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第21話 いきなり修羅場?

「とにかく! 今日は緊急事態なので! シオとウタは別の仕事で来れないし、都は不治の病で倒れ、ボクとレイしかスタッフはいないのです!」


「なんと~それは大変です~。花ちゃん責任重大ですね~」


 メイメイが積極的に花さんにプレッシャーをかけていく。

 いや、忙しそうなところを無理やり捕まえてカメラマンお願いしてるんだから、ちゃんと感謝の気持ちをね?


「これくらいのサポートは任せなさい。それよりもあなたたちは配信に集中して」


 花さんが小さくため息をつく。

 

 そう、配信に集中して!


「くれぐれも配信中に変な空気出さないでよね。せっかく仲良いグループってイメージがファンの間で定着し出してるんだから……」


「誰のせいよ……」


「コーチ……」


「わたくしは別に……いつも通りですわ!」


「私はカエちゃんを信じてるから大丈夫!」


 みんなが口々に不満やら抗議やら強がりやらを口にする中、ナギチだけが謎のキラキラ勝利宣言をぶちかましてくる。


「ナギチはちょっと黙ってて! ホントにそういうんじゃないからね?」


 まいったなあ。

 ナギチの性格を完全に読み違えてたよ。

 もっと大人な感じだと思ってたわ。

 こんなにナチュラルにしあわせオーラ全開でマウント取ってくるタイプだとは……。


「ま、まあ? カエデちゃんは誰にでも優しいだけだし?」


「そそそそうですね! コーチはみんなに優しいだけなので勘違いは良くないですよね?」


「そうですわね。お優しいですわ。わたくしは……それはそれは情熱的に抱きしめられましたけれど」


 ウーミーの頬が赤く染まる。

 

 いや、そこで赤くなるのはおかしいでしょ! ぜんぜんそういうのじゃなかったじゃん! 泣いてたから落ち着かせるためにね⁉


「抱きっ⁉ わ、私は情熱的にデートに誘われたし? あーんもしたし?」


「さ、サクラは情熱的に同じ夢を叶えるためのパートナーですし?」


「なんかへんなところで張り合うんじゃない!」


 まったく、何のマウントを取りたいんだ。


「ボクは≪初夏≫のマネージャーだから、みんなのために何でもするし、みんなが必要とするものは何でも用意したいと思ってる。今必要なのは、このあとの生配信でどうファンを増やすかを考えること、だよね?」


 必要以上に声を張り上げて、みんなの意識を配信のほうへ向ける。


 はあはあはあ。

 疲れた。


「でも~、カエくんは私の専属マネージャーです~。私のマネージャーさんですからね~」


 メイメイがボソッとつぶやいた。

 

 そうだけど、ホントにその通りなんだけどさ……今言わなくても良くない⁉


(お困りのようですね。あとはわたしに任せてください)


 レイ! 助けてよー。みんな急におかしくなっちゃったんだ!


(だからほどほどにと言ったんですよぅ。これはかえでくんが自分で蒔いた種です)


 そんなこと言われても……ボクはみんなのことを真剣に考えて……。


(だからこうなっているんですよぅ。適当なお世辞でお茶を濁さず、本気でぶつかって本気で相手のために何かしようと動いたら、相手も本気になりますよぅ)


 ボクはどうしたら良かったの……。


(かえでくんはそのままでいいです。自分の信じた道をまっすぐに突き進んでください。それをフォローするのがわたしの役目です)


 レイ……。

 ちょっと泣きそう。


「みなさん、話は聞かせていただきました」


「レイ! おかえりなさい!」


 さあ、事態の収拾をお願いしたく!


「かえでくんはマネージャーですから、みなさんのケアをするのが仕事なんです。もちろん、さつきさんの専属ということになっていますから、メインでさつきさんのケアをする必要がありますね」


「そうです~。カエくんは私のマネージャーさんなので、もっと私のお世話をしてください~」


 するよ、する!

 いっぱいお世話するから、いっぱい売れよう!


「かえでくんは不器用ですから、手は抜けないし、うそはつけないんです。みなさんに好意をもって接しているのも事実です」


「好意⁉」


「好意ですか⁉」


「好意ですの⁉」


 ひそひそしないで。

 そりゃ好意はありますよ。みんなのこと大事ですからね?


「みなさんはその好意を返す相手、間違えています」


 レイが小さく深呼吸する。


「かえでくんから受けた好意を返す相手は、ファンの方たちです」


 その場にいた全員がハッと顔を上げた。

 そうだ、ボクたちはファンに向けて、これからファンになってくれる人すべてに向けて活動をしている。


「私たちが好意を返す相手……」


「大切なことをおろそかにするところでした」


「とても大切なことですわね」


「私、少し浮かれていたみたい……」


「元気出してください~。今日はみんなで最高の生配信にしましょうね~」


 ニコニコしながらメイメイがみんなの肩を叩いて回る。


 いや、そこメイメイがまとめるんかいっ!


「もう少しで生配信の時間になってしまいます。みなさん、メイクの直しなど最終確認を行ってください。かえでくんは『限界チャレンジボックス』の確認をお願いします」


「OK。ちゃんとお題が書かれた紙は入っているかな、っと」


 ボックスの中を確認しながら、レイのほうをちらりと見る。


 ホント助かったよ。

 レイの言葉でみんなの顔つきが変わった。今日の配信、ちゃんとがんばれるね。


(わたしは当たり前のことを言っただけですよぅ。かえでくんが真摯にみなさんと向き合ってきた結果ですから、何の問題もありませんよぅ)


 そう言ってくれるとホントに助かるよ。


「さあ、みなさん準備は良いですか? かえでくんのお世話はわたしの役目なので、みなさんは全力でファンの方たちに好意をふりまいてください」


 一瞬にして場の空気が悪くなる。

 今日一番の……最悪の状態と言ってもいいだろう。


 レイ……なぜ今それを言った……。

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