-第一章八節 寝起き美女とメイドアムネスと表彰式-
{………ううええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?…
誰誰誰誰!?…ほんとに誰!?…
どうしてこうなった!?…
何が如何なってこうなった!?…え?…
ゲーム始めて一人回想から戻って来てみれば!…
ナイスバデーのチャンネーが隣で同衾してるんだが!?…
確かにこれはラッキーっちゃラッキーだが!…
違う意味で怖いわ!?…
てか、本当に如何なってんだ!?…
ここって王城だよな!?…その手の奴じゃないよな!?…
と言うよりこのゲーム全年齢対象だから
そう言うのは!!…}
「んん…何だ?…何がさっきから動いているんだ?…
私はまだ眠いのだが?…」
マサツグが隣で寝ている金髪美女にただ一人心の中で絶叫・本音・困惑をして居ると自分が気付かない内に体が謎のマナーモードになる。それは恐怖から来ているのか動揺から来ているのか…或いは両方か?…とにかく自分でも分からないまでに困惑し震えて居ると、その振動で目を覚ましたのかその金髪美女が寝ぼけた様子で呟いては体を起こし始める。その様子にマサツグが更に困惑しては振動が止まり、今度は微動だにせずに固まって居るとその金髪美女は辺りを見渡し始める。
「……あれ?…ここは、確か…何でここに?…
でも…確かにベッドには……?…」
「お…おはようございます…」
「………。」
金髪美女が眠い目を擦りながら部屋の中を確認して居ると何かが違うと感じたのか何度も辺りを見渡し、そしてベッドに有る物で確認をしようと考えたのか金髪美女がベッドの方に視線を向けると、ベッドで横になっているマサツグを見つける。そして見つかったマサツグが恐る恐る金髪美女に挨拶をすると、金髪美女はマサツグを寝ぼけ眼で凝視したまま沈黙し、その様子をマサツグがただ困惑した様子で固まって居ると徐々にその金髪美女が目を覚まし始めては顔を赤くし、目を見開き始める!
「……ッ…ッ!……ッ~~~~~!!!!」
「え?…えぇ~っと?…」
「き!…」
「き?…」
目の前で金髪美女が徐々に目を覚まし、その様子にマサツグがこの後の展開を読んでは戸惑って居ると、お約束とばかりに顔を赤くしながら引き攣らせて一言呟く。その呟いた一言を復唱しマサツグが戸惑い続けて居るとその金髪美女は左手でシーツを手に取っては自身の体をマサツグから隠し、右手で握り拳を作って構えると城中に響く勢いで悲鳴を上げながら腰を大きく捻り、大きく振り被って横になっているマサツグ目掛けてキレの良い右ストレートを繰り出す!
「きぃやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
__グッ!…フォン!ドゴス!!!…
「グハアッ!!」
金髪美女が放ったそのキレの良い右ストレートは見事にマサツグの鳩尾を貫き、ゲーム開始…起きて早々にHPの7割を持って行く!そしてそのキレの良い右ストレートを貰ったマサツグはと言うと目が飛び出そうな勢いで苦痛の声を挙げてベッドに蹲り、小刻みに痙攣して必死に痛みに耐える。しかしそれでも金髪美女に気は収まらないのか、痙攣するマサツグを前に顔を赤くしたまま指を差してはマサツグに文句を言い始める。
「な!…何故貴様が!?…如何して!?…
何故貴様がこの部屋に居るのだ!?…
昨日までここは空き部屋だったろう!?…
