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ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる  作者: 鳥助


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25.パーティーを組まされた

「パーティーを組むまで、絶対に離しません! ここで、パーティーを組めなかったら終わりなんです!」

「絶対に逃がさないわ! 本物の地球人! 出会えたが最後、一生ついていくわ!」


 両腕を引っ張られ続け、隣でずっと叫ばれていた私は憔悴し始めていた。何度も何度も断ったのに、全然諦める気配がない。冒険者登録のイベントがこんなに恐ろしいものだったなんて……。


 漫画やラノベでは、いちゃもんを付けた来た先輩冒険者を懲らしめる的な展開だったのに。ワンパンで決まるような展開なのに、なぜ使い古された展開じゃないんだ。


 やっぱり、これはパーティー強制加入のイベントなのか? 何度も断っても話がループしているから、了承しないと進めない制約があるのか? ……そういうことなら、パーティーを組んで後から解散すればいいか。


「……分かった。パーティーを組む」

「ほ、本当ですか!? もちろん、私とパーティを組むんですよね!」

「いいえ、私とパーティーを組むのよ! 絶対に気が合うと思うわ!」

「はぁ……面倒だから、ここにいる三人でパーティーを組むのはどう?」


 一人ずつパーティーを組むのは嫌すぎる。だったら、一緒に組んだほうが一度に終わるからいい。ただ、この二人が一緒だといがみ合うんじゃないか? そんな中にいるのは疲れるから本当は嫌なんだけど。


「三人でパーティー……いいですね! 二人よりも三人です! うわー、ついに私もパーティーの一員になれるんですね! 嬉しいです、ありがとうございます! 一緒に頑張りましょうね!」

「三人ね。私は別に構わないわ。地球人と一緒に居られるなら、何人だって構わない。それに結構バランスのいいパーティーになったんじゃない?」


 ……意外にも好感触だ。いがみ合うと思っていたが、これなら面倒な人間関係に巻き込まれることはないかな? はぁ、でも……ようやく話が進んだ。やっぱり、これはパーティー強制加入のイベントだったんじゃないか?


「そういうことでしたら、早速パーティー結成の申請をしましょう」

「そういえば、そうね。パーティーの名前はどうするの?」

「それはもう、カッコいい名前をつけましょう! なんてったって、これから名を馳せていくんですから」

「……私は適当でいい」

「なら、フィリスが付けてみて」

「お任せください! ……うーん」


 パーティーの名前とか面倒だ。どうせ、長続きしないパーティー名なんてどうでもいい。そう思って、フィリスに一任すると真剣に考え始める。


「栄光の乙女英傑、というのはどうですか?」

「……どうでもいい」

「いいんじゃない?」

「じゃあ、これで申請しましょう! 三人で受付に行きますよ!」


 フィリスが張り切って立ち上がると、私たちの手を引っ張って受付へと急かす。はぁ、これでパーティーが結成されてしまうのか。まぁ、一時的なものだろうし、適当な理由を付けて解散させよう。


 ◇


「無事にパーティー申請もできましたし、これからよろしくお願いします!」

「よろしくね。ふふ、これから色々と楽しみましょう?」


 この二人はいつの間に意気投合したんだ? さっきまで、どっちがパーティーのメンバーになるか争っていたのに……。


 まぁ、そんなことはどうでもいいか。これでパーティーは組んだんだし、後は仕事まで自由だろう。


「……じゃあ、これで」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「どこに行こうというの!?」

「仕事の時は一緒に行動する。だけど、それ以外はどうでもいいんじゃない?」

「何を言っているんですか! パーティーだから、お仕事以外も一緒にいたほうがいいじゃないですか!」

「そうよ! 折角出会ったのに、それ以外は別々だなんて寂しいじゃない! 一緒にいてお話もしたいし!」


 席から立ち去ろうとすると、二人にまた手を掴まれて止められた。どうやら、二人の中ではパーティーになったら、日常も一緒にいないといけないような考えになっているみたいだ。


