第25話 限界チャレンジ3~回答編
「書き終わりましたかー? では目隠しを外してからフリップをカメラの前に向けてください! はりきってどうぞ!」
ボクは司会者のように、オーバーリアクションでみんなを仕切る。
あれ、当たり前のようにカメラに写っているけどこれでいいんだっけか……。始まっちゃった生配信中に気にしても仕方ないか。
みんなが動物のアイマスクをとってから、フリップを立て始める。
正解者は、っと。なるほどなるほど。
「はい、出そろいましたね。みなさんかき氷はおいしかったですかー?」
答えを見ていく前に、定番の質問をしてみる。
「おいしかったです~。もう1杯!」
「とても……かき氷でした」
「冷たかったわ」
「カエちゃんも食べてみる?」
ナギチ、残り物を「あーん」してくるんじゃないの!
「ウーミーは初かき氷だったんだね。かき氷食べてみてどうだった?」
「そうですわね。体を冷やす食べ物は健康によろしくないのであまり食べないのですけれど、かき氷はとてもおいしかったですわ~」
満足そうな表情を浮かべる。
もともとスイーツ好きだし、幅が広がった感じかな。
「それは良かったね。たまにならそこまで健康にも悪くないんじゃないかな? 冷たいスイーツは他にもいろいろあるからまたチャレンジしようね」
ボクがそう言うと、ウーミーは嬉しそうに微笑んだ。
いつも大人っぽい先輩なのに、こうして笑うとかわいいなあ。
“意識高い”
“なるほど、健康に気を使って”
“えらい”
“健康体”
“ウーミー!”
“俺も健康的に生きる!だから結婚しよう”
コメント欄でのウーミーの人気異常だなあ。
『#海桜』のこともあるし、ファンが増えてきてる、のかな?
「さてさて、それでは改めて正解発表に移ろうかと思うんだけど――」
あらためて全員の顔を見渡してみる。
ふむふむ。余裕そうな人、やっちまったーという顔をしている人、だいたい2グループに分かれていますね。
「まあ、器の残りを見たらだいたい正解はわかってしまったかもしれないけど、一応全員の答えを見てから正解発表しようかなー」
まずはめっちゃ嫌そうにしているハルルからにしよう。
「はい、それではハルル。答えは『イチゴ』ですね。どのあたりが決め手になりましたか?」
「えっと……はい。冷たくておいしかったので……イチゴかなと……」
明らかにハルルのテンションが低い。
まあ、青いシロップをみて、イチゴではないことはさすがにわかってるよね。
「なるほどなるほど。どうでしょうかねー。正解発表をお楽しみにしていてくださいね」
「ねえ、楓……この1人ずつ確認するのって、ぶっちゃけ意味ある?」
ハルルが低い声でつぶやく。
「というと?」
「だってもう正解って……」
「はーい、はい。生配信中ですよー。ハルちゃん顔が怖いぞー。アイドルはスマイルスマイル♪」
「はい……」
ぜんぜん笑顔じゃないハルルが下を向いてしまう。
あららハルちゃんったら、負けず嫌いなんだからもう。
“ハルル怒られ案件www”
“配信中やぞw”
”ガチへこみかわいいwwwww”
“くやしいのうwww”
“楓やさしくしたれやw”
ハルルは落ち込んだけど、コメント欄が楽しそうだからまあいっか。あとでフォローしておけば。
次行こう。
「はい、続いてサクにゃん。お答えは『レモン』ですね」
「はい! 初恋の味はレモンって決めてますから!」
サクにゃんが勢いよく立ち上がって宣言する。
「そ、そうですか。今回はかき氷の味を答えてほしかったんですよねー。次のチャレンジが初恋の味だといいですね」
“2人とも何言ってんだw”
“マジ何なのw”
“サクラ今日も壊れる”
“結局このグループ全員ボケなんだよなあw”
”回しがいて初めて成立するw”
ごめん、なんかうまく活かしてあげられなくて!
ぶっちゃけ、サクにゃんは絡み方がわからない時がけっこうある!
頭が良すぎて常人には理解できない何かのロジックで会話してるんだと思ってる!
「それでは後列は……自信ありそうなメイメイからいきますか。答えは『ブルーハワイ』ですね」
「もちろんブルーハワイです~。南国の香りですぐにわかりました~」
メイメイがフリップを高々と掲げてうれしそうに語る。
「ほほう、南国の香りですかー。それはステキですね。でも『ブルーヘロイ』って書いてありますけどね」
目隠しして書いたせいか、若干おかしな文字の状態になっていた。
“ヘロイ”
“ブルーはちゃんと書けてえらい”
“ハがくっついたのかw”
“フリッププレゼントしてくれないかな”
“ブノレーヘロイ”
“スイーツ好きさすが”
ヘロイはご愛敬だけど、普通に香りだけでわかったとしたらそれはまじめにすごいな。見ながら嗅いでも、ボクには香料の違いがわからない。
「それでは続いて、ウーミー。答えは、おー同じく『ブルーハワイ』ですね」
「ええ、食べたことのない味でしたので、消去法でこうなりましたわ」
「南国の味でしたか?」
「これが南国の味……なんですの?」
ウーミーが若干不安そうな目でメイメイを見る。
「そうです~。ほら、舌を見てくださいよ。真っ青に染まってオーシャンビュー!」
何がオーシャンビューなのかぜんぜんわからないけど、舌が青くてかわいいからヨシ!
“初かき氷で正解はすごいな”
“ウーミー有能”
”ウーミーしか勝たん”
“結婚しよう”
“オーシャンビュー!”
“そもそもブルーハワイは南国の味なのか?”
“知らんw”
うーん。メイメイが舌を出すとかわいさしかないのに、ウーミーが舌を出すとエロさしかないのはなぜなんだ。
ここら辺に大切な秘密が隠されているような気がする……。気がする……。
「はい、最後はナギチ。答えは『ブルーハワイ』ですね。後ろの3人は全員ブルーハワイだ」
「パティシエなぎさが味の問題で間違ったりしたら、看板を下ろさないといけないからねっ!」
ナギチがウィンクしてくる。
それはボクに向かってじゃなくて、カメラに向かってやってくれませんかね?
「それは責任重大ですねー。自信はありますか?」
「もちろん! ねえ、カエちゃん。私の舌の色、何色になってるか見てくれないかな? ん~♡」
顔近いっ。
目をつぶって舌を出して迫ってくるんじゃない!
「はいはい、ナギサ、お座りっ!」
ハルルが立ち上がり、ナギチの顔を正面から鷲掴みすると、そのまま問答無用でイスに押しつけて座らせた。
“ハルルつえ~w”
”必殺のアイアンクロ―www”
“ナギチダウーン!”
“キャラ変したナギチ完全にボケキャラw”
“ここまでツッコミ0、アイアンクロ―1”
“これどうすんのw”
ハルルさんや、早いところ機嫌を直してくれないかな……。ホントは司会進行はあなたの役目なんですよ?