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ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる  作者: 鳥助


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97.その後の処理

 ネクロマンサーの商会長を倒した後、商会長を担いで商会長の屋敷に戻った。私たちが戻ると作業中だった騎士が騎士団長に取り次いでくれる。そこでようやく商会長の死体を受け渡すことができた。


「ご苦労だった。まず、無事で何よりだった。怪我をしているなら、回復するが」

「怪我ならもう治したから大丈夫」

「そうだった、聖女だから傷を治せるか。三人の働きのお陰で騒ぎが大きくなる前に収束できそうだ」

「他のところにアンデッドはいたの?」

「いや、他のところにはアンデッドがいなかったらしい。どうやらこの屋敷にアンデッドを集めていたらしいな。お陰で処理が簡単だ」


 そうか、他のところにはアンデッドが潜んでいなかったのか。なら、この屋敷にいたアンデッド……スケルトンの亡骸を処理すればなかったことにできるのか。


 屋敷の敷地には多くの荷台のついた車が並んでいて、その中に動かなくなった布に包まれたままのスケルトンが運び込まれていた。あれなら、外部に知られることもないだろう。


「ここの作業が終わり次第、騎士団詰所に戻り、待機している公爵様にご報告をする。それまで、ここで待っていてくれないか?」

「分かった」

「商会長の死体はこちらで保管しておくな」


 運び出される商会長の死体を見ながらそんな事を話す。一通り話し終えると、騎士団長はその場を離れて作業の指示に戻っていった。


 残された私たちは屋敷の庭に置かれたベンチに座り、作業が終わるまで待つことになった。


「ようやく、一息付けますね」

「はぁ……魔法を連発して疲れたわ。今日はもうベッドで寝たい」

「私も広範囲の浄化魔法を使ったから疲れた」


 二人の言葉に続くように口を開くと、二人は少し驚いた顔をしてこちらを見た。


「……何、その反応は」

「いや……ユイさんが普通に話しに乗ってきて驚いていたんです。今までは素っ気ない感じでしたから」

「話しに乗ってくれるのがこんなに嬉しいとはね」

「今までも話しに乗っていたと思うけど……」

「感じが違うんですよ。ツンツンしていたのに、突然柔らかくなったというか」

「ようやく、私たちの行動が報われた感じだね!」


 今までも普通に会話をしていたと思うけど、そんなに感じが違うのか? ……良く分からない。どんな風に話していたっけ。


「どういう心境の変化があったんですか?」

「そうそう、それが聞きたい! やっぱりピンチの時に助けに入ったから、仲間だって認めてくれたの?」

「それは……」


 二人が身を乗り出して聞いてくる。私の心境の変化……。


「二人が助けに来たことがきっかけだとは思う。だけど、そこで心境の変化があったというか、仲間という意識が自然とできたから」

「じゃあ、急に仲間だって思ったってことじゃないんですね」

「きっと、今までの私たちの積み重ねがあったからよ。なるほど、実はユイが絆されていたってことなのね」

「……まぁ、そういうことじゃない」


 なんだこれ、恥ずかしいな。反抗していたのに、実は絆されていたなんて……。私はいつの間にこんなに弱くなったんだ。一人でも大丈夫だったはずなのに。


「はぁー、良かったー! ユイさんが絆されてくれて!」

「長い戦いだったわ……。でも、これで普通に楽しめることができるのね!」


 二人は嬉しそうな顔をした。そんなに絆される私を待っていたのか?


「二人はなんで諦めなかったの? こんな面倒な人なんてほっとけば良かったのに……」


 自分でも思う、面倒な人だと。人を突き放して慣れ合いをしない人と一緒にいたいなんて普通は思わない。そこまで執着する何かが自分にはあるとは思えなかった。


「落ちこぼれだった私を嫌々ながらも無理に突き放そうとはしない所がきっかけでした。この人なら一緒にいたいって思ったんです。ユイさんは私を救ってくれた人なんです」

「私は地球マニアだし、地球人と一緒にいたいっていう不純な動機からだったわ。これから沢山の地球人に会うんだって思った時に出会ったのがユイだった。ユイが釣れない態度ばかり取っていたから、逆に興味を引かれたのよね」


 二人ともそれなりに理由があったみたいだ。でも、そんな軽い理由でなんで面倒な私と一緒にいようと思ってくれたのか、やっぱり分からない。


「今の話を聞いても分からない。やっぱり、見放されるのは私の方だったんじゃ」

「違います! 素っ気ないユイさんでしたが、私たちの事をちゃんと考えてくれました。そんなユイさんだったからこそ、一緒にいたいと思ったんです」

「本当に嫌なら一人でどこかに行くことだってできたのに、それをしなかった。ちゃんと私たちの意思を無視しないでいてくれた。一緒にいる理由なんてそれで十分よ」


 私は普通の対応をしたつもりだが、それが良かった? 人間関係は難しい。その経験は小さい頃にしか経験していなかったから、大きくなった今に相応しい人間関係が構築できるとは思えなかった。


 そうか、私は普通に良い人間関係を築けていたのか。それを知れただけでも、嬉しい。


「私は一人になってからあまり人と関わってこなかった。だから、これからの関係が上手く構築できないかもしれない」

「だったら、これから一緒に学んでいきましょう。そして、私たちにしかできない関係を作っていくんです」

「私たちだけのパーティーね。ふふっ、これからが楽しみ! 本当の仲間になったんだもの、色んな事ができるわよ」


 この先の関係に不安しかない私と、明るい展望が見える二人。どうして、こんなに考えが違うのか不思議だ。でも、悪い気がしない。


「これからもよろしく」


 そう言って、少し表情を緩めてみた。すると、二人は驚いた顔をした後、嬉しそうな笑顔を見せてくれる。


「はい、もちろんです!」

「三人でよろしくやろー!」


 ◇


 屋敷の作業が終わると、私たちは騎士団の詰所へと移動した。そこでは先に報告を受けていた公爵がいて、騒動が収まって嬉しそうにしている。


「屋敷で何があったかは聞いた。三人ともご苦労だったな」

「なんとか商会長の企みを潰すことができました。これで、町の安全は守られたと思います」

「そうだな。町にアンデッドが入り込んだと知られたら、領民はパニックになっていただろう。それを知られることなく事を治めてくれたこと、感謝する。それで、だ……」


 少し言いにくそうにする公爵。一体何を考えているんだ?


「この事は内密にして欲しい。本来ならネクロマンサーを倒せば、冒険者としての功績に入るだろうが……今回の事は大っぴらにしたくない」

「そうですね、町にネクロマンサーとアンデッドが入り込んだと知られたら公爵の信用に傷がつきます」

「それはできれば避けたいところだ。お前たちに貸し一つということで、この件は周囲にはばらさないでいて欲しい。それと、今回の報酬として一千万オールをお前たちに渡そう」


 その言葉に私たちは息を呑んだ。一千万オール、とても大きな金額だ。そんな金額を軽く出すなんて、公爵はすごい。


「分かっていると思うが、この報酬には口止め料も入っている。くれぐれも、外には漏らさないようにして欲しい」

「分かりました。絶対に口外しません」

「うむ、よろしく頼んだぞ」


 権力者は怖い、この約束はしっかり守らないと私たちがどんな目に合うか分からないな。自分の身を守るためにも、上手く世を渡って行かないとな。


 その後も雑談を交えつつ、公爵との話し合いは終わる。これで、第三領都のネクロマンサー騒動が終結した。

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