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ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる  作者: 鳥助


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80.疑惑のリリアン

 リリアンの店の前から警備隊の詰所へと移動した。まだ、朝の早い時間だったけど、詰所には人がいた。


「すいません」

「何かありました?」

「ちょっとここでは……。中で話してもいいですか?」

「あぁ、いいですよ。どうぞ」


 そう言って、詰所の中へと通された。小部屋に連れていかれると、警備隊の人が話しかけてくる。


「それで、何かありました?」

「実は怪しい人を見つけたので、その報告です」

「怪しい人……? まさか、最近の行方不明事件の関係ですか?」

「もしかしたら、関係することかもしれません」


 そう言うと、警備隊の人は鋭い顔つきになった。それから棚のところに行くと、一つのバインダーを取り出して改めて私たちと向かい合う。


「それで、怪しい人とは?」

「トリリアンの雑貨屋のリリアンです」

「リリアン、だと?」


 リリアンの名前を出すと、警備隊の人の目が厳しくなった。


「一体、どんなことがあったか詳しく話を聞かせてくれるか?」


 身を乗り出すような勢いで詳しい話を聞き出しに来た。だから、昨日から今日にかけてあったことを全て話した。すると、警備隊の人の顔はどんどん険しくなっていく。


「やっぱり……あのリリアンには何かあると思ったら、そんなことがあったのか」

「やっぱり、というと?」

「行方不明になった人たちはみんなリリアンと関わりがある人なんだ。それも、どの人もリリアンの事を色目で見ていた奴らだった」


 この情報は警備隊の人も掴んでいたらしい。


「怪しいと思っていたんだが、証拠が無かった。だが、君が嗅いだという死臭の証拠があれば店の奥に踏む込むことができる。ようやく、あの女を連行できそうだ」


 警備隊もリリアンを怪しいと思っていたが、確固たる証拠が無く動けないでいた。だけど、私が店の奥から嗅いだ死臭があれば、そこを捜査することができる。


「今、人を集める。それからリリアンの店に踏み込む」

「あと一つ、注意することが」

「なんだ?」

「もしかしたら、リリアンがネクロマンサーで闇魔法を使うかもしれません」

「ネクロマンサー? 闇魔法? 普通の女性がそんなものになっているなんて信じられないな」

「でも、女性が男性を連れ込んで男性が帰ってないんですよ。何か、力を隠しているのかもしれません」

「まぁ、その可能性はあるだろうな。任せておきなさい。なんたって、俺たちは強いからな。そう簡単にはやられんよ」


 ネクロマンサーの事、闇魔法の事を伝えたが警備隊の人はあんまり信じてなさそうだ。私の杞憂だといいんだけど……。


 ◇


 それから警備隊は人を集めてトリリアンの雑貨屋の前に集まった。私たちは外で見守ることになり、離れたところで他の警備隊の人と待機することになった。


「よし、行くぞ」


 数人の警備隊の人が店の中に踏み込んだ。しばらくすると、店の中にいた客が外へと追いやられて、その場は騒然となった。


 そのまま見守っていると、店から出る客もいなくなり、扉は閉まったままで動かない。中を見たい気持ちに駆られるが、ここは我慢して様子を見守ろう。


 そうして、私たちはその場から動かずに中から何かリアクションがあるまで立ち続けた。だが、いつまで経っても扉が開くことはない。店に入って三十分、何もないのはおかしい。


 そのおかしさは一緒に待っている警備隊の人たちも思っているみたいだ。


「何もない……おかしいな」

「一度、確認したほうがいいんじゃないか?」

「そうするか」


 残った警備隊の人たちが不安に駆られて、店の扉に近づく。私たちもその後を追い、警備隊の人が中に入るのを見ると、開けられた扉の所で立って中を覗く。


 店の中は静まり返っていて、何も物音が聞こえない。先に入ったであろう警備隊の声すら聞こえないのはおかしかった。


「おーい、どこにいる!」

「店の奥か?」


 警備隊の人が奥にある扉に手をかけ、中を開く。


「な、なんだこの異臭は……」

「隊長! この中ですか!?」


 扉の近くにいた警備隊の人は鼻を手で覆い、怪訝な顔をした。それから声を上げるが、中から何も聞こえない。警備隊の人が中に踏み込んでいくと、私たちはその扉の所まで移動をした。


