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風のノスタルジア

作者: zig

 暗い部屋でひとり 膝を抱えていると

 どうしようもなく自分が ちっぽけな存在に思えてしまう

 

 カーテンも引かない窓からは レース越しに月が手を差し伸べてきて

 「外へいこう」と誘ってくれるけれども 今の僕はそんな気分になれない


 寂しい時に思い出すのは 決まって笑顔でいられた時のこと

 涙が出そうなほど楽しかった時間から離れて ずいぶんと遠くまで来てしまった

 

 今近くには誰もいない 流されるように生きてきた自分には これからの空白がたまらなく怖い

 それでも生きていかなくちゃいけない ドロップアウトを選ぶ勇気 きっとしばらくは握れない


 子供の頃 銀色に輝く包丁を手に取り にらめっこした夜のこと

 そうやって使うもんじゃない と心の中で声がしていた

 ろくでもない未来になることはわかっていたけれど どうしていいかはわからないまま

 予感だけが明らかな存在感を放っていた


 あぁ 今 なにもかもまっさらな心のままで外に出て あの頃の風に吹かれてみたい

 広がる緑を波立たせて 僕の隣を駆けていく どこまでも自由な夏過ぎた風

 身体を覆うあの瞬間だけ 君の姿を見た気がした

 

 今も変わらない風が 空の下で吹いているはずなのに どこかよそよそしい気がするのは

 やっぱり僕が変わったせいなのか……


 よそう 今は時間がない

 考えるべきことと やらなくちゃいけないことは 

 寝ていても覚めていても 確かな足取りで追いかけてくる

 

 それが大人 本当はやらなくていいことまでやらなきゃいけないのが大人

 でもたまに 本当にやりたいことをやりたいままにできるのも大人

 だからこそ 生きていけるのかもしれない

 

 理由はもっとシンプルでいい 猫のように 犬のように


 そしていつか 同じ時間を過ごせるようになった時には

 公園の芝生で 陽の当たる草原の中で

 あの時の風を感じながら

 君と寝ころんで 昼寝でもしよう

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[一言] 情感こもってます。 生きていきましょうか。
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