何故ここで寝ている!?!?…」
「…ッ~~~!!!…
な…何故と言われましても…
王妃様にこの部屋に泊まれと言われたから…」
「なっ!?…母上が!?…
ッ!!…ははうえ~~~!!!…」
{…あ~!きっつ!!…朝から良いの貰っちまったよ…
てか朝から七割持って行かれるとか相当ヤバいだろ…
…にしても…どうやったらあんなか細い腕で…
凶悪な技(スーパー鳩尾クラッシュ)を…}
金髪美女自身かなり困惑した様子でマサツグに文句を言いつつ質問をし、その質問にマサツグが蹲りながらも金髪美女の質問に正直に答えると、その質問の答えを聞いて金髪美女は戸惑いながらも納得する。何故か妙に納得した様子でアネムスに対して怒りを燃やした表情を見せて居ると、マサツグは蹲りながらも改めてその金髪美女の姿を目にする。顔は王妃様に似ており、綺麗に整った西洋風…分かり易く説明すると某狂気染みた幼女軍人を大人にした感じに似ており、目はサファイアブルーと綺麗な色をしていて、髪は朝日に照らされキラキラと輝く位の綺麗な金髪、長さは腰辺りまではゆうに有り正確な長さは分からず、金髪美女の身長は165位だろうかマサツグよりは低い。そして何より驚かされたのはその見事なグラマラスプロポーション!…シーツで自身の体を隠しつつも日の光で透けて体のラインがハッキリと投影されており、マサツグはそれに気が付くと慌てて視線を逸らし、金髪美女をマジマジ観察するのを止める。そうして部屋の中が一時騒然とするも落ち着きを取り戻し、ハァ…と一息吐いて居ると部屋の外から慌ただしい足音が聞こえて来る。
__ガッシャガッシャガッシャガッシャ!!!…
「……ん?…この足音は?…」
__バアァン!!!…
「一体何の騒ぎだ!……っと、冒険者殿に…姫君?…」
「こちらが聞きたい……ん?姫君?…」
部屋の外からは鎧甲冑を纏った者が走って来ているのかガッシャガッシャと足音が聞こえ、その足音にマサツグが蹲ったまま何か事件でも有ったのかと考えて居るとその足音はマサツグ達の部屋の前で止まり、ノックも何もないままに扉が勢い良く開かれてはラインハルトが険しい顔をして部屋に入って来る。そして部屋にマサツグとその金髪美女以外誰も居ない事を確認するとラインハルトはスッと落ち着いた様子を見せ、次に不思議そうな表情を見せては一言マサツグと姫君とだけ言っては困惑し始める。そしてそのラインハルトの言葉にマサツグがツッコミを入れるもその言葉に違和感を覚え、少し間を置いてからへ?…っと戸惑った表情を見せて尋ね返すと、その姫君と呼ばれた人物がラインハルトに文句を言う。
「なっ!…師匠!!…
これは如何言う事ですか!?…
何でこいつが私の部屋の隣に
泊まっているのですか!?…」
「知らん!!…
そんな事王妃様に聞いてくれ!…
ワシだって今来てみれば何やら
早速問題が起きたようだしな!…
それにあの人が考える事は
ワシには良く分からんのだ…」
「そんなぁ~!!…
師匠はお母様とよく一緒に冒険した仲じゃ!!…」
「ちょ、ちょっとタンマ!!…
その前に一つ確認させてくれ!!…
…もしかしてアンタ…ハイドリヒ?…」
