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あの夏に咲いた君の笑顔に  作者: 凪野 祐介
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4月 春 講義室

あの夏に咲いた君の笑顔に 第2話

 授業の15分前に講義室へ到着した。一番乗りだった。出席を取ろうと学生証を入口のカードリーダーにかざそうとしたが、受付時間外だったことを思い出し、未遂に終わる。

 特にやることもないので席に座って本でも読もうと思った。席は真ん中の列の一番後ろを選んだ。ちなみにだが、留年生は一番後ろの席を選びがちである。これはもう、経験則として述べると、恥ずかしさ、サボりたさ、教師の目につかないための心の平穏のどれらかに起因するものであり、私の場合はサボりたさと心の平穏のために、一番後ろの席に座るのである。一番後ろの方が目立つという意見もあるが、ここではなかったことにする。

 席について、本を開き一人の世界に入り混もうとした瞬間、コツコツとこだまする音が、入口の方から聞こえることに気づき、そこへ顔を向けると、一人の女子が教室へ入ってきた。劇的な出会いのための入室、そんなものではなく、本当に自然と入ってきた。私は座ったまま、その女子の顔を見る。いかにも明るく、行動的であり、私と正反対の性格であることが、顔を見るだけで、なんとなく察せられた。

 私と同じように、束の間の静止をしたのち、今、思い出したという風に私に話しかけてきた。

「1限の半導体デバイスの講義室ってここで合ってますか?」

私は再履修であったから自信を持って応える。

「ここで合ってるよ、斉藤教授の授業ならね。」

「そうですか!ありがとうございました。」

 太陽のような笑顔で礼を言い、早々と右の列の真ん中あたりの席に座った。私は席に着くまでの一連の動作を、何と無しに眺めていた。花が風に揺れる様を連想させた。

 授業が始まった。去年と同じで第一回の講義はオリエンテーションであり、去年通りなら試験にも出ない内容なので、私は授業を聞く気が微塵もなかったため、PCで手元を隠して本を読み続けていた。途中、なんとなく件の女子へと目を見遣る。女子だけのグループを4人で構成しており、その中でスマホをいじっている。そのスマホをいじっている姿も一つの芸術作品のように完成されているように思えた。

 結局、授業中は遠目にその女子を見るだけで終わってしまった。一目惚れなのだろうか…?

2024/3/12 改題

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