオンに! 青い光を確認し、勢いよく振り回した!


『カチカチ山のお嬢さん そんなに急いでどこ行くの 子ネコが落ち葉を待ってるの 石焼きぃ芋でアッチッチ ラブラブラブうみさくラブ サツマイモラブでうみさくラブ ぼくらのうみさく愛してる 春夏秋冬愛してる!』


「楓⁉ 急にどうしたの⁉」


 都が目を真ん丸にしてこっちを見ている。

 間奏の口上を入れたのに驚いたらしい。


「急にって何? えっと、サツマイモラブの口上だけど?」


 ファンの間で「やろうぜ!」ってけっこう広く触れ回られてたからね。こういうのは好き。控えめに言ってめっちゃ好き! 血沸き肉躍るっ!


「うん……それはなんとなくはわかるんだけど……」


 何でボクがやっているの? って目で見てくる。


「楽しいから都も一緒にやろう?」


 みんなでやるともっと楽しいんだよ! ホントは観客席の中に紛れてやりたい!


「わたしも覚えてみたいです」


「お、いいね。レイも一緒にやろう! まだ≪初夏≫でMIXはあんまりやってる人いないけど、汎用的なやつは覚えておいたほうがいいよ。どこでも使えるし」


 まずはMIXから教えるね!

 アイドルファンへの第一歩だ!



* * *


「みなさ~ん! 今お聞きいただいたのが『サツマイモラブ』でした~! 今日の『#海桜』どうだった~?」


 曲終わり、若干息を切らせながらハルルのMCが始まる。


 ひと際大きな歓声が上がる。

 ウーミー渾身のほっぺにチューが決まったからね!

 リハで何度もやってるはずなのに、やっぱり顔真っ赤でかわいい。


「はずかしいですわ~。でも、わたくしがんばりましたの!」


「みっちゃん、良かったですよ! サクラ、とってもうれしかったです!」


 サクにゃんがウーミーに抱きつく。

 

 サクにゃんもファンサがうまくなったなあ。それともこれが素なのかな。もう自然すぎてわからないね。



「ねぇ、みんな~。まだまだおイモがおいしい季節だけど、みんなはどんなサツマイモ料理が好き?」


 ハルルの問いかけ。


「私はスイートポテトです~。お砂糖たっぷりの甘いのが好きですよ~」


 食い気味に答えていくのが、メイメイらしい。


「サクラ、焼き芋って焼いたことないんですけど、家でやったら火事になっちゃいます?」


「サクにゃんが想像してるのは落ち葉を集めて外で焼くのでしょ?」


 すかさずスイーツ博士のナギチがツッコむ。


「そうです! お外で焚火できるところなんて、この辺りだとないですよね。キャンプ場に行くとできますか?」


「おうちでもできるよ~。おイモをアルミホイルに包んで、オーブンレンジかオーブントースターで焼くのよ!」


「そんな方法が! 渚さんすごいです! 今度お願いします!」


「私にやらせるの? 簡単だから自分で作りなさいよ~」


 サクにゃん天然か。

 観客の笑いも持っていくー。


「でも渚さんが作ったほうがおいしいですからね。みなさんもそう思いますよね⁉」


 一斉に水色のペンライトが振られる。客席、洗練された動きだなあ。

 ナギチのスイーツ講座は大人気だ!


「しょうがないなあ」


 まんざらでもない表情。ナギチの承認欲求は半端じゃないからなあ。


「ナギサちゃん! スイートポテトと大学芋とサツマイモパイとさつまいものタルトとサツマイモのケーキときんつばと芋ようかんもお願いします~」


 メイメイはよくばりさんねー。


「しょ、しょうがないなあ」


 作るんかいっ! ナギチ、ちょろやさしすぎでしょ!

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