ハイドリヒが慌てて戸惑った様子でラインハルトに文句を言っては、ラインハルトが一言でバッサリ斬り落とし、アネムスの事を良く分からないと話すと自分も手を焼いて居ると言った様子で呆れ果てる。その際後ろにラインハルトの部下であろう兵士が槍を手に困惑しており、如何したものかと後ろでヒソヒソと話して居るのだがハイドリヒは周りの目などお構いなしにラインハルトに嘆いては更に訴え掛けようする。しかしここでマサツグがこれ以上は状況を理解出来ない言った様子で待ったを掛けると痛みが治まったのか体を起こし、まず金髪の美女がハイドリヒであるかを確認するとその確認にハイドリヒは不思議そうな表情をしてはマサツグに嫌味を言うと同意する。
「……?…
他に誰が居る?…
昨日負かした奴の顔など
覚えていないと言いたいのか?…」
「ッ!?…」
「……?」
{な!?…マジか!?…
一体どうやったらあのフルフェイスヘルムに
その長い髪を仕舞う事が出来るんだ!?…
更に言うとそのダイナマイトボデーをどうやってあの
フルプレートアーマーに仕舞い込んでいるんだ!?…
…正直本人よりあの鎧甲冑の方が気になって来たぞ?…}
ハイドリヒが当然とばかりに返事をし、その答えを聞いたマサツグが驚いた様子で固まって居るとその様子を不思議そうにハイドリヒが見詰める。そしてマサツグは完全に混乱をしているのかハイドリヒより鎧甲冑の方が気になり始め、その驚いた表情のままハイドリヒを凝視して居ると、ハイドリヒが不機嫌そうな表情をしてはマサツグに声を掛け始める。
「…何だ?…さっきから人の事ジロジロ見て!…
そんなに私の事が気になるのか?…」
「え!?…あ、あぁ…スマン……
色々と気になった事が有って……
…にしても改めてお前の事を見たら…」
「……?…見たら?…」
「可愛いなと…」
「……ッ!?!?!?!?…」
ハイドリヒがマサツグに見られている事が不快そうに言っては自身の体にシーツを巻き付ける様に隠し、威張って見せるとその様子にマサツグがハッと気づいた表情をして見せて謝る。そして何も考えずに言い訳をし始めて、その言葉にハイドリヒが気になった様子で復唱し、次にマサツグが素直に思った事を口にすると周りで様子を見ている者がいる中、ハイドリヒはピタっと固まって見せては一気に顔を真っ赤にし、ワナワナと震え始めては声にならない声を挙げ始める。その際完全に油断し切った表情でマサツグを見詰め、マサツグの言葉にラインハルトは笑みを浮かべるとマサツグを茶化し始める。
「ッ!…ほほぅ!…冒険者殿!…
中々言うではないか?…」
「……え?…あっ!…あぁ~っと…」
「ッ~~~~!!!!…もういい!!…」
__ヒタッヒタッヒタッヒタッ…ピタッ…
「…それよりもだ!!…
き…貴様…何もしていないだろうな?…」
ラインハルトに茶化されマサツグが困惑するもハイドリヒの様子を見てハッ!とした表情を見せる。何故なら目の前に若干恥ずかしそうに眼に涙を溜め赤面してはマサツグを睨み付けるハイドリヒの姿が有ったからである。その様子にマサツグが如何したものかと言葉に詰まって居ると、ハイドリヒは居た堪れなくなったのか少し怒った様子で一言マサツグに言っては部屋を後にしようとし、ラインハルトの前まで歩いて行くと突如足を止める。そしてマサツグの方に振り返り、やはり恥ずかしそうにしてはマサツグに質問をするのだが、その意味を分かって居ないマサツグは困惑した様子で返事をする。
「……は?…」
「ッ~~~!!!…
だから寝てる間に私に如何わしい事を
していないだろうな!?」
「……はぁ~!?…ちょっと待て!?
今さっき起きて良い右ストレート
貰ったばかりだよ!!
