-第一章八十八節 デジャヴとシロの異変と朝の会議室-
大型討伐…教祖…魔王に子狼と…色々有った一日から次の日…連休が終わり仕事がある日常に戻ると仕事中に色々な事を思い返しながら職務に就いて居た。魔王に気に入られた事…子狼をペットにした事…そして今日が春王祭である事…まるで復習をするようそんな事を考えつつ一日の仕事を終えて帰宅すると、流れる様にゲームを起動させては直ぐにログインをしていた。いつもと変わらない…そんな光景がある筈なのだが今回は如何やら何かが違い…マサツグがゲームの中で目を覚ますと直ぐに異変に気が付く。
__……シュイィィン!……パチッ!…
{…そうか…
…最後に終わったのって王城の客室だっけか?…
…それにこの服は?…いつ着せられた?…
確か最後は半裸のまま?……
……とにかく起きよ…}
__グッ!………
「……今度は両腕が動かない…」
マサツグが目を覚ますと目の前には見覚えの有る王城・客室の天井…その光景を目にすると改めて最後に終わった所を思い出し、徐に自身の格好を確認するといつ着替えたか分からないシルク地の丈の長い白のシャツが着せられて有った…よくファンタジー物のゲームやアニメで見掛ける孤児院の子供が着ている…そんな感じの服を着ており、いつ着替えさせられたのか?と考えつつもとにかくベッドから起きようと体を動かしてみるが、何故か体を動かす事が出来ない!…前に泊った事の有る部屋…体が動かない…うっ!…頭が!…そんな様子のデジャヴを感じながらも一言呟き、自身の周りを見渡すとマサツグが予想していた通りの光景が目に映る。
「…スゥ……スゥ……ンンッ…」
{…やっぱりかぁ~!…
…でも、リーナがくっ付いているのは右側だけ…
…じゃあ左は?…何で左も?……}
そこにはマサツグの右半身に抱き着く様に…何なら柔こい物を押し当てる様に寝息を立てるネグリジェ姿のリーナが存在し、その様子にマサツグが覚えが有る!と言った様子で戸惑い呆れて居ると、もう一つの疑問が出て来る…その疑問と言うのはリーナが抱き着いているのが右半身だけで有ると言う事で、左半身に関しては何も影響を与える様な事をしていないと言う点である…この時マサツグの体は右左共に動かず起き上がる事が出来ない!…と言う事は左側にも何か居るのか?…と考えたマサツグが確認出来る範囲で首を動かし左側を確認すると、そこには見覚えの無い少女が一人…リーナ同様マサツグの腕にしがみ付くよう寝息を立てては拘束している図が目に映る。
__スゥ……スゥ…
「……ん?…え?…あれ?…
ちょっと待って?…この子は?…」
__スゥ……スゥ…
「え?…服も来てない…
…ってそう言えばシロは?……
…居ない?…」
マサツグの左腕にくっ付いて安心し切った表情で眠りに就いており…マサツグが見覚えの無い少女が居る事に戸惑いを覚えて居ると、その少女が服を着ていない!…素っ裸で居る事に気が付き慌て始める!…更にここで昨日ペットにした筈の子狼・シロも居ない事に気が付き、辺りを見渡すがやはり何処にもその子狼の姿は無く…色々と最初から困惑を覚える状況にマサツグは戸惑う…が、それも慣れた様子で徐々に達観し始めるとこの後の展開を考え始める。
{……ま~たこの展開…ラッキースケベですよ?…
更にこの様子だとお約束コースですよ?…
タイミング良くリーナが起きたらまずはこの状況に
ご挨拶の顔面パンチ!…次に騒ぎを聞きつけた将軍が
走って来てはまたか!?…如何なったの!?…
の事情聴取!…いよいよ騒ぎが大きくなった所で
左側のこの子が起きて更にカオス状態になって?…
その様子を見に来たアムネスが扉の影からほくそ笑む!…
…如何よ?この展開…我ながら嫌な名推理だな?…}
「…ッ!…う、うぅ~ん…
…ふっ!…ああぁ~……あぁ!……ッ?…」
__……パチパチッ…パチパチッ…ッ!?…
マサツグが心の中でこの状況に対してツッコミを入れながら、一人頭の中でリーナが起きてからの展開を考え出し…詰まる事無くポンポンと出て来る展開を繋げて自身で名推理と皮肉を込めて結末を考えて居ると、その推理は当たっているとばかりにリーナが眠い目を擦りながら起き出す。ゆっくりと体を起こし目を覚ますとマサツグが隣に居る事に気が付いたのかパチパチと何度か瞬きをして見せ、徐々に酷く動揺した表情を見せては以前と同じよう声にならない悲鳴を上げて顔を真っ赤にし始める!…
「ッ~~~~~!!!!」
「……おはよう御座います。」
酷く動揺しているリーナに対しマサツグが覚悟を決めた様子で挨拶をすると、リーナはやはり拳を握り出し!…その拳を静かにマサツグへ向けて構え出すと、マサツグは殴られる衝撃に供えて体に力を入れ始める!…奥歯を噛み締め腹筋に力を!…動けないながらも出来るだけの防御の体勢を整えるとリーナは顔を真っ赤にした様子でマサツグを見下ろし!…これまた以前と同じで徐々に声が出始めたかと思えば王城内に響く勢いでまたもや叫び出し、キレのある右ストレートをマサツグの鳩尾に叩き込む!
