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1.こんなヤンデレチョロインですが、よろしくお願いします①

 家族が留守の家の中で。

 僕とふたりきり。


 静かに鉛筆を動かす音だけが、部屋に響く。


 鉛筆を持つ僕の目の前には、体の曲線を見せつけるように、ななめに座るセーラー服の女の子が、ひとり。


「ねぇ、雅樹(まさき)、わたしのこと、好き?」


 僕を見つめながら、ほんの少し、顔を上げる。


 その動作で、金色の髪が肩からこぼれる。


 強く、僕を見つめるその目は、碧眼。


「うん、好きだよ」


 僕は陰影を出すために、鉛筆を変える。


 甘い声が、僕に囁く。


「ねえ、雅樹(まさき)……キスして?」


「うん、いいよ」


 僕は乾いた音を立てながら、鉛筆を動かす。


 目線をスケッチブックに落としたまま、顔を上げないでいると、衣擦れの音がした。


 スケッチブックの向こうからは、香る女の子の肌の匂い。


 顔を上げると、目の前には。


雅樹(まさき)、好きよ。誰にも、譲らない」


 真っ直ぐに僕を見つめる、青い瞳。


 長いまつ毛は、揺らぎひとつしない。


 僕は、口の両端を持ち上げて、にっこりと()()()()()




 途端に、崩れ落ちて床にうずくまるセーラー服。


「あああ〜!かわいい!真剣な顔からのその笑顔!かわいい〜!!」


 悶えながら近くにあった、真っ黒いウサギのぬいぐるみをつかむと、ぽすぽすと殴りはじめた。


「ねぇ、テーブルの上の花が見えないから、そこどいてよ、シーナ」


「鉛筆の持ち方がぁ、なんかかっこいい〜!」


「……シーナ、それはよくわからないよ」


 僕はテーブルに視線を向けて、近所のおばさんから貰ったグラジオラスを描き続けるが、チラチラとこちらに視線を向けるシーナが気になる。


 わざと大きなため息をついてから、シーナと目を合わせてお願いした。


「シーナの淹れた紅茶が飲みたいなぁー」


「わかった。今、準備するね!」


「あと、パンツ見えそうだよ」


雅樹(まさき)になら見られてもいいけど、まだ早い…かな?」



 てれてれと頬を染めながら台所に立つシーナ。


 金髪碧眼の幼馴染の女の子。3つ上だけど、全然そう思えない。


「ヤンデレになるんじゃなかったの?」


「うん!雅樹(まさき)好みのヤンデレになるために、頑張るね!」


 にこにこっと笑うシーナを見て、改めて思う。


「ヤンデレって言うより、チョロいヒロインっぽいんだよなぁ」


 まぁ、ヒロインが一番シーナに合っているからいいんだけど。


 僕は機嫌良く茶葉を選ぶシーナを見て、ちょっとだけ、にやけそうになる口元を左手でおおい、鉛筆を握り直した。






 シーナは、ノルウェー人とイタリア人から産まれた父と、日本人とイギリス人から産まれた母を持つ。


 青い瞳に綺麗な金髪の美少女だ。


 日本生まれ、日本育ちで、今は女子高に通う高校2年生だ。


 僕が中学2年生になった今も、幼馴染として付き合いがある。


 むしろ、シーナが年頃になればなるほど、僕とシーナの付き合いは強くなっている。


 金髪碧眼の美少女の上に、巨乳。


 毎日の登下校だけでも、変態が次々に引っかかる。


 防犯の意味も兼ねて、外出時には僕がついていくようにしている。


 もう、後悔したくないから。


 それでも数回続けて遭遇していた変態たちも、年を追うごとに見かけなくなっていった。


 時々、新手の変態が現れるが、一度遭遇すると二度と会うことはない。


 警察への情報提供が役立っているのか、シーナの友達ネットワークで通報されているのかはよく分からない。


 女子高生というだけで変態が狙ってくるらしいので、シーナの友達も防犯意識は高いらしい。


 一度、シーナの友達が変態を捕まえたところに遭遇したことがあるけれど、あれは、その、変態も可哀想にと思った。


 下半身をさらけ出していたコート男が、竹刀と薙刀と、金属バットと、ラクロスのスティックのクロスと、石膏像と、なんだかわからない金属棒を両手にと、それぞれに得物を持った女子高生たちに囲まれて正座をしていた。


 警察が到着するまで、ボソボソと彼女らが吐き捨てていた言葉は、きっとトラウマになったと思う。





 それは、ともかく。


 僕の通う中学校と、シーナの通う女子高が隣接しているため、毎日の登下校は一緒だ。


 今朝もシーナの家に迎えに行き、帰りの時間を合わせて帰る予定だった。


 そのはずだったのに。


雅樹(まさき)せんぱい、あの、いつもお世話になっているので、どうぞ」


「いや、特に何もしてないから。いいよ、気にしないで」


「でも、この間も重いものを運んでくれたし…」


 いや、あの時男子部員が僕だけだったから、自然と運ぶ流れになっていただけで、今さらお礼されるものでもない。


 今日の分の部活を終えて、美術室から出た途端に、部活の後輩に捕まってしまった。


 シーナの迎えに合わせて、今日の分の絵を描いて出たつもりだったのに、これじゃあ遅くなってしまう。


 もじもじとしながらも、一歩も引かない部活の後輩をどうすればいいのだろうか。


 1年生の頃に、安易にお菓子を受け取ったら、部活の先生に見つかって何度も怒られた。


 そもそも、学校と関係のない菓子の持ち込みは禁止されている。


 菓子を渡す側にも、受け取る側にもそれなりにペナルティを課さなければならなくなると何度も注意された。


 見つからなければいいのだが、何故か僕の場合は見つかってしまうのだ。


 隠し事が下手なんだなぁと教師には苦笑いされた。


5日連続投稿予定。

(*´Д`*)とりあえず、それできりのよい1話分になります。


*短編『金髪碧眼で美少女の幼馴染がヤンデレになろうとしているけど、どう頑張ってもチョロインすぎる』(https://ncode.syosetu.com/n3610hu/)の続きの話です。

短編未読の方は、どうぞ。(*´Д`*)読んで!

だいたいこんな感じか〜と、把握できるかと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全てのヤンデレがそうかは分かりませんが、基本、独占欲を満たしてあげれば、ヤンデレとチョロインはセットな気がするのです(笑) 短編の方を読んだ方が、連載版を楽しめると思うので、読んできます!…
[一言] 下半身をさらけ出していたコート男が、 竹刀と薙刀と、金属バットと、 ラクロスのスティックのクロスと、石膏像と、 なんだかわからない金属棒を両手にと、 それぞれに得物を持った女子高生たちに 囲…
[一言] これは修羅場の予感( ˘ω˘ )
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