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ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる  作者: 鳥助


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77.雑貨屋のリリアン

 翌日、私たちは冒険者ギルドに行き、クガーたちと接触した。


「えっ、あのリリアンから死臭が?」


 昨日あったことを話すとクガーたちはとても驚いた顔をした。


「何か色々と知っているみたいだね」

「知っているも何も、リリアンはこの町一の美人で有名だからな。知らない人はいないだろう」

「とっても美人だから、色んな人が狙っているんですよね」

「この町に住んでいる男なら、一度はリリアンに恋をするって言われているんですぜ」


 あのリリアンは飛び切りの美人だとは思ったが、そのせいで有名人になっているのか。だから、三人は余計に驚いたんだ。


「リリアンについて詳しい話を聞ける?」

「まぁ、色々とは知っているが……。雑貨屋を両親と一緒に営んでいて、経営は順調のようだ」

「順調だって言っても、リリアンがこの町一の美人だから、そのお陰でお客さんが絶えない感じなんですよね」

「雑貨屋の看板娘ですから、お店に立てばお客さんが自然と寄ってくる感じですね」


 雑貨屋の経営はリリアンの客寄せのお陰で順調か。それに死臭を漂わすような物も取り扱っていない。


「最近、リリアンの事で大きな話って言ったらアレだな」

「ですね」

「そうそう」

「何かあるの?」

「町一番のリリアンに恋人のイアンって言う奴がいたんだが、最近死んでしまったんだよ」


 リリアンの恋人が死んだ?