何もしてないしてない!!!」
マサツグが何も分かって居ない様子で返事をした事に怒りを覚えたのか、ハイドリヒはグッと歯を喰いしばって見せては顔を赤くし、更に怒った様子でマサツグに文句を言うとその文句にマサツグが慌ててツッコミを入れる。起きたばかりで何もしていないと身振り手振りで必死に無実を訴え、そのマサツグの反応を見てハイドリヒが腕を組んでマサツグの方に体ごと振り返るとその言葉の真意を問う様にもう一度質問をする。
「ッ!!…本当だろうな?…もし嘘だったら…」
「……だったら?…」
「お前を晒し首にして私は引き籠ってやる!!…」
「ア…アイアムジェントルメン!!」
マサツグに質問をする際…嘘を言えばとハイドリヒが若干間を置いて脅しを掛け、その脅しの言葉にマサツグが戸惑いながらも復唱すると、ハイドリヒは一騎打ちの時より更に殺気を帯びた目でマサツグを睨み付け、一言マサツグに極めつけの脅し文句を残してはラインハルトの隣を通り抜けて自室に戻ろうとする。その一言とハイドリヒの本気の目にマサツグが恐怖を覚えると慌てた様子で片言英語で返事をしてハイドリヒの後ろ姿に敬礼をすると、部屋を出て行く間際…ハイドリヒは振り返る事無く一言口にすると部屋を出て行く。
「そうか…ならいい。」
__ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…
「…だあぁぁ~!!…し…死ぬかと思ったぁ~…」
ハイドリヒが静かにマサツグ達の居る部屋から出て行くとその足音が聞こえなくなるまで緊張は続き、聞こえなくなると漸く解放された様子でマサツグがベッドに砕ける。バタッ!と倒れては妙に緊張したせいか息を切らし、そして一言漏らして居るとその様子をさも面白そうに笑っているラインハルトがハイドリヒとマサツグの様子を見ては話し始める。
「そうか?…
あの様子だと満更でも無い様に見えたんだがな?…」
「えぇ!?…」
「ハハハ!…まぁ何事も無くて良かった!…
この後表彰授与式は、玉座の間にて行う。
準備が出来たら使いの者に伝えると良いであろう。
それではな、冒険者殿!」
ラインハルトの一言にマサツグが戸惑いの声を挙げ、更にラインハルトがおかしそうに笑うとこの後の予定をマサツグに伝える。玉座にて授賞式をする為、部屋の外に使いの者を待たせると言ってはラインハルトも部下を連れて部屋を後にし、漸く一人になった所でマサツグが朝から何でこんな事になったんだ?と思いつつ、次第に考えるのが面倒になって居るとただただ溜息を吐いては支度を済ませる。そうして支度を済ませて部屋を出るとラインハルトが言っていた通り、廊下では使いの人…メイドさんが立って居るのだがそのメイドさんは何処か見覚えが有り、マサツグが嫌な予感を感じて居るとそのメイドさんから開口一番トンデモナイ一言が飛び出す!
「…昨夜はお楽しみの様でしたね。」
「ゴフッ!?…なっ!?…は!?…と!?…
ちょ…ちょっと待って!?…違います!誤解です!!」
「あら?…
てっきり私はクッコロプレイを楽しんでいるのかと…」
「ッ!?…何て事を口にしているんですか!?!?…
…はあぁ~…もう!…
…で、何故貴方が此処に居るんですか?…王妃様?…」
会って早々にメイドさんからハイドリヒとの関係をツッコまれ、マサツグが驚いて吹き出すとその瞬間こんな事を言うのは!!…とメイドさんの正体を理解し、慌てて誤解だと訴え掛ける!しかしそのメイドさんはマサツグの言葉につまらなさそうに返事をしては更に爆弾発言を口にし、マサツグが更に慌てた様子でツッコミを入れると一際大きな溜息を吐いて、メイドさんの正体を改めて看破する。するとそのメイドさんは口に手を当て、驚いた様子を見せてはマサツグにこう答える。
「あら、バレてしまいました?」
「……逆に聞きます…
何故それでバレないと思ったんですか?…
ましてやそんなヤバイ問い掛けが出来るのは
アナタだけでしょ!?…」
「…ふむふむ…観察眼も多少有り…っと…」
「何をメモしてるんですか?…はぁ~…
それより、いいんですか?…
一国の姫が冒険者と一夜を共にしたとか!…
良からぬ噂が立ちますよ?…」
まるでバレていないと言った様子でアムネスが恍けて見せるとその反応にマサツグが呆れて見せてはツッコミを入れ、更にその爆弾質問を出来るのはアンタだけだと少し興奮気味に指摘すると、アムネスはしれッとした表情で突如メモを取り出してはマサツグの言葉と観察眼に関心を持った様子でメモを取り始める。そんなアムネスの様子にマサツグが戸惑いつつも溜息を吐き、先ほどの出来事が悪い噂になるのではと心配した様子見せつつも意地悪のつもりで話すのだが、アムネスは慌てる様子を見せる所かメモを取り終えると逆に笑って見せ、マサツグをその玉座の間へと案内し始める。
「…ではこちらへ……」
「へ?…あっ…はい…」
__コッ…コッ…コッ…コッ…
{…やっべ…怒らせちったか?……
まぁ、確かに普通に考えれば今のは地雷発言だよな?…
失敗、失敗…}
アムネスからの答えも無く突如玉座の間への案内が始まり、その様子にマサツグが戸惑いながらも返事をすると無言で歩き始める。そのアムネスの様子にマサツグがさすがに言い過ぎたかと言い過ぎたか?と後ろを歩きながら心の中で反省して居ると、アムネスは少し歩いてから突如思い付いたかの様に歩きながらマサツグに話し始めるのだが、その一言にマサツグが戸惑う!