「パーティーは仕事を一緒にやるメンバーでしょ? それ以外は自由だと思う」

「お仕事以外にも一緒にいたほうが、色々とやりやすいと思います。お仕事の相談とかもしないといけませんし。それに、仕事以外で交流を図ったほうがいいと思うんです!」

「仕事の時に円滑に意思疎通するためには、日常も一緒にいたほうがいいわ。普段から交流を図って、お互いの事を知るのはとても重要だと思うわ」

「それは仕事ができない奴の言い訳だ。その人に能力があれば、交流を図らなくても仕事はできるはず。二人は意思疎通ができてないと仕事ができないタイプなの?」


 私の言葉に二人は顔を見合わせて渋い顔をした。


「私はその……落ちこぼれなので、自分の力に自信がありません。なので、しっかりと協力できるように意思疎通ができていた方が安心します」

「私は魔術師だし、前衛がいないとまともに魔法も放てないわ。攻撃するタイミングとか、お互いの動きを見て自分の動きを決めないといけないと思うの。だから、意思疎通ができるように普段からの交流は必要だと思うわ」


 結局、自分の力ではどうにかできないから仲間の力を頼りにするのか? 信じられない、そんな考えを信用するなんて。咄嗟の時にどうにかできるのは自分の力だけのはずだ。


「私は他人を頼らないからいい。二人が交流を深めればいい。私は遠慮する」

「そんなのダメよ! 折角、地球人と知り合えたのに交流しないなんて生殺しよ! 聞きたい話とかいっぱいあるのにっ……話すきっかけがなくなるなんて、なんのためにパーティーを組んだのか分からないわ!」

「そうですよ! ユイさんだけ除け者にはできません! パーティーを組んだんですから、友情も育むべきです! その育んだ友情パワーで魔王を倒して、一躍有名になって、英雄になるんです!」

「私利私欲か!」


 綺麗ごとをいうと思ったら、結局は自分の欲を満たすためじゃないか! 隠していた方がやりやすかったわ!


「私は名を上げて、家の名声を高めるために勇者候補になりました。だから、そのためには頼もしい仲間が必要なんです。ユイさんは上位職に就いているため、私の希望した以上の人です! だから、友情を育んで離れないようにしたいです!」

「私は各地にある地球の文化や食事を堪能するために旅に出ようと思ったの。それで、旅先で地球人にあったら仲良くなって色々地球のことを話で聞いたりしたかった。だから、ユイと仲良くしない選択はないの!」


 とんだ少女らに捕まってしまったようだ。向こうは仲良くする気満々で離れようとする気配は全くしない。これはこちらから何かを仕掛けないと、パーティー解散はできないぞ。


 どうやって、パーティーを解散させるか……。そんな事を考えていると、セシルが話しかけてくる。


「ユイはどうして冒険者になったの?」

「もしかして、私と同じで英雄になるためですか!?」

「別に……」

「ユイの事を知りたいわ! お願い、教えて!」

「友情です、友情を育むのです!」

「……はぁ。今までゾンビを倒して生きてきたから、そういう生き方しか知らない」


 しつこい質問に耐えかねて正直に話す。


「ユイの世界にはゾンビがいたってこと? 今まで雑誌とかで知った地球とは違う話だわ! 何々、どういうこと!? 詳しく知りたいわ!」

「それじゃあ、ユイさんはすでに戦いの中に身を置いていたんですね! これから外に出るのに、とても頼もしいです! 戦える聖女……いい、これはとてもいいですよ!」

「あー、うるさい。一度に話せる訳ないでしょ」


 適当にあしらっても、二人のテンションは上がったままだ。色々と話したそうにしているが、それを無視する。すると、セシルがこんなことを言い出した。


「そうだわ! 食事をしながら、交流を深めましょう! この王都には色んな地球食を出しているお店がいっぱいあるの!」

「地球食ですか? 私、あまり食べたことがないのですが……」

「なら、みんなが美味しいって絶賛するラーメンを食べに行こうか!」


 ……ラーメン、だと?

お読みいただきありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
これ。。。面白いな。。。斬新だ
寄生する気満々な持ちこぼれ勇者と趣味丸出しの図々しい魔法使いがゴネ得で仲間になるって……
ゼンマシマシチョモランマ!! 交流が深まる呪文である
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