「結婚も近かったのに、イアンが病気になっちまってな。リリアンはどうにか病気を治そうとしたけれど、無理だったんだ」

「あの手この手を使ってイアンを治そうとしたんですが……」

「あの時のリリアンは鬼気迫るものがありましたよね」


 結婚が近かった恋人が病気になって死んだのか。本当に愛していたからこそ、あの手この手を使ったんだと思う。そんな大切な人が死ぬのは辛いだろう。


「一人きりになったリリアンだったけど、これを好機だと思った男たちがこぞってリリアンの所に通い始めたんだよ」

「慰めるフリをして、お近づきになりたいっていう下心満載で」

「落ち込んでいるところを慰めれば、自分にもチャンスがあるって思った男たちが多かったですねー」


 それほどにリリアンは魅力的な女性なのだろう。辛いところを慰めれば、心変わりする可能性もあるから。


「これが、今のリリアンの情報だ。最近は元気になってきたって言ったよな」

「元気になってきたから、自分にもチャンスがあるって思った男たちが雑貨屋に通い詰めているらしいですよ」

「今は誰がリリアンを落とせるか勝負しているみたいです」

「そうなんですね。あんまり怪しい話はなかったですね」

「でも、死臭はしたんでしょ? 怪しいに決まっているわ」


 話を聞く限りでは怪しい点はない。だけど、死臭がしたのは怪しい。死臭がつくような生活をしている訳ではなさそうだ。考えられるとしたら……。


「もしかして、亡くなった恋人を傍に置いているとか?」


 私の言葉に他のみんなが息を呑む。


「さ、流石にそんなことはないと思いますが……」

「亡くなったって……そこまでする?」

「いや、本当に仲睦まじい二人だったから……あるいは」


 死んだ恋人を傍に置いておけば、死臭がつく。その可能性を考えると、背筋が凍る思いだ。


「そう考える方が自然じゃない?」

「いやいや、全然自然じゃないですよ。死んだ人を傍に置くって……常人ならそんなこと考えません」

「それだけ愛が強いかもしれないけれど……そんなこと考える人なんている?」

「普通ならありえない。だが、二人はとても愛し合っていたし……。でも、どうしてそんな考えができるんだ?」

「……まぁ、それをやっていた人がいたんだよ」


 前の世界にいた。死んでゾンビになった人を傍に置いておこうとする人。もう人ではなくなっているのに、トドメを刺すこともできずに繋ぎとめていた人がいた。


 それだけ思いが強いと、常人ではやらないこともやってしまう。人の感情とはままならないものだ。


「じゃあ、本人に聞いてみます? 死んだ恋人を傍に置いているから、死臭がするんですかって」

「そんなこと、直接聞けるわけないじゃない」

「じゃあ、どうやって確認する? こっそり、家に入って確認することもできないだろう?」

「できませんよねぇ。でも、死臭がするのは尋常な事じゃないし、もし事件だとしたら大変なことです」

「ほっとけないわねぇ。もしかしたら、人が死んでいるかもしれないっていうのに……」


 死臭がするのは尋常な事ではない。関係のないことだから放っておけばいいのだが、妙に胸がざわついて仕方がない。こういう時は何かがある。


「墓守にお願いでもしてみるか? イアンの棺桶を見せてくださいって」

「中身があるか確認するんですね! それだったら、リリアンさんが恋人を囲っていないか分かります!」

「そうね、中身が確認できたら、リリアンが恋人の死体を囲っている可能性が分かるもの」

「……じゃあ、墓地に行こう」


 棺桶の中身を確認するのは賛成だ。もし棺桶の中にイアンがいなければ、リリアンがイアンの死体を囲っている可能性が高くなる。


 他人がそんなことをやっていても、関係のない話しだ。だけど、この胸騒ぎは他の事を暗示しているような気がする。例えば、ネクロマンサーと関係があるとか……。


 ◇


「ダメだったな。関係のない俺たちが棺桶の中身を再度確認はできないみたいだ」

「薄々は分かっていましたが、ダメでしたね」

「見れないって分かると、余計気になるわね」


 墓地に行き、墓守にイアンがもしかしたら棺桶に入っていないかもしれないから中身を確認させてくれと言ったが、話はそれ以上進展しなかった。イアンとなんら関係のない私たちが棺桶の中身を見せてくれる訳がなかったのだ。


 こうなると、ますます確認をしたくなる。


「で、どうする? このままリリアンの死臭は忘れたことにして、日常に戻るか?」

「他人の私たちが首を突っ込むのもアレですからねー。気になるっていうだけで、深堀するのもどうかと思いますし」

「えー、やめちゃうの!? 私はほっておけないから、真実を暴きたいわ!」

「ユイさんはどう思います?」

「普通ならほっとくんだけど、胸騒ぎがする。このままこの件を放っておけない」

「ユイさんがそんな事をいうなんて珍しいですね。でも、棺桶の中身が見れないので確認はできませんよ」


 本人を直撃できないから、棺桶を確認しようと思ったのに。どうしたら……。もうあの手しかないか。


「よし。夜にこっそり墓を掘り起こそう」

「大胆なことを考えますね」

「それくらいやらなくっちゃ! 私は賛成よ!」

「死臭だけでそこまでやるのか……。ここまで来たんだ、付き合ってやる」


 夜にこっそりと墓を掘り起こす、これしかない。


 ◇


 夜、私たちは墓地に集合した。薄気味悪い雰囲気でちょっと怖い。嫌な静けさの中、私たちは墓地の中を歩く。


「ここがイアンの墓だ。早速掘ってみるが……本当にいいのか?」

「いい」

「分かった。お前たち、掘るぞ」


 クガーたちはスコップを持つと、墓を掘り返していく。静かな墓地に響く、スコップで地面を掘り返す音。穴はどんどん深くなっていき、大人一人分くらいまで掘り進めた。


 その時、スコップの先に固い物が当たる。みんなで顔を見合わせると、優しく土をどかせる。すると、棺桶の蓋が見えてきた。


「よし、蓋を取るぞ」


 クガーがそう言うと、棺桶と蓋の間にスコップの先を突き刺して、てこの原理で棺桶の蓋を無理やりこじ開ける。開いた部分から手を入れて、最後に手で棺桶の蓋を開けた。


 すると、見えてくるのは――男性の遺体だった。


「入ってますね」

「じゃあ、リリアンは恋人の遺体と一緒にいないってこと?」


 棺桶の中に遺体は入っていた。その事実を残念がっていると、クガーの表情が変わる。


「ちょっと待て、この顔……イアンじゃない」


 クガーの言葉にその場はシンと静まり返った。イアンの墓に入っていたものは、イアンではない誰か。この事実に背筋がゾッとなる。


 リリアンが恋人イアンの遺体と一緒にいる、その可能性が高くなった。

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