「…ちなみにさっきの答えですが…
いっそその冒険者とあの子を
結婚させちゃいましょうか?」
「え!?…」
「別に不思議な事ではありませんわ?…
それ相応の事をしたのならケジメを付けて頂く…
相応しくなければ消えて貰いますし…
問題が無ければそのまま結婚を…」
「いやいやいやいや!!不味いでしょう!普通!!…
だって一国の王女と冒険者が結婚って!…」
まさかの答えがアムネスの口から飛び出し、マサツグが狼狽えていると更にアムネスは続けて自分が考えたであろう答えを淡々と迷う事無く口にして行く。そのaggressive!な発言にマサツグが戸惑い、慌ててそれは!?とツッコミを居れるのだが、アムネスはキョトンとした表情でマサツグの方に振り返ってはもはや躊躇うと言う言葉は無いのかと思う位に衝撃のcoming out!をする!
「あら、そうかしら?…
だって私も元は冒険者ですもの…」
「…はぁ?……」
{…今のは聞き間違い?…だよな!!…
まさか王妃様が元冒険者で…王様と結婚とか!…
そんな小説みたいな話が!…}
アムネスが自分の過去をマサツグにチラッと暴露すると、マサツグはその言葉に自身の耳を疑う。戸惑いの声を漏らしては頭の中で聞き間違いとしか信じられない様子で思考を駆け巡らせ、他の可能性など考えられないとその考えのまま納得しようとした次の瞬間、アムネスはジッとマサツグの戸惑う顔を見詰めてはまるで心を見透かした様に妖しく微笑むとマサツグに話し始める。
「あら?…聞き間違いじゃなくてよ?…
私は元冒険者…
これでも有名な冒険者だったのですよ?…」
{ッ!?…心を読まれた!?…
俺!…聞き間違いって口にしてないよな!?…}
「ふふふ!…懐かしいですわぁ~…
いつも討伐依頼ばっかり受けて…
ラインハルトと一緒にオーガの群れに突貫して行ったり…
山から降りて来て暴れ回っていたドラゴンと戦ったり…
今でもあのクレイモアが残って居れば
まだ戦える気がしますわぁ~…
私より大きくてお店なんかに入る時苦労はしたけど…
…本当に…あの頃はヤンチャばかりで…楽しかった…
…あっ!…今も楽しいですわよ?…ただ……
こうして家庭を持つとは思わなかっただけで…」
「………。」
アムネスがマサツグの心を読んだ様子で再度自分が冒険者である事を肯定すると、マサツグは自身の心を読まれたと困惑してはワタワタとし、そんなマサツグを尻目にアムネスが懐かしむ様に自身の過去を思い出しては武勇伝を軽く話し始める。そしてその話から分かった事はアムネスは自分の身の丈よりデカいクレイモアで活動しており、オーガやドラゴンと言った中~上級モンスターを相手に賞金稼ぎをしていたモンスターハンターをやって居た事、更にその同僚としてあのラインハルト将軍も絡んで居た事が分かり、当時どうやって王様と知り合って結婚したのかと驚かされる内容であった。今では何処を如何見ても貴婦人にしか見えない姿で歩いており、本当か如何かが分からないと言った様子でマサツグが呆然としながらアムネスの後を歩いて居ると、アムネスが最後にマサツグがビクッとなる言葉を口にする。
「……今でも…貴方位でしたらお相手出来ますわよ?…」
「ッ!?…つ、謹んで御遠慮させて頂きます!!!!」
「まぁ!…うふふふ!…それは残念ですわ?…」
アムネスがマサツグの目をチラッと見てはまた妖しく笑みを浮かべ、まだマサツグ位なら…と戦える事を口にするとその言葉を聞いた瞬間、マサツグの背筋に冷たいモノが走って嫌な予感も感じ取り、その気配にマサツグはすかさず足を止めてアムネスに腰を九十度に腰曲げ、丁重にお断りをする。そのマサツグの態度を見てアムネスが何故か嬉しそうに驚いては笑みを零し、残念と口にするのだが本当に残念と思っているのか分からないマサツグは困惑しながらも頭を上げると、再び玉座へと向かい歩き始める。そうしてもう直ぐ玉座に付くと言った所でマサツグが前々から気になっていたとばかりにある事を尋ねる。
