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ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる  作者: 鳥助


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93.先手を打つ

 屋敷から無事に脱出できた私は二人と合流して、早速公爵に会いに行く。突然行ったのに、公爵はすぐに時間を取ってくれて、時間を待たずに会うことができた。


「調査ご苦労。それで、何か進展があったんだな」

「はい。正門のところで怪しい人物がいないかと探していた所、怪しい積み荷を持った商会がいました」

「ほう、それはどの商会か分かるか?」

「イグニス商会です」

「イグニス……あの商会か」


 商会の名を出すと公爵は厳しい表情になった。


「イグニス商会はあまり良い噂を聴かなくなったのでな、今月で契約を打ち切るはずの商会だ」

「らしいですね。その商会が持ってきた荷台にサーチ魔法を掛けたところ、怪しい反応があったんです。何かあるけれど、何か分からないような、そんな違和感を覚えたみたいです」

「何か細工をしていたのか?」

「もしかしたら、阻害魔法を使っている可能性があります」

「そんな高度な魔法を使っていたのか……。して、その積み荷は? どこに行って、何が入っていた?」


 身を乗り出して聞いてくる公爵。その公爵に屋敷で見たことをフィリスが伝える。


「積み荷は商会長の屋敷に運ばれました。その積み荷は人目がつかない秘密の部屋に隠されていたんです」

「知られたくない積み荷だということだな。それで、積み荷はどんなものだった?」

「仲間が直接確認したんですが、中身はアンデッドのスケルトンでした。それも沢山ありました」

「何っ、スケルトンが沢山だと!? それは本当か!?」


 屋敷で見たことを報告すると公爵は驚いた顔になった。そして、深刻そうに腕を組んで考え始める。


「沢山のスケルトン……それが町に放たれれば大変なことになる」

「しかも、スケルトンがもし屋敷以外の所にもいた場合、もっと危険な事になると思います」

「そうだな。スケルトンがその屋敷にだけにしかいないとは限らない。そうなると、対応が難しくなる。……イグニス商会の店舗や倉庫を囲わなければいけないな」


 屋敷以外にもスケルトンがいた場合、スケルトンを動かした時には町は大混乱となる。それを防ぐ手立てが必要だ。


「よし、騎士団を動かそう。明日、朝早くにイグニス商会に関係する各所を騎士団で包囲する。包囲した後は屋敷に突入して商会長を捕まえる。その時にお前たちも協力してくれるか?」

「もちろんです。相手はアンデッドを率いています。浄化魔法の出番が来ると思いますし、聖女の上位職についている仲間がいたほうがいいでしょう」

「なら、各所に神官を配置させよう。そしたら、他のところでアンデッドが出たとしてもすぐに対処できる。屋敷へ突入する際はお前たちを連れて行く」


 騎士団で関係各所を包囲して、尚且つ神官も配置させるか。それなら、アンデッドが湧いて出ても対処できそうだ。


「私は指示を出してくる。お前たちは明日に備えて、ウチに泊っていってくれ。今後の相談もしたいしな」

「分かりました。お言葉に甘えさせていただきます」

「では、失礼する」


 そう言った公爵は立ち上がって、足早に部屋を出て行った。そこにメイドが近づいてくる。


「夕食までまだ時間があります。このまま部屋でお寛ぎますか?」

「では、この部屋で夕食までの時間を潰します」

「分かりました。お茶やお菓子をお持ちします」


 そう言って、メイドは出て行った。残された私たちはソファーに体を預けて、リラックスする。


「屋敷の捜索から、大変なことになったわね。町を巻き込む大事件になるじゃない」

「大事件になる前に手を打っているんですよ。スケルトンが町に放たれるなんて、考えただけでも恐ろしいです」

「もし、そうなったら大きなパニックになる。人も死ぬかもしれない」

「そうなる前に、なんとかしなくちゃいけない訳ね。明日は大変な一日になりそう」


 明日は朝から大仕事が待っている。脳裏に浮かぶのはゾンビが現れた時の様子。みんなパニックになって凄く混乱した。あれと同じパニックを引き起こさないためにも迅速な行動が必要だ。


「今日はゆっくり休んで、明日に備えるしかないわね」

「まだ、公爵様と話さなきゃいけないので緊張して大変ですが、頑張ります」

「公爵は任せた」


 部屋でリラックスをしていると、扉が叩かれてメイドが入ってきた。私たちの目の前にお茶とお菓子が置かれた。それを摘まみながら、時間が過ぎるのを待つ。


 ◇


 その後は公爵と一緒に食事を取り、明日の予定の話を詰めた。それが終わると大きな風呂に入ってスッキリすると、一人一部屋与えられてそこで寝泊りをする。


 そして、次の早朝。朝日も上がらない内に私たちは起こされた。朝食を食べ終わる頃にはようやく朝日が昇って来たところだった。


 いつもの準備を済ませると、今度は公爵邸から連れ出される。車に乗って連れ出されると、向かった先は騎士団の詰所だった。公爵領の騎士団とあって、広場と大きな建物があった。


 その広場にはすでに騎士たちが装備を整えて集まっていた。公爵が到着すると、騎士たちはすぐさま整列する。その規律が取れた動きは気持ちのいい物だった。


 整列した騎士たちの前に公爵が立つ。


「みんな、朝早くからご苦労だった。これより、イグニス商会各所への突入を始める。敵はネクロマンサーでアンデッドを使役している。非常に危険な人物だ」


 公爵が話し出すと、誰もが真剣な顔つきになって話しに耳を傾けていた。その統率がとれた様子に突入の不安はなくなる。


「相手はどれだけのアンデッドを率いているか分からない。配置された場所にアンデッドが必ずいると思って行動して欲しい。また、アンデッド対策として教会から神官を派遣してもらった。みんなで協力して当たるように、以上だ」


 公爵の話が終わると、今度は騎士団長が前に出る。


「では、行動を開始する。班に別れ、イグニス商会各所への移動を始めよ。八時に各所一斉に突入を開始しろ」


 騎士団長が短い話をすると、騎士たちから威勢のいい声が聞こえてきた。それから、騎士たちは固まって動き出し、広場から続々と出て行く。


 それを見送ると、残った騎士たちと合流して私たちも広場を出て行った。


 ◇


 早朝の町の道には人がほとんどいない。その中を荷台のある車が何台も通っていく。その荷台の中には複数の騎士たちが乗っていて、現場に向かっている途中だ。


 私たちは特別な車に乗せてもらい、現場へと急いでいった。異世界漫画だと前の世界にもある車が普及していないことが殆どだったから、この状況はどうにも見慣れない。


 今までとの知識と現実との差を見せつけられながら、私たちは現場へと着いた。車から降りると、車の荷台から騎士たちが続々と降りていくのが見えた。


 騎士たちは商会長の屋敷をぐるりと取り囲むように配置される。あっという間に、包囲網が完成した。


「定刻八時だ。作戦を実行する」


 一緒に来ていた騎士団長がこの場を取り仕切る。騎士団長を先頭に取り囲んでいない騎士が一緒に屋敷の中に入っていく。その後を私たちも追って行った。突入の開始だ。

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