「キッ!…キッ!!…キッ!!!…
ッ~~~~!!!!…
きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!…」
__フォンッ!!…ドゴスッ!!!…
「ッ~~~!!!…」
ここまで予定調和…そんな感じで特に動けないマサツグがリーナから右ストレートを貰うとこれまた以前と同じ様にダメージを受ける!…しかし今回は予め腹筋を固めていたお陰か、それともレベルが上がっていたお陰か…ダメージを四割に抑える事に成功するのだがそれでもその一撃は重く!…今度はマサツグが声にならない悲鳴を上げると、リーナが慌ててマサツグから距離を取ってはまるで威嚇する猫の様に息を切らし出す!…
__フゥ~~~~ッ!!…フゥ~~~~ッ!!!!…
「……んん~…ふあぁ~…ふぅ…
おはようございます…ご主人様…」
「うおぉぉぉ!…
…えぇ?…ご、ご主人様?…」
距離を取ると言ってもベッドの上なので手を伸ばせば十分届く距離に居るのだが、一撃を貰ったマサツグはそれ所では無く悶絶し…そしてマサツグの左側でくっ付いて寝ていた幼女も先程の騒動で目を覚まし、欠伸をしながら体を起こすと眠そうな表情でマサツグ達に挨拶をし始める。…しかしその第一声は何故かご主人様と言う…まるで誰かと主従関係を持っているかの様な一言にマサツグが悶絶しながらも戸惑い出し、その一言に疑問を持ちつつ改めてその幼女の容姿に目を向けると、そこには幾つか見覚えの有る点が見られる事に気が付く。
__ッ!……じぃ~~……
「…ッ?……ご主人様?…」
__…ぽふっ!……なでなでなでなで…
「ッ!…んふふふ♪…ごしゅじんさまぁ~♪…」
寝起きでよく見るまで気付かなかったが少女はケモミミ幼女で狼の耳を生やしており、毛並み…もとい髪色は白銀とシロに似た綺麗な髪色をしていて、お尻に白銀の尻尾を生やしている事が見て取れた!…癖っ毛の有るセミロングヘアーで目はクリクリッと丸く、明るいルビーレッドの目をしていてジッとマサツグの事を見詰め続けている。身長は約90cm位だろうか小学校一年生の大きさの幼女で内股にペタンと座っては眠い目を擦っていた…そんな幼女の容姿を簡単に説明するなら某・FG○のダブルダガー使いのクリティカルアサシン幼女と言った所か、更に細かく言うとその幼女よりは優しい顔立ちをしており、胸も気持ちこっちの方が大きい…とにかくその幼女の特徴…シロに似た特徴を見てはマサツグがある事に気付いた様子を見せ、恐る恐るその幼女の頭を撫で始めると幼女は嬉しそうにマサツグの手へじゃれ付き始める。そしてその反応を見たマサツグが戸惑った表情を見せると徐に幼女へ質問し出す!…
「…まさかと思うけど…ひょっとして…
…お前…シロ…なのか?…」
「ッ!?…え?…えぇ!?…」
「…ッ!…はいです!!!」
「………。」
マサツグはまさかと言った様子でその幼女にシロであるかどうかの確認をすると、その質問をしたマサツグにリーナが戸惑いの表情を浮かべ…何なら幼女が居る事に漸く気付いた様子で困惑し、幼女は幼女で自身の名前が呼ばれた事に反応して尻尾を振り出し、マサツグに手を挙げて笑顔で元気良く返事をして見せると、その返事にマサツグがフリーズする…まさかの子狼が人型…しかも幼女に化けた?…てかメスだったのか!?…とにかく戸惑ったままシロの頭に手を置いた状態で固まって居ると、マサツグは心の中で今目の前の真実に対して騒ぎ倒して居た!…
