表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第2話「まずいパンとやる気ゼロの村」

地上・アルトリア、辺境の村


朝。鳥も鳴かなければ、村人の掛け声もない。静かすぎる田舎の空気の中、フランデルは地面にうつ伏せで埋まっていた。


「……痛い……土、かたい……てか空気うす……」


昨日落ちてきた衝撃の余韻を引きずりながら、なんとか上体を起こす。周囲には小さな畑と、くすんだ屋根の家々。


「これが……私のやらかしで止まっちゃった世界……?」


ゆっくりと立ち上がる。そこへ、昨日出会った少年――ロルクがパンのカゴを抱えて近づいてきた。


「おはようございます。……あの、大丈夫でしたか? 落ちてきたわりに、普通に立ってるので……」


「神だからね。……たぶん。」


ロルクは「?」という顔をしつつ、差し出してきた。


「よかったら、朝ごはん……パンです」


フランデルは受け取ったパンを見た。


丸い。硬い。やけにずっしりしてる。


「……これ、武器?」


「え? パンですよ?」


とりあえずかじってみる。


バキィ。


「っ……歯ァ折れるかと思った……! なにこれ!? パンの皮か!? 中身は!?」


「全部それです」


「全部それ……」


フランデルはパンをまじまじと見つめた。


「いや、待て……これ、まさか……この世界の標準……?」


ロルクは少し申し訳なさそうにうなずく。


「みんなこういうパン食べてます。昔から変わってません」


「変わってない……つまり、誰も“もっと美味しくしよう”って考えたことないのか……」


その瞬間、フランデルの中で何かがチリッと火花を散らす。


「ふーん……じゃあ、変えてみようか」


ロルクが目を丸くする。


「えっ?」


「いや、パンがまずいとかそういう話じゃなくてさ。いや、まずいけど。問題は、“それが当たり前”になってることだよ」


村を見渡す。誰もが無表情で、同じ動作を繰り返している。


「……うわ、マジで止まってる。文化も感情も、全部省エネモード……」


彼女は拳を握った。


「よし、まずはパンだ。世界が止まってんなら、パンで殴って動かすしかないでしょ。……名付けて! パン革命ッ!!」


ロルクはますます理解が追いつかない顔になっていた。


「……パン、ですか?」


「パンだよ。パンがすべてを変える。……たぶん」


その日、フランデルは村のパン屋に向かった。


だがそこには、思った以上に“強敵”が待っていたのだった――。


次回予告:「パン革命、起こしてみた。」


頑固なパン職人。硬すぎる常識。そして、ふわふわの奇跡――。世界を動かすのは、バターでも神力でもなく、“ちょっとの面白がる力”だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