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第50話 メイメイの様子がおかしい

 無事ハロウィンナイトの生配信も終わり、ここからはシングル発売記念イベントに向けた準備に大忙しの予定だ。

 オンライン個別トーク会が11/3、4、5、10とかなりタイトなスケジュールで入っている。そして11/10はシングル発売日だ。さらにさらに、11/11はいよいよミニライブ&握手会の予定となっている。


 11月はとっても忙しいね!


 ボクとメイメイは、映画の撮影が割り込んだことで後ろ倒しになっていたソロユニット曲のMV撮影も残しているのだった。


 やばいね。最近学校行ってる時間がない……。

 忙しいことは良いことなんだけど、ちょっと淋しい気持ちもある。


「カエくんカエくん。今日はMVの撮影だっけ? 私たち何時から~?」


 メイメイがトランプを並べながら尋ねてくる。


「あと30分後。もう着替えないとメイクさん来るよ」


 そう、この後はソロユニット曲のMV撮影なのだ。ちなみに今はハルルと都が撮影中。ボクたちはメイクルームでヘアメイクさんを待ちつつ衣装に着替えるところだ。


「は~い。ねえ、カエく~ん。ちょっとこっちきて~。もっとこっちに近寄ってよ~。背中のファスナー下げてくれないカナ?」


 メイメイのほうをちらりと見ると、ボクに背を向け、髪をたくし上げてうなじをあらわにしていた。

 ふむ? メイメイは何を言っているんだ?


「その服ファスナーなんてついてないけどどうしたの?」


 ちなみにメイメイが着ているのはワンピース。ブラウンのチェック柄のワンピースにフリルのいっぱいついた白いブラウス。かわいさと大人っぽさが同居しているステキなコーデですね。

 でもまあ、その服だと、手伝えてもベルトを外してあげるくらい?


 しかしこれだけではない。ここ数日……メイメイの様子がどうもおかしい。違和感しかない言動や行動が目立つ。何か悩みごとでもあるのかな。


「え~。私つかれちゃったな~。カエくんに脱がせてほしいな♡」


 ボクがイスに座ってメールチェックしていると、甘えたような声を出しながら、肩を揉んでくる。

 なんだろ、この感じ……どこかで……?


「カエくん……ふぅ~♡」


 様子をうかがっていると、今度は耳に息を吹きかけてくる。

 なんか、ぜんぜんメイメイらしくないなあ。


「ねえ、どう? ドキッとした?」


「いや……どうしたの、ホントに」


 振り返って、メイメイの顔をまじまじと見る。

 目に隈はないし、良く眠れてはいそう。肌の艶も悪くないし、ニキビもないし、健康状態は良さそう。

 とくにストレスや病気の問題はなさそうだなあ。


 ボクは首をかしげながらも、とりあえずメールチェックに戻る。仕事が溜まってて忙しいのよ……。


「ん~、それじゃあ、これはどうだ! ペロッ」


 ひっ、今度はいきなり首筋を舐めてきた⁉

 もう一度振り返る。そこにはニコニコしているメイメイがいた……。


「え、ホントなに⁉ どしたのさ……なんかあったんなら話は聞くよ?」


 ボクが真剣な表情でそう言うと、メイメイはちょっと泣きそうな顔になりながら首を小さく振った。


「ししょー……。やっぱり私には難しいです~」


「師匠? 何? 誰?」


 なんだかきな臭いな……。

 やっぱりだれかの入れ知恵かな?


 と、メイメイが鏡の前にある小さな箱を開け始めた。

 中から出てきたのは端末。ん? メイメイの端末? なんでそんなところに入ってるんだろう。


「ししょーの言うとおりにやってみたんですけどぜんぜんダメでしたよ~」


『おっかしいな~? ぜんぜん反応なかったね~。わたしの言うとおりにやったら、カエデはビクンビクン♡ってなるはずなのにな~?』


 メイメイがスピーカーフォンで話している相手は……マキだ!

 なるほど……一連の違和感はマキの差し金か!