{……え?…ちょっと待て!?…
マジでこの幼女があのシロ!?…
てかメスだったの!?…
そりゃ確かに性別は確かめてなかったけど…
じゃなくて!!…何で人型に化けたんだ!?…
まぁ…一緒に冒険する上で人型の方が
色々と助かるんだが…
…とにかく一体何が如何なって!?…}
「…ッ!…へックシュン!!…」
マサツグはただただ如何してシロが子狼から人型にジョブチェンジしたのかと驚愕すると、心の中で叫び倒し!…自問自答を続けるが答えが出る筈も無くただシロを目の前にして呆然としていると、リーナもシロが幼女化した事に戸惑っては困惑の視線を向け始める!…そうして裸のまま放置して居るとシロは寒いのか突如とし可愛らしくクシャミを一つして、マサツグがそのクシャミでハッと我に返り!…シロの格好を改めて目にすると慌てて自身のアイテムポーチから服になりそうな物を探し始める!…
「ッ!?…あっ!…あぁ!!…
とにかく服!!…えぇ~っと!!…
何か!!…何か着る物を!!…
…ッ!…替えの服だけどこれで良いか!?…
とにかくこれを!!…
お古で悪いけどこれを着なさい!」
__バッ!!……スッ…
「ッ!……スンスン…スンスン…
えへへ♥…ご主人様のにおいがする♥…」
「ッ!?…犯罪の匂いがするから止めて!?…」
__ゴソゴソ…ゴソゴソ…ダボォ…
マサツグが慌てながらも自身のアイテムポーチから替えのTシャツを取り出すとシロへ手渡す!…その際他に何か無いかを探すのだが有るのはコボルド達が落としたギリースーツに、ボロボロに破壊された王国軍軽装と…真面な物がなく、他に服として使えそうな物も何一つとして持ってはいなかった!…シロはマサツグから手渡されたTシャツを受け取るとそのTシャツをジッと見詰めては徐に匂いを嗅ぎ出し、マサツグの匂いがすると言った様子で頬を染めて笑みを浮かべると尻尾を振って見せ、その反応を見たマサツグが慌てて止めるよう注意をしていると、その様子を何故か傍らで…羨ましそうに見詰めるリーナの姿があった!…そしてシロはマサツグのTシャツを着て見せるのだが当然サイズはマサツグに合わせて有るのでブカブカで…それを見たマサツグが今日の予定を決めると取り敢えずベッドから降りる。
「んしょ!…如何ですかぁ?」
{…言わずもがなだな……
取り合えず…今日の目的は服屋に直行だな……}
「……ふぅ…」
__バサァ!……ッ!!…
「……あっ!…そうか…
替えは……如何すっかな?…」
マサツグがシロのTシャツ姿を見て行き先を決めて居ると身支度を整え始めるのだが…その際いつもの癖で着替えようとすると、シロに替えのTシャツを渡した事にハッと気が付く。つい先程の出来事も忘れる位にシロの人型化に動揺していたのかその孤児院の服を脱ぐ直前で気付き…自分は如何しようかと考えて居ると、服を脱ごうとして居るマサツグにリーナは動揺しては慌ててマサツグの部屋から飛び出して行く!…
__バンッ!!…ダダダダダダ!!!…
「ッ!?…え?…あれ?…リーナ?…」
{…マサツグの奴!!…
