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プロローグ:『テルモワール王国の勇者史』1p目より

注意:ほぼ地の文です。

かつて、まだ人間が国という概念を持たぬ時代、この広い大陸は魔王の手によって支配されていた。


その魔王をかつて目の当たりにした者からは、神すらも打ち滅ぼす存在。生きとし生ける生物を一人で殲滅できる者。世界を終末に導く使徒など、その強大すぎる力に対して、もはや伝説上の存在を引き合いに出し、非現実的な比喩が用いて称されるほどである。


とは言え、実際に魔王が自ら力を誇示したという記録は、意外なほどに残されていなかった。一度振るえば、全てを消してしまう故か、それともただの歴史家達による誇大表現なのか、それは分かってはいない。それでも、魔王という存在が大陸を支配し、当時の人類を支配し、虐殺を繰り返していたことは、当時の文献や今でも残る聖遺物、記録から導き出された紛れもない事実であった。


しかし、魔王の時代が永劫に続くことはなかった。大陸に住む一人の人間が、魔王の心臓に聖剣を突き刺した。


その時から、魔王の時代は終わり、人の時代が始まった。


人々は魔王を討ち取った人間を勇者と崇め、その者の元に多くの人が集まった。そして人が増えるにつれて、次第に村や町といった枠組みが生まれ、やがては国という大陸全土を覆う巨大なシステムを築き上げた。


だが、勇者は人間である。人間であるが故に年を取り、最後には寿命を迎える時が来る。

もしも、勇者が居なくなれば、勇者の名の元に築き上げられた国は崩壊し、戦乱の世が来てしまうのではないか、年老いた勇者が病に伏した時、多くの民たちがそう考えた。


そこで、勇者は晩年には、このような言葉を残したのだ。


『我が聖剣をこの玉座に刺す。これを引き抜いた者こそが、次代を担う勇者である』


その言葉の通り、勇者が亡くなった次の年には、ある一人の人間が玉座から聖剣を引き抜いた。そして、その勇者は晩年には剣を玉座に刺し、亡くなった次の年には、また別の人間が聖剣を引き抜いた。


その循環は例え時代が変化しようと、戦乱で国が割れようとも、受け継がれていき、いつしか、勇者を選別する儀式として形式化することになった。


この事から、勇者という存在は人間を守る剣から、国を治める王としての側面が強くなり、そして今日まで大陸一の国家として名を馳せる王都『テルモワール』を統治する勇者が生まれた起源である。


そして、第35代目勇者『ヨハネス・ブルース』改め、『リュクシス・カムイ』の物語の序章でもあった。


稀代のロクデナシであると共に、勇者として選ばれたリュクシスと、偶然にも出会ってしまった同じロクデナシ達。


彼らが紡ぐ物語、その逃避行譚には、どれほどの価値があるのだろうか。

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