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『閑話』探せ!私の新しい従魔!! 草原編

切っ掛けは、アリアの何気ない一言だった。


「ねぇラキちゃん。ウルちゃん以外にも魔物をスカウトしてみないの?」


その質問、ラキは不機嫌そうに眉間に皴を寄せ、吐き気を催したのか舌を出してえづく。


「もうあんな思いは嫌だわ……あんな獣臭くて気持ち悪い記憶は当分ゴメンよ」


そう言えば、ウルザードの記憶を読み取った時、コイツの、魔工だったか?兎に角、特殊な魔法について聞いていたな。確か、記憶を共有する事で魔物を従属させるとか、そう言った類だったか。


だとしたら、王国に攻めて来た時は、余程無理をしていたのか。懲りない性分と言い、生きしぶと言い、見た目にそぐわず案外タフなのかもしれない。


「でも、ウルちゃんだけだったら頼りないと思うんだけどなぁ」

「そんな事無いわ!!やれるわよねウルちゃん!!」

「ピィィィ……」


肝心のウルちゃんは、頭の三角帽子の中でブルブル震えてるんだが?


それは兎も角として実際、アリアの案も悪くはなかった。


こんな厄介毎だらけのメンバーに加えて、魔王軍幹部を自称するラキを連れているのだ。デカい荒事の一つや二つ、己の力で乗り越えるぐらいの戦力は持っていてもらいたい。


「良いんじゃないか?手始めにそこら辺の魔物でも従えて来いよ」

「えぇ……だから言ったじゃないの。嫌よ」

「無能に食わせる飯はありませんよ。文句言わずにやりなさい」

「わ、分かったわよ……」


ミレーヌの視線だけで刺し殺さんばかりの眼光を受けて、渋々と言ったようにラキが頷く。


「よろしい、ではシヴァル。近くに魔物は居ますか?」

「それなら丁度良いのが居るぜ。あっちだ」


シヴァルが指差す向こう側に居るのは、額から立派に生えた二つの角が捻じれ合って巨大な一本角になっている、黒肌と白い毛並みをした、如何にも屈強な馬型の魔物が草をムシャムシャと食べていた。


「おぉ、アレは『ネジレバイコーン』か。こんな所に居るなんて珍しいな」

「ネジ……バイ……それが、あの魔物の名前かしら」


滅多に見ないネジレバイコーンに俺が感心していると、ラキがイマイチピンと来ないと言ったように、頭を斜めに傾ける。


「魔物操る癖に、魔物に付いて詳しくないのかよ」

「う、うるさいわね!魔物なんてそこら中に居るんだから、手あたり次第に捕まえていればいいのよ!!」

「何だ、そのガバガバな論理」


こんな頭の弱い奴に、王国が危機に晒されていたとは、頭の中であの爺の情けない面が浮かび、思わず頭が痛くなる。


だからと言って、これから従えようとしている魔物の知識すら知らないのは、幾らラキであっても流石に不味いだろう。


しょうがないので、俺の主観が入るが説明してやるとするか。


「名前の通り、二つの角が捻じれて一つになってるから『ネジレバイコーン』って名前だ。普段はこんな草原じゃなくて、山岳の方に居るらしいが、お前の所の陰険野郎が連れて来たんじゃないのか?」

「クロックスね……アイツ、また会ったら、今度は拳を構えてやるわ……」


シュッシュッと空に向かって右こぶしを打つ練習をするラキ。それも遥か上空から落ちて生きていたらの話だが。まぁ、俺も生きているとは思うが。


あの時、クロックスが連れて来ていた魔物の軍勢は、明らかにここら辺の魔物ではない奴も混じっていた。あのネジレバイコーンも大方、ウルザードにビビッて逃げ出した残党だろう。


構わず、俺はネジレバイコーンについての説明を続ける。


「性格は狂暴で、人間だろうが魔物だろうが、見境なく襲ってくるヤバい魔物だ。攻撃は突進と角で薙ぎ払い、それと後ろ蹴りぐらいか?方法は単調だが、あの角で突進されようものなら鉄だろうが穴が開くし、後ろ蹴りでも肋骨が全部折られるぞ」


一度、ネジレバイコーンに運悪く遭遇した賞金稼ぎ共バウンディ・ワーカーズの死体を見たことがあるが、その内の一人が何時も自慢していたフルプレートのド真ん中に大きな穴が開いていた。


もしも、あの角を真正面から受けるとなれば、よっぽど頑丈でもない限り、物理的な防御ではなく魔法で障壁を張らなければ、そのまま串刺しにされるだろう。


「よぉし、捕まえて来たぜ!コイツぁ随分と活きが良い魔物だぜ!!」


最も、シヴァルに関して言えば、例外中の例外だが。いつの間にか、シヴァルはネジレバイコーンの丸太の様に太い首を脇で絞め上げて捕獲していた。


「ありがとうシヴァル!でも間近で見ると結構大きいねぇ」

「中々の暴れ馬でな!殺せねぇのは惜しいが、捕まえ甲斐がある奴だぜコイツァ」


アリアが近づいて、筋骨隆々な黒い肌を触ると、途端にネジレバイコーンが地団太を踏み荒らしながら、激しく暴れ出す。しかし、シヴァルがキュッと脇を一層締め上げると、酸欠を起こしたのか、直ぐに大人しくなった。


「この様子なら、触れても問題はなさそうですね。ではどうぞ」

「わ、分かったわ。ちゃんと抑えときなさいよ!!」


ミレーヌに急かされ、恐る恐ると言った様子でラキがネジレバイコーン身体に少し触れる。


そして数秒もしない内に、まるで汚物を触ったかのように短い悲鳴を上げて腕を弾き上げた。


「どうしたのラキちゃん?このお馬さんは大人しいよ?」


何があったのやらとアリアが聞いてみると、口に出すのも悍ましいのか、少しだけ口元を掌で隠した後、震える声でこう言った。


「こ、この馬、角を刺すのを性行為だって思ってるみたい……『俺は人間だってかまわないでヤッちまう魔物なんだぜ』って、頭の中そればっかりよ」


……この場の全員に沈黙、そしてミレーヌが一言。


「シヴァル、その馬を絞め殺しなさい」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「……あの馬の事は忘れようぜ」

「そうね」


そうは言うが、俺に返事をするラキの目線は真反対の方向を向いている。


あの馬のせいで、俺達の間に何故か微妙な空気が流れてしまっていた。クソ……今度からネジレバイコーンを見つけ次第、即刻処分してやる。


そんな事を心に決めていると、シヴァルが遠くの方へ目を凝らしながら、間延びした声で聞いてきた。


「大将よぉ、この先にデケェ森が見えるけど、どうすんだ?」


ネジレバイコーンを最初に見つけた人物は『アヘ・ターン』というガチムチの冒険者らしいです。

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