第62話 最近都の元気がないらしい
「今日もゲリラ豪雨お疲れ様。メイメイ、おしゃべり上手になったねー」
第5回の生配信を終えたメイメイをねぎらっていた。
「わ~い! ありがとうです~。カエくんに褒められちゃった~」
メイメイが自分に拍手を送りながら喜んでいる。
今日はMVの感想回になったね。ちゃんと予定通りこなせてえらい!
「ファンの人たちとMV同時再生で実況中継なんてよく思いついたね」
「他のアイドルの子がやっていたのを真似てみましたよ~」
「あ、そうなんだ? 他にもやっている人がいたんだね」
リサーチ不足。
そういう手法があるとは知らなかったよ。
「時間を見つけて、他のアイドルの子の配信アーカイブを見るようにしてるんですよ~」
「勉強熱心でえらい! ボクも何かおもしろそうなのを見つけたら共有するね」
「お願いします~」
他のアイドルのリサーチに、メイメイのファンたちがちゃんと宣伝活動をしているかの監視。しばらくは配信三昧だなあ。がんばろう。
* * *
「カエくん、カエくん。最近ミャコちゃんの元気がないと思うんですけど、何か知ってますか?」
ゲリラ配信の後片づけをしていると、メイメイがぼそりとつぶやいた。
「都が? 何も聞いてないなあ」
そういえば前々回の生配信の時に都が体調を崩して以来、あまり会話をしていないかもしれないな。
映画撮影とかも差し込まれたし、ソロユニットの関係でメイメイと一緒にいることが多いし、なんかすれ違っていたかも。
「メイメイはどこでその情報を?」
その情報元にあたれば何かわかるかもしれない。
「ハルちゃんが言ってました~。いつも忙しそうにしてるし、疲れてそうだし心配だ~って」
「なるほどね」
まあ、バディのハルルが1番よく見てるはずだよね。
都はリーダーとして1人で抱えがちだし、ちょっと全体的に任せきりになってしまっていたかもなあ。
「ちょっとハルルに話を聞いてみようかな」
直接都のところに行く前に、軽くリサーチをしよう。
「私も行きたいです~」
メイメイが足元から大きな紙袋を持ち上げる。
「最近ずっと持ってるけど、それ何? めっちゃ気になるんだけど」
「えへへ、秘密です~」
口に手を当てて笑う。
やっぱり中身が何か教えてもらえない。
ずっと持ってるから気になって仕方ないのに!
* * *
「というわけでやってきました」
「何がというわけなのよ? それでそのかっこうは何?」
ハルルがボクたちの服装を指さす。
「え? メイカエレイ探偵団だけど何か?」
事件があるところに我らあり! ご存じメイカエレイ探偵団登場だー!
紙袋にいつも入れて持ち歩いてるのね……。しかもボクの衣装まで。
「当たり前のように言われても……探偵団、なの?」
「ハルちゃん、あの有名なメイカエレイ探偵団を知らないんですか~?」
メイメイが大げさに驚く。
「知らないけど……。有名なの?」
「有名ですよ~。なんとコミカライズもしています!」
「えっ? それはボクも初耳なんだけど」
またマンガに⁉
「別冊リトルレディで連載中。現在コミックスも5巻まで発売されていますよ~」
しかも同人誌じゃない、だと⁉
「へ、へえ~。すごいのね。そのコスプレを?」
ハルルが若干引いている。
いや違うんだって! ボクたちが原作だからコスプレじゃなくて……コスプレではあるんだけど。マンガのコスプレじゃなくて、もとはただの探偵のコスプレで……。まあもう良いか別に。
「話は聞かせてもらいました。わたしが説明しましょう」
「レイちゃん!」
メイメイがうれしそうな声を上げる。
はい。いつもの登場ですね。ボクはもう驚きませんよ。
「えっ、レイさん⁉ いつからそこに⁉」
ハルルが激しくリアクションを取る。
そういうところだよ、ハルル。いつでも新鮮なリアクションを取れるのは、とってもバラエティー向きだと思うの。
「メイカエレイ探偵団とは、この世界の謎を解明すべく結成された探偵団なのです」
「えっ⁉ そうだったっけ?」
世界の謎? そんなのと戦っていたんだっけか。知らなかったわー。
「と、コミックス第1巻に描いてありました」
マンガ情報かいっ!
本家はうちらじゃないの? マンガのほうに設定乗っ取られてどうするの……。
「はいはい、わかりました。その何とか探偵団さんたちが何か御用ですか? 私、世界の謎はもってないわよ」
そんな態度で来られると、とても言いづらい。
なぜこのかっこうで来てしまったのか……。
「最近ミャコちゃんの様子がおかしいと聞いて、その謎に迫るために調査しに来ました!」
おー、これはストレート!
こういうところはさすがメイメイですね。こういう言いづらい時にズバッといく。物おじしない性格で助かる。
「ミャコさんね……。最近本業のほうが忙しいみたいで……」
ハルルの表情が一気に暗くなる。
ふむ。詳しく話を聞こうじゃないの。