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ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる  作者: 鳥助


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81.ネクロマンサー、リリアン戦

 アンデッド化して操られている人間が二十人以上もいる。体が大きい分、以前のゴブリンの時よりもやりづらそうだ。


「あれが全部アンデッド化した人間なのか?」

「どういうことだ、リリアンの両親もいるぞ!」


 警備隊の人が驚きの声を上げて、指を差した。その方向には他の人とは違う年老いた夫婦がいて、その目は虚ろになっている。あの死臭の中、親が気づくはずがないと思っていたが……まさかアンデッドになっていたとは。


「えっ、じゃあ……自分の両親を殺したってことですか!?」

「なんで、そこまでするの!?」


 警備隊の言葉を聞いたフィリスとセシルは思わずリリアンに問いかけた。リリアンは不気味な笑みを浮かべながら口を開く。


「だって、イアンがいることがバレてしまったんですもの。うるさいから、殺してやったまでよ」

「自分の親なのにどうして!?」

「私たちの愛の前では些細なことよ。私はイアンとずっと一緒にいたいから」

「そんな……イアンさんは死んでいるんですよ!」

「死んでなんかいないわ! 今もこうして私の傍にいてくれる! あの方の言った通り……この力があれば私たちは一生傍にいられるわ!」


 親を手にかけるほど狂っていたのか。それにあの方って……。


「あの方って黒いローブを着た人?」

「そうよ。突然現れてビックリしたけど、私に道を示して力を与えてくれた。イアンを殺してアンデッドとして蘇らせれば、永遠に一緒だと!」

「えっ……イアンは病気で死んだんじゃないの!?」

「私が苦しみから解放してあげたのよ。もう辛い思いをしなくてもいい、私に微笑みかけてくれるイアンが傍にいてくれるの」

「そんなことって……」


 私たちはリリアンの言葉に絶句した。まさか、イアンが病気で死んだんじゃなくてリリアンの手で死んでいたなんて。どんなことがあったら、そんな考えになるのか分からない。


「だから、そんな私たちの仲を切り裂く奴は許さない。全員、殺してやる!」


 リリアンの声にアンデッドたちは反応して、こちらを睨みつけてきた。相手はやる気だ。だったら、それに応えてあげないと。胸元で手を組んで祝詞を唱える。


「神よ、悪しき者を払い、迷える魂の導きの力を我らに与え給え」


 手元から光が溢れ、私たちの武器に移った。これで攻撃すればアンデッドを浄化することができる。


「神官の浄化の魔法……鬱陶しいわね。そう簡単に私の手駒をやらせはしないわ!」


 リリアンの一声でアンデッドたちが動き始めた。私たちを囲うように移動すると、一斉に飛び掛かってくる。かなりの速さだけど、これくらいなら問題ない。暴走ゾンビの時と同じくらいだ。


 次々と襲い掛かって来るアンデッドたちの攻撃を避け、いいタイミングで来たアンデッドに向けてメイスを振る。とらえた、と思ったのにメイスはからぶってしまう。


 へー、やるじゃん。ちゃんと操って、武器に当たらないようにしているんだ。当たったら一瞬で浄化されてしまうから、リリアンも気が気じゃないだろう。


 ちゃんと避ける事ができるのは暴走ゾンビとは違う。でも、所詮操っているのは人間だ。避けるように指示を出すのも限度がある。だから、ここは速度重視の攻撃をしよう。


 特大のメイスを一メートルくらいのメイスに変えると、身体強化のレベルを上げた。そして、襲い掛かって来るアンデッドに向かって走る。


 今までの何倍もの速度で移動をして、一気に距離を詰める。その速度を生かしたままメイスを振ると、メイスはアンデッドの体を捉えた。浄化魔法がアンデッドに流れ、そのアンデッドは脱力して地面の上に転がった。


「次!」


 休まず次のアンデッドに向かう。一気に距離を詰めてメイスを全力で振ると、またアンデッドの体を捉えた。吹き飛ぶアンデッドは地面の上に転がって、二度と動かなくなった。


「くっ!」


 リリアンが苦しそうな声を出した。アンデッドを懸命に操作しているが、私のスピードについてこれないみたいだ。そんな私を抑えようと、複数のアンデッドを差し向けてきた。


 だけど、そのスピードは暴走ゾンビ程度。それくらいじゃ、なんの圧力にもならない。襲い掛かって来るアンデッドを軽々と避け、タイミング良く来たアンデッドに向けて速度を上げたメイスを振る。また一体のアンデッドが吹き飛ばされ、地面に転がったまま動かなくなった。