「…一つ質問しても良いですか?…」
「どうぞ?…」
「何でメイドの格好になっているんですか?…
別に王城内のメイドが足りていないって
訳でも無さそうですし…っと言うより…
王妃様がその恰好をしている事自体が
珍しいかな?って…」
マサツグは質問が有ると不思議そうに尋ねてアムネスが了承し、その了承を得て漸く前から気になっていたメイドの格好について質問をする。その際自分が感じた疑問点などを少し踏まえて話し、別にそんな恰好をしなくても良いのでは?…と戸惑った感じでアムネスに尋ねると、アムネスはマサツグの質問を理解した様子で頷いてはその質問に簡潔に答える。
「あぁ…これは私の趣味ですわ。」
「ッ!?…」
「私、ジッと出来ない性分ですの。
ですからメイドの格好になって
他のメイド達と炊事洗濯掃除を
して過ごしていますのよ?…
これでも他のメイドに負けない位に
動いていますの!…
それにこの格好をして居れば色々と…
他のメイド達の話も聞けますし♪…
…でも…皆さん私が作業をして居ると
私から仕事を取る様になって……
最近は不完全燃焼気味なんですの…」
「そ、そうなんですか…あ、あはははは…」
アムネスの口から衝撃のcoming out!part2が飛び出しその言葉にマサツグが驚いて居ると、アムネスは自分の日常がメイドと語るよう自分のやっている仕事が楽しいと、嬉々として話すと笑みを浮かべる。しかし…幾ら好きとは言え相手は王妃様…仕事を取られると嘆いているアムネスの後ろでは妙に使用人達の苦労が透けて見える様な気がし、アムネスの話にマサツグが相槌を打つも使用人達の方に同情する。そうしてアムネスと話している間にマサツグ達は玉座の間に辿り着き、マサツグが扉の前に立つとアムネスが導く様に扉を開けては中に入るよう声を掛ける。
__コッ…コッ…コッ…コッ…
「…着きましたわ…」
__ガチャッ!!…ギイイィィィィ!!…
「さぁ、中へ…どうぞこちらに…」
アムネスに扉を開けて貰い、マサツグが緊張しながらも玉座の間へ一歩踏み入れるとまず目に付くは高い天井に如何やって取り付けたか分からない長ぁ~い旗、そして玉座に向かい一直線に伸びる赤い絨毯にその間を挟むよう一糸乱れぬ整列をして見せるた騎士達、その騎士達も自分の顔の前に剣を構えては微動だにせず構え続け、そんな様子に緊張しながらマサツグが絨毯の上を歩いて行くと、王と王妃の玉座の後ろに庭園が有るのかその玉座同士の間から綺麗に咲き誇る花の庭が見えて来る。中でも目を引くのはその庭に堂々と聳え立ち、見事なまでに満開の花を咲き誇らせる桜の木が植わって居る事であった。そして更に驚くはその桜の木が異様にデカく、現実でもテレビで見る物より二周り位大きな幹をして居る事であった。そんな大輪の花束の様な桜の木に吸い寄せられるようマサツグがジッと見詰めて玉座に向かい歩いて居ると、ラインハルトの咳払いが聞こえて来る。
「…ンン゛!!!…冒険者殿?…」
「え?…あぁ!?…」
「あははは…」
「す…すんませ~ん!!!…」
