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第45話 原作者・キャストで映画の話をしよう

 いまだにメイメイに抱きついてヨシヨシされているハルル。

 それをやさしい目で見つめつつ、サクにゃんが立ち上がる。

 

「お楽しみのところ大変恐縮ですが、春さんの衣装も紹介しておきましょう!」


 お楽しみって! 言い方ー!


「え、あ、はい。これは『朝日は西から昇る』というマンガ原作の映画に出てくる『夕焼ナズナ』という子の衣装です。私、なんと、映画で夕焼ナズナちゃんを演じることになりました!」


 サクにゃんたちが大きく拍手する。

 スタジオの外を見ると、洋子ちゃんたちも盛り上がってくれていた。


 でもハルル、大事な発表だからちゃんと立ち上がってしようね?

 メイメイに抱きついたままはどうかと思うよ!


“うぉぉぉぉぉ”

“映画デビューおめでとう!”

“ハルル最高”

“ハリウッド女優爆誕!”

“助演女優賞確定!”

“原作読んでるぞー”

“ハルちゃんステキ~”

“セーラー服似合う”


 コメント欄も今日1番の盛り上がり。

 うれしいね。ハルル、この映画をきっかけに大ブレイクしたいね!


「ありがとうございます。ありがとうございます。まだ出せる情報は少ないんですけど、映画の公式サイトを見ていただくと、少しずつ情報解禁されていくと思います。撮影風景やちょっとしたおもしろ動画なども公開予定なのでお楽しみに~!」


「私もちょっとだけ出てますよ~。どこに出てるかは秘密です~。みなさん映画館で探してみてくださいね」


 メイメイがハルルを後ろから抱きしめるようにして肩にあごを乗せる。


“見る見る!”

“100回見るぞ”

“メイメイもデビューおめでとう!”

“オフショット楽しみ”

“楓は?”

“楓は今日でないのか?”

“チィタマw”

“チィタマカエデw”

“女優デビューマジ草www”

“はよ出てこいw”


 うわー、みんなのコメント、草生えまくってるじゃん。マジで出にくいなあ。 

 ううーん。


「カエデちゃん、みんな待ってるわよ。さあ、こっちへきて」


「カエくん! さて、みなさんお待ちかね! 朝西で猫のチィタマを熱演している七瀬楓さんです~。どうぞこちらへ~」


 メイメイ……呼び込み上手になったね。成長してるのはうれしい、けどさあ。

 あーもう、そんなに巻きの合図出さなくていいから! わかりました、いきますよ……。


「はい、どうもー。チィタマ役を演じてます、七瀬楓です。こんばんはー」


 フレームインして、重い足取りでハルルとメイメイのところへ向かう。


「キャー! チィタマ~! セクシー!」


 ハルルの掛け声に合わせてコメント欄が悪ノリを始める。


“キャーw”

“チィタマセクシーwww”

“ビキニ、だと!”

“楓もやればできるじゃん!”

“スタイルは、うん、まあ、いいんだよなw”

”セクシー!”

“虎猫!”

“けっこういけるやん!”


「いや、うん、まあ、なんかボクのことはあんまり見ないで……」


 そっとしておいて。


「チィタマどうしたの? いつもみたいにしゃべって?」


 ハルルが意地悪い目でこちらを見てくる。

 くぅ。まだ辱めを……。


「ナズナうるさいニャン!」


“ニャン!”

“ニャンだと……”

“ニャン⁉”

“ニャンニャン”

“萌えキャラニャン!”

“マジどうしたwwwニャンwwwww”

“あ、やべ。新しい扉が開きそうニャン……”

“楓も……大人になったのね”

“2人目のネコキャラ爆誕”

“どうするサクにゃん⁉”


 あーもうやだやだ。

 こうなるから出たくなかったんだよね……。


「もうボクのことはいいから、映画の話しようよ……しようニャン」


「言い直せてえらい! チィタマかわいいぞ!」


「うるさいニャン……」


「でもそうね。少し映画の話をしましょう。話していいところだけね。その前にもう1人、この方をお呼びしないとね。『朝日は西から昇る』原作マンガの作者、三井栞先生です! どうぞ~!」


 ハルルがテンションを上げて、今日一番の大声でシオを呼び込む。

 スタジオ内外で大きな拍手と指笛が鳴り響く。


「やあやあ、みんな。おおきにありがとう。うちが大ベストセラーマンガ家の三井栞先生やで!」


 レッドカーペットを歩くかのように、周りに手を振りながらシオが入ってくる。

 シオ、めちゃくちゃテンション高く入ってきたな。


“栞先生!”

“ホントに出たw”

“なんでネコミミメイド?”

“ネコミミメイドwww”

“スタイルよすぎて草w”

“ああ、サクにゃんのマネージャーだからかw”

“そこ2人でそろえてるのね”

“なんかもう、このグループスゲーなw”


「栞先生、わざわざお越しいただきありがとうございます。いや~これで関係者集まりましたね~」


「シオちゃん、シオちゃん。マンガをヒットさせるコツを教えてくださいよ~」


 メイメイが急に予定外の質問をぶつけ出す。

 ちょっと、進行にない勝手なことはやめて!


「せやな~。まずは自分の描きたいものを描く」


「うんうん」


「描いたものを好きと言ってくれる人が増えたらうれしいやんな?」


「そうですね~」


「つまりそういうこっちゃ」


 どういうこっちゃ?


「みんな好きなものを好きなだけ描いたらええねん。売れるか売れへんかは運次第や」


「ためになります~」


 メイメイが嬉しそうにお辞儀をする。

 どうなんだろ、中身があんまりないような……。メイメイが納得してるからいいのかな。


「売れるために描きたくないもんを描くんはやめとき。それはあとで後悔する時が来る……」


「シオセンセもそんな経験が?」


 見守るつもりが、つい口を挟んでしまった。


「んん、ああ。若気の至りっちゅーやっちゃな」


 あんたまだ若いやんけ……。


“深イイ”

“売れてる人は説得力あるな”

“俺も頑張ろう”

“好きなもんを描く!”

“シオリ先生一生ついていきます!”

“朝西読もう”

“ちょっとググったら、マンガ以外もいろいろ書いてるのな”

“マジで、興味出てきたわw”


 シオセンセのファンが増えてしまう!

 このままだと禁断のエロ同人活動がバレてしまうんじゃ⁉


「栞先生、良いお話ありがとうございました! えっと~、今回の朝西の映画についてもお聞きしたいんですけど~」


「なんや春さん。かたいな。緊張しとるん?」


 シオがハルルをからかうように笑う。


「なによ。ちょっと原作者の先生を敬ってるインタビューっぽくしてみただけじゃないの」


「すまんすまん。なんか真面目ぶってる春さんがおもろくてな。ついや!」


「もういいわ。早く映画のこと教えてちょうだい」


「ハルル、それは雑ー」


「まあええやんか。うちらの仲だしな。朝西のストーリーを軽く話すとな~、朝日ヒマリっちゅー女の子が主人公なんやけど――」


 シオがまじめに語りだしたその時だった。


「わたしが~! 朝日ヒマリ役の~! 十文字真紀ちゃんですよ~♡」


 スタジオに不審者が乱入してきてしまった。

 やれやれ、やっぱりか……。


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