第44話 プチ公開生配信開始~ハルルのテンションがおかしい
「ハッピーハロウィン! 始まりました~≪The Beginning of Summer≫です!」
ハルルの掛け声とともに、ハロウィンナイト特別プチ公開生配信が始まった。
まずいつもの席順。
前列にハルルとサクにゃん。後列にナギチ、ウーミー、メイメイだ。
≪初夏≫メンバー5人によるトークが始まる。
“わーいハッピーハロウィン!”
“待ってました!”
“コスプレだー”
“みんなかわいい”
“ウーミーしか勝たん”
“ナギチ~元気~?”
“いいですね~”
“ずっと待ってた!”
“ブロマイド売ってください”
“みんながんばって~”
同接もだいぶ増えてきたね。
地道なSNSでの活動、オンライン個別トーク会の活動が実を結びつつあるのかな。もう少しでソロユニット曲のMVお披露目もあるし。
まあ、まだボクとメイメイ、ハルルと都は撮影してないけどね! スケジュールカツカツですね。
「みんなかわいい衣装ですね~。1人ずつ紹介していきましょうか。まずはサクラ」
「はい! サクラはいつものネコミミだけじゃなくて、パワーアップしてネコミミメイドになってみましたよ~。みなさんどうですか~? いたずらしちゃうにゃん」
ニャンニャンとかわいらしくポーズを取ってスクショタイム。
かわいいなあ。お持ち帰りしたいニャン。
“サクにゃんかわいいよー”
“ちーちゃーん!”
“かわいすぎてつらい”
“君がナンバーワンだ”
“愛してる~!”
「サクラはいつもかわいいわね。うんうん。癒されるわ~。お持ち帰りしてもいいかしら?」
「……春さんどうしたんですか? 今日はちょっとテンションがおかしいですよ」
サクにゃんが苦笑する。
「あ、うん……ちょっとね、映画の撮影がハードで、うん……」
伏し目がちに暗い影を落とす。
「映画! サクラその話聞きたいです!」
「えっと、もうちょっとあとのコーナーで話すから、少し待ってね」
“俺も聞きたーい”
“そういえばそれ、映画の衣装だ”
“ハルル売れっ子か”
“公式サイト見たよー”
“期待あげ~”
“映画の公開いつですか?”
“楓がチィタマ役なのジワるw”
“マネージャー芸人w”
“そういやメイメイも出てるんだっけ?”
“役名ないけどな”
“朝西の原作の三井栞、マネの栞ってマ?”
“さすがに疑ったけど、マママwww”
“なんで初夏のマネージャーやってんのさw”
“マンガ家、役者、ロボット開発って、マジこのグループなんなんwww”
ジワられても困るんですけど……理由? それはボクだって知りたいよ……。
どうなってるんですか⁉
誰かえらい人教えてください!
「次はウミ。あら今日もセクシー!」
「春さん……その振りは……話しづらいですわ。……ええっと、わたくしは吸血鬼ですのよ。ほら、ちゃんと牙もつけて、みなさまどうですか?」
ウーミーが唇の端を持ち上げているところをカメラがアップにする。
ちょっと濃い目の口紅に真っ白な歯が映える。
これは違う意味でスクショタイム!
“ウーーーーミーーーーーー”
“あいしてるぅぅぅぅ”
“写真売ってくれー!”
“トーク会はよ!”
“結婚して~”
“君が好きだ!”
「ウミのファンは情熱的ね。私とも結婚してくれる?」
「ちょっと、ちょっと春さん! サクラのみっちゃんですよ⁉」
サクにゃんが慌ててカットイン。
テンションどうしたハルル。
「ダメか~。振られちゃった。淋しい……。えーんえーん」
超ウソ泣き。
見よっ! 準主役で映画を撮影してきた女優の演技がこれだ!
“なんだ?三角関係か?”
“NTR展開!”
“酔っ払いが絡んでるようにしか見えんがw”
“ハルルマジでお疲れなのか”
“最後まで進行できるのか、これw”
「ナギサ! あなたに賭けるわ! 超絶おもしろい紹介、かましてちょうだい!」
「ハルにゃん……その振りはひどいわ。私、かわいいだけでおもしろいこと1つも言えないもん。もん」
ナギチが立ち上がって抗議する。
ハルルの振りはひどいけど、ナギチもちょっと黙りなさい。いや、ホントに黙っちゃダメだけど。
「ナギサにかわいいキャラ持っていかれたら、私はどうしたらいいのよ~」
「え⁉ ハルにゃんはかわいいキャラじゃなくて、わりと最初からまじめ系ちょい抜け自爆路線だよ?」
こら、致命傷を与えるのはやめてあげなさい。
そこがハルルのかわいいところでしょ!
「ナギサ、ひどいわ。私だってわかってるのよ! みんながいるからリーダーやれてる。みんながいるからがんばれてるってことくらい……」
“おーおー大丈夫か?”
“悩んでるんだな”
“ハルちゃんかわいいよー”
“俺たちはハルルの味方だ!”
“ハルル!元気出して!”
“初夏のリーダーハルル!”
コメント欄優しいね。ハルルがわりと深刻に悩んでいるのを察してフォローしてくれてる。
どうしようかな。予定と違うけど、もう出ていってフォローしたほうがいいかな。
うーん。またでしゃばるとなあ。
「ハルちゃんはすごいんです~。映画準主役ですからね~。ナズナちゃんかわいいですよ~」
メイメイが立ち上がると、後ろからハルルの頭を撫で始めた。
おお、フォローありがとう。このまま様子を見よう。
「サツキ~! 心の友~! 魔女っ娘衣装もかわいいわよ!」
ハルルが振り返り、メイメイに抱きつく。
「ハルちゃんヨシヨシ~」
ああ! グループ内に百合営業カップルは1組までですよ!
また百合グループって言われちゃうでしょ!
“きまし?”
“た?”
“菩薩のようなメイメイ”
“いやなんか百合とは違う……”
“メイメイの母性はすべてを包み込む”
“ママ!”
“ママあああああ!”
あれ? なんかおかしな方向に。
メイメイって、ママキャラ?
「ちょっと2人とも~! 私の衣装の紹介は⁉ セクシーナースだよ♡」
ナギチ、空気読んで!