「よし、二体倒しました!」

「私も二体よ!」


 声がして振り向いてみると、フィリスとセシルがアンデッドを倒している所だった。素早く動くアンデッドを倒せるようになるなんて成長したな。まぁ、まだまだ強くなって貰わないと困るけど。


「くっ、こうなったら!」


 リリアンを見ると、ボソボソと口が動いていた。その視線の先にはあの二人がいる。闇魔法で攻撃するつもりだな。私は心の中で祈り、二人に向かって防御魔法を展開させた。


「ダークファング!」


 黒い牙が二人に向かって放たれた。鋭い牙が猛スピードで二人を襲った……だが、その前に展開していた防御魔法がその攻撃から二人を守る。


「くっ……神官の防御魔法っ!」

「ユイさん、ありがとうございます!」

「ユイ、助かったわ!」


 一応パーティーメンバーなんだから、これくらいはしておかないと。


「みんな、みんな……殺してやるわ!」


 すると、今度はアンデッドの操作に集中し始めた。先ほどよりも速く動き回るアンデッドたち、これは攻撃を当てるのも一苦労になりそうだ。だったら、広範囲の浄化魔法で一度に浄化させるか。


「二人とも、広範囲に浄化魔法をかける。だから、その間に守ってくれない?」

「お安い御用です! ユイさんには指一本触れさせませんよ!」

「その方が早そうね。任せておいて」


 二人に頼るのは不安だが、状況を覆すにはこの方法が最適だ。私は地面に両膝を付き、胸元で手を組んだ。


「神官の祈り? ……そんなこと、させるかぁ!」

「ユイさん、浄化魔法を任せました」

「周りの事は気にしないで、浄化魔法に集中して」


 リリアンの叫び声が響くと、アンデッドたちが襲い掛かってきた。私は周囲のことは二人に任せ、心を静めて祈りを捧げる。


「創世の神パルメテスの愛し子なる我の言葉を聞き届け、我が身に降りかかる厄災を払い給え」


 意識を祈りに集中させる。自分の中から溢れだす魔力を聖魔法に変換して、浄化魔法の力を貯える。


「天地を貫く聖なる光よ、我が前に現れよ。迷える魂を救い、あるべきところに帰せ。ここは地の上、帰るべきは天の上。その魂が帰する道を示せ」

「やぁぁっ! はぁぁっ!」

「漲る魔力よ、我が意のままに舞い踊り、敵をなぎ倒す力となれ。ウインドブロウ!」


 祝詞を唱え続けると私の中で聖魔法の力が強くなっていく。この力があれば、周囲にいるアンデッドを浄化できる。


「解放せし我の力が導き手になりて、祈りを受け取り給え。魂よ、浄化せよ!」


 組んだ手を天に伸ばして浄化魔法を解放した。手から放たれた光は周囲に広がり、光の波となって周囲の者たちを包み込む。


 その光が収束するとアンデッドの動きが止まり、殆どのアンデッドの魂が浄化されて地面に力なく倒れた。


「やりました! アンデッドたちを無力化しましたよ!」

「ふぅ……なんとかなったわね」


 アンデッドたちの猛攻を防いでくれていた二人が安心したように息をついた。これでアンデッドは動かなくなった。リリアンたちを確認すると、そこには黒い球みたいなものができあがっていた。


 浄化魔法を防がれた。でも、これで残ったのはリリアンとその傍にいたイアンのアンデッドだけだ。すると、黒い球がフッと消えた。


「そんな、私の僕が一瞬で……」


 リリアンは一瞬にしてアンデッドが無力化されて、驚いているみたいだ。私たちが近づくと、リリアンは苦しそうな表情に変わる。


「来ないで! 私はイアンとこれからも一緒に生きていくのよ! 邪魔をしないで!」


 まるで、私たちが悪者みたいじゃないか。だけど、ここは引き下がれない。ネクロマンサーは放置できないからだ。

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