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第18話「天界からの刺客!?駄神オルグ登場!」

──天界。


「オルグ、そろそろ行ってもらえるか?」


「……え? どこに?」


「下界。転生任務だ。フランデルの進捗チェックに行ってくれ」


「……やだ」


「却下だ。荷物まとめとけ」



村の空に、ふわりと小さな光が落ちてきた。 それは、ゆっくりと降下してくる茶色い布団だった。


中身は、


「……寝てたのに……どこだここ……」


──駄神・オルグ。


長髪ボサボサ、肩は落ちて、目の下には深いクマ。 気配もテンションも地面スレスレ。


フランデルは、その姿を見てぽつり。 「……寝落ち系か……」



「オルグ。神らしいけど、働かないし、たぶんよろしく」


自己紹介ですら立ったまま言えず、布団にくるまりながらの挨拶。


ロルクは警戒しながら囁く。 「本当に……神、なんですか?」


「たぶん? 神の名簿にまだ残ってる……かも」


「“思う”って……」



オルグは特に何をするでもなく、村の縁側に横たわり始めた。


「仕事? 神が汗かいてたら、逆に信用なくなるでしょ」 「信仰? いや〜……俺、あがめられるのとか苦手でさ」


フランデルは苦笑しつつ、パンを焼く手を止めない。 「で? あんたが来たってことは、天界は何か進展を気にしてるってことだよね?」


「うん……まあ……チェックしに来た、っていう建前はあるけど……正直、地上って暖かいし……パンうまいし……もう帰りたくない」


「ダメです」


「えっ」



村人たちは最初、警戒していたが── 「逆にこの神様、なんか安心する……」 「だって、動かないし、怒らないし、寝てるし」


一周回って、**“空気のような神”**として受け入れられていった。


そんな中、ロルクがぽつりと呟く。 「……でも、この人……何かを変える気は……あるのかな……」


フランデルはパンを取り出しながら、にやりと笑った。 「さあね。でも、来たってことは……きっと、それなりの意味がある」


そのときだった。 オルグが、布団の中でわずかに目を開け、寝返りを打つ。


「……うーん……まあ、しょうがないか……」


ごそりと指をわずかに上げたかと思うと──


ぱちん、と小さな音。


その瞬間、空気が一変した。 風が静まり、光が村全体をやわらかく包む。


空にひとすじ、虹がかかった。けれど、それは水滴の屈折ではない。 色のないはずの空に浮かぶ、七色の“気配”だった。


「……なんか今日、空気いいよね。いや、気のせいじゃないよ、たぶん」


そのままオルグは布団にもぐり込んだ。


ロルクが息をのんで呟く。 「……今のって……祝福……?」


「寝ながらでもやるんだなぁ、あいつ……いや、やる気出てないのに、やっちゃうのが一番すごいのかもね」


フランデルはそう言って、焼きたてのパンをトンとカゴに置いた。



次回予告:「イレア様、揺れる信仰心。」


教義監察官イレア、再登場。 信仰と理性、過去と今、神と人──そのはざまで揺れる“信じる”という行為の物語。

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