 店の奥へと続く扉に近づくと、鼻をつく異臭がしている。これは前の世界で良く嗅いだ、死臭に間違いない。リリアンはこの自宅部分で死体を隠していた可能性がかなり高くなった。


「なんだこの血は!?」


 奥に移動をした警備隊の人が叫んだ。気になった私たちがその奥に行くと、リビング中が鮮血で汚れていた。ここで、何かがあったのは確かだ。


「隊長、どこですか!?」

「返事をしてください!」


 こんな状況になっても、先に中に入った警備隊の人の返答はない。一体どこに行ったんだ? そう思っていると、二階からガラスの割れる音がした。きっと窓ガラスが割れたんだ。私たちは警備隊の人と一緒に外に出た。


 すると、二階から人が地面に落ちてきた。それも一人だけじゃなく、何人もだ。その人たちはゆらりと立ち上がると、こちらを向く。顔から血の気が引いた色をしている。常人の人じゃない。


 その中にリリアンがいた。男の人にお姫様抱っこをしてもらい、こちらを恨めしそうに見ている。


「リリアンだ!」

「抱き上げているあの男……イアンじゃないか!?」


 警備隊の人たちが声を上げた。リリアンを抱き上げているのがイアンだって? 死んだ人が動いているということになる。そんなことができるのは、ネクロマンサーしかいない。


「それに……隊長?」

「どうして、警備隊の仲間が……」


 次に注目がいったのは、警備隊の人たちだった。血まみれになって、血の気の失せた顔をしている。その目は虚ろで、そこに意思がないように思える。


「一体、どうしたんですか!?」

「何が、何があったんですか!?」


 警備隊の人たちが声を掛けるが反応はない。かわりにリリアンから反応があった。


「秘密がばれてしまったからには、もう手段はいとわないわ。この町の人たちを全員殺すまでよ」


 この町の人を全員殺す? どうして、そんな話しになるんだ?


 すると、リリアンは指示を出すと連れ添っていた男たちは走り出した。一体、どこに行くんだ?


「待て!」

「どこに行く!」


 警備隊の人が慌ててその後を追って行く。


「私たちも行きましょう」

「そうね。こうなったら、私たちの出番でもあるわ」

「俺たちも行こう。何かできることがあるかもしれない」

「そうだね。後を追おう」


 私たちも去って行ったリリアンを追って、町の中を走り始めた。


 ◇


 去って行ったリリアンを追って、辿り着いた場所は墓地だった。突然現れた様子のおかしいリリアンたちを見て、墓参りをしていた人たちは驚きと戸惑いで声を上げて距離を取った。


 そこに、警備隊の人たちと私たちが到着した。


「もう逃げられないぞ!」

「観念しろ!」


 様子のおかしい男たちに囲まれたリリアンはこちらを睨みつけている。不用意に近づいていく警備隊の人たちに向かって、リリアンは手を向けた。そして、何からブツブツと言っている……あれは詠唱だ!


「神よ、非力なる彼らを守り給え!」

「ダークファング!」


 咄嗟に防御魔法を展開すると、リリアンの手から黒い魔法が放たれた。獣の牙の形をした闇魔法は警備隊の人たちに襲い掛かったが、防御魔法の展開が間に合ったお陰で事なきを得た。


「リリアンが魔法を使っただと……」

「どういうことだ。そんな情報はなかったはず」


 咄嗟のことで尻もちを付いた警備隊の人が驚いて固まっている。私たちは警備隊の人たちの前に出て、クガーたちに後のことを任せた。


「その力……まさか神官っ!」


 防御魔法を見て聖魔法の使い手がいることに気づいたみたいだ。顔を歪めて、私を睨みつけている。


「イアンを浄化しに来たのね。そんなことさせないわ! 私たちは永遠に生きていくのよ!」


 リリアンが地面に手を置いた。すると、周りの土が盛り上がり、その中から人が起き上がってきた。なるほど、ここに逃げたのは僕を隠していたからなのか。


 私たちはリリアンが操るアンデッドに囲まれた。

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