「服も脱がせてくれなかったし、ボディータッチにも、耳ふぅ~も、首筋舐めもぜんぜんでしたよ~」


『おっかしいな~? それだけやったら、わたしの時は、マキちゃんマキちゃん! ハアハアって感じで襲いかかってきたのにな~?』


「ちょっと、マキ? メイメイに何か良からぬことを教えるのはやめてくれない?」


 メイメイの端末を奪ってマキに話しかける。

 おお、ビデオ通話か。もこもこの部屋着を着ているマキがいた。すっぴんでぼさぼさの髪にメガネかけてるし、THEオフって感じだね。


『カエデ~ひさしぶり~♡』


 声のトーンをあげて、はちきれんばかりの笑顔で手を振ってくる。


「ひさしぶりじゃないよ。2日前会ったばかりでしょ」


『そうだっけ? 毎日顔を合わせられないなんてマキちゃん淋しいよ~。親友なんだから、いっそのこと一緒に住もう? わたしのマンション広いよ。うん、そうしよう! 決まりね。引っ越し屋の手配しておくから!』


「そんな急な……。って、そんなことよりさー、メイメイに何をさせてるのさ?」


『ん~。メイメイちゃんから相談受けててね~』


「ダメ~! マキちゃんそれは言っちゃダメです~!」


 メイメイが割り込んできて端末を奪い取る。

 相談? 悩みごとがあるのか! それはまずい! なんとかしないと!


「ボクには話せないことなの?……それって、マキなら解決できる?」


「うぅ……」


 メイメイは小さく唸ったまま目を泳がせていた。

 肯定とも否定ともとれない……。


「ちょっと貸して!」


 メイメイから再度端末を奪い取り、マキに話しかける。


「マキ! メイメイから何の相談を?」


『う~ん。わたしから言っちゃっていいのかなカナ……』


 マキも歯切れが悪い。


「メイメイ? ボクには言えないことなの? それならこの話は聞かなかったことにするけど……」


 マキに相談ってことは役者絡みかもしれない。それなら無理にボクが聞き出すより、マキを頼らせてもらうのが良いのかも。


「はずかしいです~」


 メイメイはモジモジしていた。


『メイメイちゃ~ん。話がややこしくなりそうだからわたしから言っちゃうぞ~?』


「うぅ……はずかしいです~」


 モジモジ。

 でも今度はダメとは言わなかった。


「マキ……おねがい」


『ん~えっとね。カエデが最近忙しくてつらそうにしてるから、カエデのことを喜ばせる方法はないか、って相談されたのよ』


「え、ボクを⁉」


 ボクのことでマキに相談を⁉


 メイメイのほうを見ると、顔を真っ赤にしてより一層モジモジしていた。

 なんていい子なのかしら。

 ボクの天使!


「って、そのアドバイスの結果が、服を脱がせたりボディータッチしたり?」


 何にもつながっているようには思えないんだけど?


『だって~、カエデってスキンシップ好きでしょ♡』


 え、うーん……うーん……。


『わたしが抱きつくといつもうれしそうにしてるもんね♡』


 うーん……うーん……。

 あながち否定もできないけど、この場では絶対肯定したくない内容!


「私のスキンシップはダメでしたか……」


 メイメイが消え入るような声でつぶやく。


「ああっ! メイメイがそんなつもりでいろいろしてくれてるなんて気づかなくてごめん! なんかいつもと違うから悩んでるのかなーって、そっちばっかり気になっちゃって!」


「カエくんは私のスキンシップだと喜んでくれないです……。なんで……」


「喜んでる喜んでる! メイメイ最高! メイメイのスキンシップなんていくら払っても良いって思うね!」


『カエデ~。それはちょっと引くわ~。自分の担当アイドルにお金渡してスキンシップさせてたら……スキャンダルモノだよ……』


 画面越しのマキが虫を見るような目でこっちを見ていた。


「ちがっ! 今のは言葉の綾で!」


『な~んてね♡ すぐ騙されちゃうんだから。カエデってかわいい♡』


「くっそー、またやられた……」


 マキの演技はリアルすぎてボクには見破れないよ……。


「マキちゃんとお話してるカエくん楽しそう……。私だとカエくんを喜ばせてあげられない……」


「だから違うってばー! メイメイが一生懸命がんばってる姿を見てるだけでボクはうれしいんだよ! いっつも喜ばせてもらってるって」


 これは本心。

 メイメイにそれ以上のことを要求するわけないじゃない。

 ボクのことなんて考えないで、自分の夢のこと、ファンの気持ちを大切にがんばっていこう!


「そうじゃなくて……」


『カエデ。そうじゃないよ~』


 2人から同時に否定される。

 そうじゃないならどういうことなんですか……。


「話はすべて聞かせてもらいました。ここはわたしにまかせてください」


 うわあ! レイ⁉ 

 レイが急に現れた!


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