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ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる  作者: 鳥助


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86/99

86.第三領都に到着!

「今日の朝食も美味しかったですね! チーズがびょーんって伸びて堪りませんでした!」

「私は半熟の卵の加減がもう! あのトロトロが堪らなかったわ。ユイは自分で作ってどうだった?」

「……ソースが良かった」

「あっ! ソース良かったですよね。めちゃくちゃ合ってました!」

「ソースがサンドイッチをまとめていた感じがするわね。あのソースをチョイスしたユイは流石ね!」


 快晴の中、私たちは自転車を漕ぎながら朝食の話しで盛り上がっていた。手作りしたサンドイッチは本当に簡単に作った。


 焼いた燻製肉の上にチーズを乗せて、その上に半熟の目玉焼きを乗せる。切った野菜と買っておいたソースをかけて、最後にパンで挟む。本当にそれだけだったのに、結構美味しくできた。


「お店では食べれない味してたわよ」

「ですね。お店では食べれないです」

「それってどういう意味?」

「ユイの手作りは特別に美味しいってことよ」

「ですねー」

「……馬鹿じゃないの」


 本当に何を言っているんだか。こんなの普通だし、特別美味しいっていう訳でもないのに。なのに、心はちょっと軽くなったような気がする。自分が作った料理を褒められるのはこれが初めてだから、なんか落ち着かない。


 二人が喋り、時々私に話が振られる。そんな自転車の旅を続けて行った。とても気持ちいい天気の中、風を切って進む自転車は気持ちが良くて心が晴れやかになる。


 サイクリングがこんなに楽しい物だったなんて、前の世界では知らなかったことだ。この世界に来て、色々な常識が変わっていくのがそこそこ楽しい。次の第三領都に行ったら何が待ち受けているのだろう。


 ◇


「見えてきましたよ。第三領都」


 フィリスが指を差した方向に見えた人工の建築物。まだここからじゃ遠くて小さいが、あれは近づくととんでもない大きさになっていることだろう。


「結構大きい場所なのね。遠くても、その大きさが分かるわ」

「北部を代表する領都なので、その規模は王都に匹敵するんです」

「そうなのね。どんな地球文化があるか、今から楽しみだわ」


 あんなに大きな町を見ると、ワクワクするのは分かる。大きいからなんでもありそうで、期待が膨らんでいく。私の知らない漫画やラノベがあるといいな。


「じゃあ、第三領都まで競争です!」

「あっ、先に行くなんてズルい! 私だって負けないわよ」

「ふー……仕方ないな」


 フィリスが自転車を強く漕ぐと、かなりのスピードが出て先に行ってしまった。それをセシルと私が追いかける。短い競争の始まりだ。


 お互いに追い越したり、抜かれたりを繰り返しながら第三領都に近づいていく。そんなことをしていたら、あっという間に門のところに辿り着いてしまった。


「着きましたね! 入領手続きを取りましょう」

「最後にいっぱい漕いだから疲れたわー。早く町の中に入って休みたい」

「入領手続き……あの列か」


 門から伸びる複数の列がある。左に人だけの列、中央に馬車などの乗り物がある列だ。その中の左の列に並び、自分の番を待つ。


「流石第三領都ですね。入領手続きに沢山の人がいます」

「出入りが多そうね。昼食時には入れるかしら」

「このまま行けば三十分くらいじゃない?」


 大人しく列に並び自分の番を待つ。ダラダラと前に進んでいると、空いている右側の道を進んでいく大きな荷台を引いた車があった。その車はあろうことか中央に並んでいる馬車の先頭に横入りした。


「うわ、なんですかあの車。思いっきり横入りしましたよ」

「どこかの大きな商会なのかしらね」

「この世界にも車はあるんだ」


 横入りした車のせいでその場は騒然となった。すると、横入りした車の中から人が降りてきて、門番の人や後ろの馬車の人に何かを見せている。


「我らはリトンモーグ公爵家ご用達の商会イグニスだ。お前らの木っ端の商会とか違い、選ばれた商会だ。先に道を開けろ!」


 どうやら、その商会はここの領地を治めるリトンモーグ公爵家お抱えの商会らしい。まるで自分たちが偉いかのように振る舞い、強引に門の中に入ろうとしている。


「毎日強引に入られては困ります。ちゃんと並んでください」

「うるさい! 旦那様が車に乗っておられる。早く道を開けないと、リトンモーグ公爵様に言いつけるぞ! お前たちの首なんか、簡単に飛んでしまうぞ!」


 門番と使用人の問答が騒々しく辺りに響く。それを聞いていた人たちは顔を顰めて、遠巻きに観察している。私たちも巻き込まれないようにと、遠巻きに成り行きを見ていた。


 すると、門番の人が渋々道を開けた。それを見ていた使用人はしてやったりと笑い、車の中に戻っていった。そして、車は大きな荷台を引いたまま猛スピードで門を潜っていく。


「強引に先に行ってしまいましたね。あんまり気分の良いものじゃないです」

「そうね。権力を使って、自分の思い通りに事を進める人はどこにでもいるものだわ」

「いつか痛い目に合えばいい」


 嫌な場面を見て、私たちは渋い顔になった。あーいう人がいるのは知っているが、目の前にすると気分は良くない。折角、第三領都に来た喜びが薄れていくようだ。


「こんな嫌な気分は美味しい昼食を食べて忘れましょう。えーっと、何があるか調べるわね」

「大きな町ですから、色んな物がありそうですね」

「パン以外が食べたい」


 気を取り直してセシルがスマホを片手に検索し始めた。私たちが横でそれを見守っていると、列はどんどん先に進んでいく。


「よし、決めたわ。ここでどうかしら?」


 画面を見せてくると、そこには美味しそうな魚料理が並んでいた。それに私の希望が通って、パンが主食じゃない。主食は……パイ? へー、いいね。


「魚料理、いいですね。そこにしましょう」

「じゃあ、ここで決定ね。あっ、そろそろ私たちの番よ」

「ようやくか」


 昼食の話をしていると、私たちの番が回ってきた。簡単な質問に答えると、すんなりと中に通してくれた。ようやく、第三領都だ。ここには何があるんだろうか?


 ◇


「宿屋に行く前に、ちょっと寄っていってもいいですか?」


 お店から出ると、フィリスがそんなことを言った。


「どこに寄るの?」

「リトンモーグ公爵家です」

「……領主の所に?」

「はい。私の家は北部にありますから、自然とリトンモーグ公爵家の傘下に入っています。その領都に来たんですから、素通りすることはマナーがなっていないのです。だから、来たことを伝えて余裕があれば顔合わせをします」


 格上の貴族の領都に来たんだから、格下としては形式として挨拶をしなければいけないのか。貴族は面倒くさいな。


「じゃあ、フィリスはリトンモーグ公爵と面会するの?」

「するかもしれませんし、しないかもしれません。とにかく一度連絡を取ってみて、後は相手の出方次第でしょうか。手紙を書いてきたので、それを門番に渡すだけで終了です」

「なら、リトンモーグ公爵家まで行きましょう」


 その後、公爵家の豪邸に行き、門番に手紙を渡して終了した。フィリスは仕事をやり切った顔つきをして、これで終わりだと思っていた。だが、話はこれで終わらなかった。

お読みいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
あ〜〜〜、オレたちのフィリスちゃんに危険な予感が!!?? しんぱいだ〜〜〜〜〜
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