私が居ると言うのに堂々と着替え出して!?…
思わず動揺して飛び出してしまったではないか!?…}
__うわあああぁぁぁぁぁ!!!!……え?…
勢い良く扉を開けては全速力でマサツグの部屋を後にし、そのリーナの様子にマサツグが振り返り戸惑って居ると、リーナはマサツグの体が目に焼き付いた様子で赤面する!…この時リーナは悶々とした様子で城内を駆け回り、叫び声が王城内に反響すると言った珍事を起こすのだが、その原因が自分だと知らないマサツグはただそのリーナの様子に戸惑い、反響し聞こえて来るリーナの叫び声に困惑を覚える。昨日ずっと半裸で居ただろうが…この場にモツが居たら間違いなくそうツッコむであろうが残念ながらモツはこの場には居らず…思春期の様な反応を見せるリーナにマサツグが困惑しつつ、孤児院の様な服をそのまま借りる事にすると身支度を整え始める。
__ガチャガチャ…ギュッ…ギュッ…スチャッ…
「…よし!…
とにかくこんなもんで良いかな?……シロは?」
__ダボォ……ピシッ!!…
「大丈夫です、ご主人様!!!」
マサツグがいつもの様に大剣・刀を装備し、アイテムポーチを身に着けると今着て居る孤児院の服との具合を確かめ始める。恐らく無いとは思うがもし戦闘になった時の事を考えると色々と大変な事になるので、動きの妨げにならない事を十分に確認すると、今度はシロの方を振り向いて様子を確かめる。するとそこにはやはりダボダボの格好で準備OKと言った様子で返事をし敬礼するシロの姿が有り…明らかに準備OKでは無い姿にマサツグが思わず苦笑いすると、徐にアイテムポーチから皮紐を一本取り出し始める。
__ゴソゴソ……シュッ!…
「ッ?……」
__シュッ!…シュッ!…キュッ!!…
「…これでまだ幾分は動き易くはなったろ?…」
アイテムポーチから取り出した皮紐をシロの腰に括り出すとまるで縄文…或いは弥生時代の人間の様に動き易い格好にする。動き易いと言っても元がダボダボの分ちょっと激しい運動をすると直ぐにポロッと行きそうになるのだが…無いよりはマシと言った様子でシロが動き易いであろう格好にすると、マサツグはシロに確認するよう声を掛ける。するとシロはその言葉を聞いて軽く体を捻ったり動かしたりと色々しては確認し、マサツグの言う通り動き易いと感じた様子で目を見開くと驚いた表情でマサツグに返事をする。
__キュッ!…キュッ!…
…クイッ!…クイッ!……ッ!!…
「すごいですご主人様!!!…動き易いです!!!」
「あはははは…そうかそうか!…
…じゃあ、行くとしますか!」
「はいです!!!」
まるで軽い革命が起きたと言った様子で喜び驚くシロの表情と返事に、マサツグがそこまでか?…と言った戸惑いを覚えるも漸く本当の意味で準備が出来たと確認すると、自身が泊まっていた客室を後にする…そうして今だ王城内部を把握していないマサツグはシロを連れて唯一分かる王城の大広間へと向かい出すのだが、その道中たまたま会議室の前を通り掛かると部屋の中から声が聞こえて来るのを感じ取り…恐る恐る部屋の中を覗き込むと、そこには朝早くからスティングが会議室で今日開催の春王祭の運営を仕切っている様子が目に映る。
__…コッ…コッ…コッ…コッ……ッ!…
「…ではその段取りでお願いするよ?
