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12・みんなで集まろう!(*シーナを除く)(1/3)

「それで、シーナくんは来ないことになったの?」


「はい。用事ができて」


「なんだぁ、雅樹くんの心の友でライバルのシーナくん、見てみたかったのになぁ」


「そんな、パンダじゃないんですから」


「あ、実家に帰ってたんだけど、これ、お土産に。おばあちゃんだって聞いたから、和菓子にしてみたんだ」


「……清野さん、今日、お饅頭を作るってこと、忘れてませんか?」


「あ」




 午前中の稽古を終えて、道場の前で清野さんと立ち話をしている。


 玉城さんの着替えが終わるのと、大河たちが合流するのを待っているんだけど、清野さんのお土産チョイスがよろしくないことが、今、判明した。


「餡子は多江おばあちゃんが作っておいてくれるって話、しましたよね?」


「……違う味の餡子も、味比べになっていいんじゃない?一応、地元では銘菓だし、ちょっと遠いし。

 珍しがってくれると思えば」


「……まぁ、今日食べなくてもいいですもんね」


「……賞味期限、明日までで、30個あるんだけど」


「……清野さん」


「……はい、ゴメンナサイ」


 ゆるっとしたTシャツを着て、ゆるく頭を下げる清野さん。


 うーん、大学生ってもう少ししっかりしているイメージだったのに。


 もうひとりの大学生の玉城さんは、要所要所を押さえて、テキパキとしているイメージだ。僕が道場に通い始めてから、ずっとお世話になっている。


 その玉城さんと同い年でも、清野さんは、なんていうかユルい。


「お待たせしました〜。

 ん?どうしたの?清野さん。雅樹くんにいじめてられたの?」


「いじめてません」


「お土産を用意したら、今日のお饅頭と餡子が、かぶっちゃった」


「まあ、いいんじゃないの?

 出来たてと既製品は別だし」


「……玉城さん、餡子好きでしたっけ?」


「うん!小豆大好きだから!」


 嬉しそうに笑う玉城さん。


 なんだか力が抜けてしまった。清野さんも嬉しそうに笑ってるし。


「雅樹くんは年の割りに細かいよね」


「そうですか?」


 急に玉城さんに言われて、戸惑いをおぼえた。


 玉城さんの方が合気道の先生たちへの気遣いがうまいから、僕よりも細かいと思うんだけど。


 違うのかな?


「細かいっていうか、真面目すぎるよね」


 清野さんまで玉城さんに加勢してきた。


「稽古も休まずに来てるし、休みの日だってここまで走ってくるんでしょ?

 誰かに言われたわけじゃなくて、自分で決めて」


「はあ、まあ、そうですね」


「そうそう。すごいよね〜。

 私が中2の時なんて、稽古サボりたい〜、家でだらだらしたい〜ってことしか考えてなかったもの」


「そうなんですか?」


「そうなんですよ!」


 黒髪のボブヘアが勢いよく上下に動く。


「確かに幼稚園時代から通ってるけど、それはおじいちゃんが子守りをサボりたいから一緒に連れてきてただけで、別に私が習いたいとか言ったわけじゃないの!

 中学生になって、同い年の女の子もやめちゃったし、別に道を極めたいとか言ったこともないし!」


「……なんでやってるんですか?」


「……流れで?」


「えぇ〜、なんか夢が壊れた気持ちです」


「私になんの夢を見てるのよ。

 男の子は女に夢を見過ぎよ〜。ね?清野くん?」


「えぇ〜、俺もまだ女の子に夢を見てる年頃だけど」


 しょんぼりと清野さんが答える。


「それなら夢は捨てなさい!

 その方が彼女できるから!」


 胸を張って玉城さんが主張する。何があったんだろう。


「玉城さん、何かありました?」


 つい、思ったまま口に出すと、玉城さんはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに、捲し立てた。


「なんで合気道やってるからって、私の方が力が強いと思うのよ!茶道やってるからって、必ずお淑やかなわけがないじゃない!

 なんで習い事で人を判断するのよ!」


 要約すると、夏休み中に人が足りないからと、合コンみたいなものに駆り出されたらしい。


「別に相手の男子たちもかっこよくなかったし!

 全然、いいと思わなかったし!」


 腕を組んで、仁王立ちして叫ぶ姿は、確かに強そうだ。


 でも。


「まあまあ、玉城さん」

「玉城さん、かわいいと思いますよ」


 なだめるような清野さんと声がかぶった。


 あ、清野さんに失礼だったな。一応、目上だし。


 そう思って、清野さんに視線を合わせてから、口を閉じたが、


「え、そう?かわいいかな?雅樹くん、どんな感じのかわいいが私にある?」


 と、玉城さんが食いついてきた。


「どんな感じって、何ですか?それ」


「守ってあげたいとか、愛でていたいかわいさとか、色々あるじゃない」


「えーと……こう、玉城さんは明るいかわいさですよね。

 一緒にいると元気になるっていうか」


「それって、かわいいの?」


「え?かわいいんじゃないですか?隣にいて楽しいって大事じゃないですか?」


 思わず素の反応で返した。


 すると、玉城さんは、にやにやした顔で、僕の頭を両手で勢いよく撫ではじめた。


「わあ!ちょ、玉城さん!髪がもしゃもしゃになった!」


「ふっふっふ。雅樹くん、かーわいい〜」


 もじゃもじゃになった髪を手ぐしで直していると、向こうの方から大河と悠河さんが歩いてくるのが見えた。


 僕が2人の方に向けて手を振ると、玉城さんも気がつき、


「あ!かわいい女子発見!」


 と、言って悠河さんの方に小走りで向かっていった。


 玉城さんの声が聞こえないくらいに離れると、


「雅樹くん」


 急に清野さんが低い声で僕を呼んだ。


「はい?」


 振り返ると、無言でデコピンされた。


「いったあ!」




(*´ー`*)清野さん、ちょっとだけぷんすこ。

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