マサツグがラインハルトの咳払いと呼び掛けで意識が戻り、ハッ!と辺りを見渡すと目の前には王様が苦笑いをして立っており、ラインハルト将軍はマサツグを見詰めては呆れた様子で笑みを零す。そして王様の隣にはいつの間に着替えたのかアムネスが立っており、マサツグの事を見詰めては無理も無いと言った様子で同じく笑っていた。そんな様子をマサツグが目の当たりにすると慌てて後ろに下がり、恐らくここで待てと言った様子でアイコンが有る場所に立つと、マサツグを待って居た様子を見せる他のプレイヤーがマサツグを笑っていた。そんな様子にマサツグが恥ずかしそうに顔を赤くして縮こまって居ると、気を利かせた王様がマサツグに桜を示すよう手を広げては話し始める。
「どうです?…綺麗でしょう?…」
「は、はい!…とっても!…」
「あははは!…僕もそう思います…
君にもこの桜の良さが分かって頂けた様で何よりです…」
「さ…先ほどは如何も……」
マサツグに桜の事を聞いては笑みを浮かべて尋ね、その問い掛けにマサツグは緊張しながらも素直に返事をすると、王様はまるで自分の事の様に笑って見せては喜ぶ姿を見せる。そして振り返りマサツグ同様に桜を見詰めては笑みを零して居ると、マサツグが謝ろうとするのだがそれを遮る様にラインハルトが玉座の間に軽く響く程度に声を張り上げて高らかに宣言をする!まるで謝らなくても良いとラインハルトがマサツグに目配せをし、それに気が付いたマサツグがスッと下がると授与式が始まる。
「それでは、表彰授与式を行う!!!…
受賞者は前へ!!…」
__コッ…コッ…コッ…コッ…
マサツグ同様受賞者一人一人が玉座の前に立つ王様の前に傅いては賞品と温かい言葉を受け取り、後ろに下がる。剣士・戦士・魔法使い…中には将軍の部下なのか同じ様に黒い鎧を身に纏った騎士まで居り、その様子はまさに十人十色。見た所受賞者はマサツグを含めて約二十数名と言った所か、とにかく何の問題も起きる事無く執り行われ、遂にマサツグの番が来ると将軍がマサツグの名前を呼ぶ!
「では次!!…冒険者マサツグ!!…前へ!!…」
__コッ…コッ…コッ…コッ……スッ…
「貴方は御前試合で騎士団長との一騎打ちの戦いにて
激戦を繰り広げ…見事打ち勝ち!…
勝利を収めた事を此処に評します…」
ラインハルト将軍に名前を呼ばれてマサツグがゆっくり玉座へと歩いて行くと、目の前では王様・アムネス・ラインハルトが優しく微笑んではマサツグを迎え入れる。今までの受賞者同様にマサツグが王様の前で傅き、王様から賛辞の言葉を賜るのだが、突如王様がマサツグの耳元に顔を近づけては何やら話し始める。その様子は他のプレイヤー達の目にも映るのだがその内容は全く聞こえて来ず、何を話しているのかと不思議がって居ると王様はマサツグに謝罪するのであった。
__……スッ…
{それと…私の娘が君に迷惑を掛けたみたいだね?…
話しは全部…妻から聞いているよ?…
多分君に反発された事が嬉しかったのかな?…
本当に申し訳ない…彼女の事を許して欲しい…}
「え?…」
「…ではこれを…」
「あっ…ど、どうも…」
------------------------------------------------------------------------
春風刀 壱式
レア度C
ATK+75 MDEF+10 SPD+30
[春風の加護]
一定時間ごとにHPを2%ずつ回復する。
特殊武器条件未達成 現在装備不可。
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マサツグが王様の謝罪に驚いては慌てて王様の方に振り向くと既に王様はマサツグから離れており、笑みを浮かべてはいつの間にか一本の刀を手にしていた。その王様の様子にマサツグが困惑し見詰めて居ると、王様はその手にしていた刀をマサツグに手渡し、その後に大会参加で勝利した者用の賞金を一緒に手渡す。恐らくその刀も賞品なのだろうが、マサツグがその刀と賞金を受け取ると違和感を覚える。
