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第46話 乱入者現る

「わたしがきた~! 朝日ヒマリ役の~十文字真紀ちゃんですよ~♡」


 カメラ横からひょっこりとフレームイン。どアップのカメラ目線で手を振りまくっている。


 ああ、マキ……。

 出たがってたもんね。

 ガマンしきれず乱入してきてしまったか……。まあ、半分くらい……9割くらい予想できてたけどね。


「マキさん⁉」


 ハルルは純粋に驚いているようだった。


「マキ。事務所に話通したの? 知らないよ、怒られても」


 ボクはため息をつく。


“誰このきれかわの子!モデル⁉”

“何?ヒマリ役の?”

“若手売り出し中の女優の十文字真紀だ!”

“シークレットゲストか?何でいるんだ⁉”

“事務所の許可取ってないっぽいのワロタwww”

“ただの乱入やんけw”

“これ生配信やぞ!”

“いいのかこれ。マジの事故www”


「いいのいいの♡ 固いこと言わないの~。映画の宣伝なんだから主役がいないと始まらないでしょ!」


「強引だなあ。どっかから怒られても、ボクは一緒に謝らないからね……」


 ホント知らないよ?

 役者業界の常識とかわからないし。


 一応洋子ちゃんのほうにヘルプの視線を送ってみる。

 が、ワイン片手に「やったれ!」みたいなガッツポーズで返してきた。もう酔っ払いかよ……。止めてはくれなさそう。ていうか、マキのマネージャー見たことないんだけど、しっかり手綱握っておいてくれないかな……。


「マキちゃ~ん。おひさしぶりです~」


「わ~い、メイメイちゃんだ~♡ おひさしぶりね~♡」


 そうこうしてる間に、2人でキャッキャしないで。なんか気が合いそうなのがちょっと怖い。

 それで、どうするよ、これ。収拾つくの?


「え~っと、みなさんご存じかもしれませんが紹介します! サプライズゲスト! 映画『朝日は西から昇る』で朝日ヒマリ役を演じていらっしゃいます、大人気女優の十文字真紀さんです! はい拍手~」


 ハルルが一応正式な形でマキの紹介をしてくれた。

 突然のことにポカーンとしながらも、サクにゃん、ウーミーがパラパラと拍手をしてくれる。ごめんね、急なわちゃわちゃに巻き込んでしまって。2人は完全にはじめましての人だよね。


 それでハルル、ああ、このままいくのね? いけるのね?

 ハルルがいけるって思うならボクもがんばるけど。


「どうもどうも~! チィタマとナズナの先輩メイド長のマキちゃんだよ~♡」


 カメラに向かって投げキッス。

 アイサツがめっちゃ軽い……。いつものちゃんとしたアイサツはどうしたのさ? マキ、もしかして酔ってるの?


“うぉ、めっちゃかわいい”

“マキちゃん!覚えた!”

“女優のオーラとビジュアルぱねえ”

“先輩メイド長ってなんだ?”

“なんか3人とも仲良さげだもんな”

“マキちゃんのファンになりました”


「キャ~! 栞先生だあ♡ 会いたかったです~! わたし、ヒマリをちゃんと演じられましたか~?」


 マキはハイテンションのまま、シオの手を握りながら尋ねる。


 違うな、これは。酔ってるんじゃない。

 今、マキはアイドルの十文字真紀を演じているんだ。

 テンションが高く、人懐っこいキャラクター。媚び媚びなまでに甘い口調。きっとマキの中でのアイドル像を具現化しているんだ。

 違う自分を演じてる。役者って怖い……。


「お~お~。想像以上やで! うちはそこまで絵がうまくないから、すでに原作マンガを超えたビジュアルで元気に飛び跳ねてるヒマリを見れて、感激もんやったわ~」


 シオが手を握り返しながら一緒に飛び跳ねている。

 絵がうまくないってそんな……。でもマキのビジュアルは原作を忠実に再現……いやたしかに超えてる部分はあったかも。

 平面から立体へ。さらに洋子ちゃんの演出が加わって、リアルな質感、匂いまでも感じさせる演技。役者ってなんであんなことができるんだろう……。


“原作者お墨付き!”

“これは期待できる!”

