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第64話 ご意見番のレイさん?

「麻里ちゃん麻里ちゃん。私、ししょーができましたよ!」


「お~そうか。それは良かったなあ」


 麻里さんは目を細めて笑う。

 反応がホントおばあちゃんじゃん……。


「トリニティプロモーションの十文字真紀さんという女優さんです~」


「若手注目の女優だな。私も十文字真紀のことは気にしているよ」


「朝西の映画の時お世話になって~、私が売れるためのアドバイスもしてもらいました~」


「そうかそうか~。早月のブレイクする姿を楽しみにしているぞ」


「は~い! 今度こそ私売れちゃいますね~。ししょーにカエくんの下着も差し上げましたし、バッチリですよ~」


 そこはぜんぜんバッチリじゃない。

 メイメイが売れるのにボクがあんな辱めを受ける必要は本当にあったのか。それは今後どこかできちんと問いただしたい! なんかもっとこう、動画への出演権とか、そういうビジネスライクな交渉はなかったのかな……まあ、マキ相手にはなかったか……。


「マキには、ハロウィンの時の生放送も飛び入り参加で盛り上げてもらったりもしたし、ちょっと借りを作りっぱなしですよ」


 下着で全部チャラ感はあるけどね。

 いや、もうむしろ貸しでしょ!


「ふむ、下着な。ところで楓は、もう少し乳製品を多めに取ったほうがいいんじゃないか? まだ年齢的には間に合うと思うぞ。遺伝的なポテンシャルはあるはずだ」


「麻里さん……それはいったい……何についてのアドバイスでしょうか……」


 と、聞くまでもなく麻里さんの視線はボクの胸に集中していた。

 この人……何もかも知ってて言ってるな……。


「おい、零」


「はい、師匠」


 麻里さんに呼ばれて、レイがすぐさま片膝をつく。


「ところで楓の下着なんだが、紫よりもピンクのほうが似合うと思うがどうだろう」


 ちょっと? 麻里さん、急に何を言ってるの⁉


「いいえ、かえでくんの魅力を引き出すにはだんぜん紫です」


「そうか。白いブラウスから覗くピンクのブラのほうがグッとこないか? 肌も透明感があるしな」


「楓くんの下着は男性に見せたりしないので、そういうエッチな要素は不要です」


「そうか……残念だ……」


 何が残念だ、なのさ。

 本人を前にしてなんでそんな会話ができるのか……。そうだよ! 誰かに見せる予定もないし、見せたいとも思ってないですよ!

 どっちかというと、見た目よりも着け心地が良いやつがほしい……。ずっとつけてると疲れるからね。


「麻里ちゃん麻里ちゃん! 乳製品を多めにとるとおっぱい大きくなれますか?」


「そうだな……。早月の場合は、食物繊維……レタスのほうが効果があるように思うがどうだろうか」


 麻里さんがレイのほうを見る。

 レイは立ち上がるとメイメイの全身を上から下まで観察し始める。


 レイは何かそういうご意見番か何かなのかな?

 まあ、でも、たしかな実績はあるわけだから……従っておいたほうが良いか。乳製品、を多めにと。牛乳とかヨーグルトとかかな?


「そうですね。さつきさんの食生活からすると、食物繊維を多くとるべきだと思います。それと、師匠の開発したあのサプリメントが良いのではないでしょうか」


「お~、あれか! サンプルはどこにしまったかな……」


 麻里さんがデスクに戻り、袖机をごそごそと物色しだす。

 開発……サプリメント……。めっちゃ怪しい。


「あったあった! これだ。早月、これを毎晩1錠寝る前に飲むといいぞ。1カ月くらいで効果が出始めるはずだ」


 そう言いながら、メイメイに小ぶりなピルケースを1つ手渡した。


「それで、楓にはこっちだな」


 メイメイに渡したものよりも少し大きいピルケースを2つ投げて寄こす。


「おっととと。これはなんです?」


 なんとかキャッチ。

 ピルケースにはそれぞれ黒いマジックで、雑に≪REJU_s≫≪REJU_b≫と書かれている。


「それは夢を叶える魔法のアイテムだよ」


 夢を叶える? なんのこっちゃ。


「試作品だから効果時間は短い。説明するより試したほうが早い。とりあえず1カプセル飲んでみろ」


「はあ。わかりました」


 ぜんぜん気乗りしないなあ。

 試作品と言われると、副作用とか安全性とか……。


「かえでくん! 早く飲んでみてください! さあ早く!」


 レイが前のめりに迫ってくる。


 そんな急かさなくても飲みますけどね。

 うーん、目が怪しく光っている……。これ、ホントに大丈夫な薬?


(かえでくん、早くお願いします!)


 いや、わかったから、念話で圧をかけてこないで。

 ≪REJU_s≫と≪REJU_b≫どっちを飲めばいいの?


(だんぜん≪REJU_s≫です!≪REJU_b≫は捨ててもかまいません)


 え、そんなに違うの?

 逆にこわい……。


(師匠が作ったものなので絶対安全ですから。わたしを信じてください)


 う、うーん。まあ飲むけどさあ。

 いや、良いって良いって。ペットボトルのフタくらい自分で開けられるって。まあ、開けてくれてありがとう? ところでなんでそんなに急かすの?


 レイは目がランラン、麻里さんはニヤニヤ、メイメイは自分の受け取ったピルケースを凝視する中、ボクは怪しげな試作品≪REJU_s≫のカプセルを水で喉の奥に流し込んだ。

 

 カプセルを飲み込んだ直後だった。

 胃辺りを中心に、体の中に火がついたように熱くなっていく。

 

 熱っ……なにこれ⁉


 やばい、死ぬ⁉

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