{……刀?…だよ…な?……でも何で刀?…
確かに…他のプレイヤーも武器を受け取っている
みたいだけど…
皆…周りに騎士達が持って居る様な銀色の剣だよな?…
何で俺だけ?…}
マサツグが刀を受け取り賞金も手にすると、賞金は自動的に財布の中へと送金され手元には刀だけが残る。その刀は若草色の鞘で柄は少し明るい目の藍色…さすがにその場で抜刀して中身を見る訳には行かないので刀身を見るのは我慢するものの、今までの表彰者と違う物を手渡されて戸惑うと、パッ!…後ろを振り向いては後ろに居る他の表彰者を確認する。するとやはり他の者達はマサツグとは違い西洋風の銀で出来たロングソードを受け取っており、それを掲げては喜んでいる様子が目に映る。それを見てマサツグが不思議な表情のまま考え事をして居ると王様は笑みを浮かべたまま、マサツグに話し掛け始める。
「…意外そうな顔をしているね?……」
「え!?…あっ…いえ…その…」
「ハハハ!…別にいいよ?……
昨日の君と娘の戦いを見せて貰った時…
君の戦い方が如何もオータムクラウド国の
「サムライ」っという物に似ていてね?…
君ならそれを扱えるんじゃないかなと思ったんだけど…
やっぱり他の者達と一緒の…」
「あっ!…い…いえ滅相もない!!
ありがたく頂戴仕る!!!…」
王様が笑みを浮かべてマサツグの表情を口にし、その言葉を聞いてマサツグがハッ!とした様子で慌てて王様の方を振り向いては気まずそうな表情を見せる。そのマサツグの表情を目にしても王様はマサツグを責める事をせず、寧ろ当然の反応と言った様子で笑って見せては何故マサツグだけその刀なのかを説明する。その際まだマサツグの行っていない…恐らく行く事になるであろう別大陸の国を持ち出し、一度は聞いた事の有る職業を口にするとマサツグの為に用意したと王様が答える。しかしマサツグの気を使ってかやっぱり刀からロングソードに変えようかと提案し、その提案にマサツグが慌てて大丈夫と答えると春風刀を見詰めて目を輝かせる。何故なら…
{やった!!…刀だ!!!…
オータムクラウド国に行かないと
手に入らないだろうなぁ…って覚悟してたけど…
この国でも手に入るのか!!…
まぁ、バザーって手も有ったけど…
初心者相手にぼった来る連中がいるって聞いたし……
とにかく思ったより早く手に入って良かった!!!…}
マサツグは大の刀好きなのである。某一狩り行こうぜのゲームでも身の丈以上もある刀を扱い、その他のRPGゲームでもサムライや忍者と言ったJOBを選ぶほど刀好きで武器マニアなのである。勿論数多有る剣や槍、鎚に斧と色々他の武器も集めるのだが特に刀が好きで、ゲーム内で集めた武器を立て掛けるスタンドなどが有ればそこに刀を掛けては交互に交換してジッと小一時間位簡単に目詰めては時間を潰す程の刀好きなのであった。そしてそのマサツグの表情は思いっきり表に出ており、その表情を目にした王様がフッ!…笑みを零すとマサツグに問い掛ける。
「…フフフ!…
どうやら気に入って貰えたみたいだね?…」
「ッ!…はい!!!」
王様がマサツグの様子に安心した様子で問い掛け、その問い掛けにマサツグが気付いた様子で顔を上げると全力で返事をしては満面の笑みを浮かべる。その様子に更に王様は笑い、その両隣ではラインハルトとアムネスが同じ様に笑みを浮かべる。そうして残りの表彰者の授与式も終わり、無事に表彰式を終えると表彰者の各々は城の外へと向かい歩き始め、マサツグのそれについて行く様に歩き始めるとまずはギルドへと言った様子で王城の外を目指すのであった。