“映画楽しみだな”

“マンガ原作の映画は失敗しやすいからな”

“マキちゃんかわいいな~”

“ナズナとチィタマはどうなんですかね?”


「お、おう。2人ともがんばってたで~。初めての役作り、難しかったと思うんやけど、原作者から見て才能あるわ~。真紀さんに教えてもらいながらどんどん上達していく姿は涙なしでは語れんで~」


 シオがコメントを拾って反応していく。

 まあね、いきなりの役者業はマジでめっちゃ難しかったですよ……。ボクにはそういう才能はないなと思いました。でもハルルは行けます! もっと使ってください! 業界の偉い人この配信見てー!


「ホントよね~♡ ハルちゃんは初々しくて、ナチュラルで、ホントかわいいんだから♡」


「ね~」と今度はハルルにしなだれかかる。


「マキさん、褒めすぎですよ~」


 ハルルの表情もまんざらでもないと言ったところか。まあクランクアップしたし、もっと自分を褒めてあげてもいいと思うよ。


「それに、チィタマは……ね♡」


「ねってなによ! マキー! ボクのこともちょっとは褒めなさいよ!」


“チィタマほしがるニャンwww”

“どこ行ってもやっぱりこの扱いw”

“実家に帰ってきたようでおちつくわ~w”

“楓はいじってなんぼw”

“いいよいいよ~マキちゃんいいよ~”

“もはや配信レギュラー入りだなw”


 なんだこの扱い……。

 もしかして、ボクっていじられキャラで定着してるの⁉


「その衣装……エッチぃ♡」


「あ、こら! もう衣装のことに触れるんじゃない! まったく誰だよ、こんなデザインにしたやつ! 原作とぜんぜん違うじゃん!」


 朝西はそういう作品じゃないんだよ!

 何を安易にエロで客集めようとしてんのさ! シオセンセの社会に対する風刺がこめられていて、深いテーマがあってだね。これだから素人は困るんだよなー!


「あ~、その希望を出したんはうちやな。連載中に、チィタマはもっとセクシーにしたかったな~って思うようになってもうてん。映画で夢が実現しました! おおきに!」


 シオが一筋の涙を流しながら最敬礼していた。


 おいーマジか! 戦犯は原作者ー!

 ぜんぜんうれしくない夢の叶え方をするんじゃない!


「ね~ね~。カエデを隠し撮りした写真って、そろそろSNSにアップしてもいいの? 生配信したから情報解禁?」


 マキがポケットからスマホを取り出していじりだす。


「良いわけないでしょ! 隠し撮りすなっ!」


 あと携帯いじるな! 生配信中やぞ!


「え~。メイド服のもあるよ♡」


“メイド服?”

“メイド服ってなんだ”

“メイド服kwsk”

“メイド服だと”

“さっきの先輩メイド長の話か”


 みんなメイドに食いつきすぎぃ。

 静かに置物みたいになっちゃってるサクにゃんを、元祖ネコミミメイドを愛でてあげて!


「せや。せっかくやし。3人でエチュードするんはどうや?」


 シオがまた何か無茶なことを言いだしたよ……。

 エチュード好きだね……。


「ハロウィンパーティー会場に招かれたヒマリ、チィタマ、ナズナの3人。同じく会場にいた子たちと会話をしていくっちゅー流れで」


「エチュードやりた~い♡」


「私たちは映画のキャラクターを演じるわけね? サクラとウミは本人のまま?」


「せやな。巻き込んで悪いんやけど、2人もいけるか?」


 シオがサクにゃんとウーミーの様子を確認する。


「えっと、はい。できることはがんばります!」


「演技は経験ありませんが、精一杯務めさせていただきますわ!」


 2人ともやる気はあるようだ。

 しっかし、まーた思い付きで本来配信で予定してた内容を全部無視してくるなあ。

 まあ、何か考えがあるんだろうし、もうシオの言う通りにするけどね……。


「ちなみにや。ハロウィンやからトリックオアトリートやで。朝西組の3人はお菓子をねだる側。会場組の桜さん、海さん、そしてうちの3人はお菓子を渡す側や。存分にいたずらしあおうな。負けたチームが罰ゲームやで」


 なにそのハロウィンパーティー。

 聞いたことないんですけど?

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