後巡回の順番はここを初めに
クランベルズ・ブルーベルズ・ラズベルズ…
スネークベルズ・ブラックベルズ・ツリーベルズ…
最後はちゃんとここに戻って来るって方向で…
…で、料理の方は?…」
「それにつきましては滞りなく!…
昨日の時点でコック達総出で全ての下準備を終わらせ、
今日料理を仕上げて出来立てを民衆に配って居ると
報告を受けて居ます!…
何も問題は起きてはいません!…」
「よし!…じゃあそのまま進めてくれ!…
あっ!…後警備の方も厳重に!…
もう無いと思いたいがまだ残党が居るかもしれないし…
何より祭りに浮かれて暴れる者も出て来ると思う!…
安全を第一に頼む!…」
「畏まりました!…」
会議室ではスティングを中心に貴族や役人がてんやわんやで動き回り、春王祭に際してのイベントの準備や予定の確認…警備の様子など色々な事が急ピッチで進められていた。その際凄いと感じたのはスティングの処理能力とそれに付いて来れる役人達の有能さ…止まる様子など微塵も感じさせないその判断力にここでも現実との違いに落胆してしまいそうになるのだが、直ぐに落胆して居ても仕方が無いと気を取り直すと、スティングに挨拶するかしないかで悩み始める…
{……忙しそうだなぁ…
ここを出る前に挨拶をしたいとは思っていたんだが…
寧ろこの状態だと…いやいや…でも礼儀ってモンが!…
とは言え…なぁ?…如何したもんか?…}
「……ッ?…ご主人様?…」
「うぅ~~ん……」
「ッ!……やぁ、マサツグ君!…
今朝は……ッ?…」
会議室ではスティングがあれこれ指示を出して忙しそう…かと言って泊めて貰ったのにお礼も無く黙って出て行くのは失礼!…そんな葛藤をしつつ会議室の様子を不思議そうにして居るシロと一緒になって覗き込み、唸りながら如何するかと考えて居るとスティングの方がマサツグ達の事に気が付いた様子で声を掛け始める。しかしその挨拶もシロの姿を見た途端にピタッと止まると困惑の表情に変わり出し、シロは何も言わずただスティングの事をジッと見詰めては不思議そうな表情を見せ、スティングも表情そのままにマサツグへ尋ねるよう声を掛け直し出すと挨拶は突如として質問へと変わる。
「……えぇ~っと…マサツグ君…その子は?…」
「ッ!…シロです!!」
「え?…シロ?…君かね?…この子は?…」
「えぇ~っと…簡単に説明すると…
あのフェンリルの子供です…」
スティングがマサツグの近くに居るケモミミ幼女の正体について尋ね出すと、シロは自分の事を言われていると理解した様子で自己紹介をする!…スティングに対して自信満々の笑みを浮かべ、手を挙げて返事をすると尻尾を振って見せる!…その様子にスティングは困惑しながらもシロに微笑んで手を振り返して見せると、もう一度マサツグにケモミミ幼女の正体について尋ね直し、マサツグが困惑気味にシロがあの子狼である事を話すと、スティングだけでなくその場の全員が突如として驚いた反応を見せる。
__どよッ!?…
「ッ!?!?……いやぁ…
…あっはっはっは!…驚いた…
君…人にも化けられるんだね?…
驚いたけど…
今後も君のご主人様と共によろしくね?…
シロ君!…」
全員がまずマサツグの口から出て来たフェンリルの名前に戸惑う!…やはりこのゲーム内でも屈指の知名度を誇っているのか全員が途端に警戒した様子でシロを見詰め、スティングもマサツグから正体を聞いた所で驚いた表情を見せると苦笑いをする!…シロがフェンリルである事は既に理解して居たもののまさか人型になるとは!?…そんな驚きを誤魔化す様に苦笑いをするのだが、その驚かれている当本人はと言うと今だ元気一杯の表情で笑みを浮かべては尻尾を振っており、本当にこの子狼があのフェンリルなのか?と疑問を持たれつつ…スティングから宜しくと驚かれながらも返事を貰うと、シロはスティングに元気良く返事をする!
「はいです!!!」
「あははは…」
{…さすが王様…相手が誰であろうと柔軟な対応……
俺なんて最初ただ何が合った!?…って驚いたのに……}
__……ッ!…ヴヴン!……
シロがスティングから返事を貰った事に喜び尻尾を振る後ろで、マサツグもスティング達の様子に釣られて苦笑いをすると、スティングの大人の対応力に感心する。自分が最初シロを見つけた時の事を思い出してはただ戸惑ったと言った様子で考え、自身の突発的な出来事に対する耐性が無い事を改めて自覚して居ると、ふとある事が気になり出す…そしてそれを確認するよう一度ミニマップを確認するがその反応は何処にも無く…その事を尋ねる様に…話のきっかけとしてスティングに話し掛けると、スティングの方もマサツグ達に用が有ると言った様子で話し出す。
「……あのぅ…そう言えばモツは?…」
「ッ!…あぁ!…
そう言えばそのモツ君から伝言を預かっていたんだ。」
「え?…」
「モツ君はもう行ったよ…
何でも急に行かないといけない所が出来たとかでね?…
詳しい場所は聞いて居ないけど去り際に君へ伝言を…
…えぇ~ッと…確か……あっ!…
これだこれだ!…はい…」
マサツグがモツの居場所についてスティングに質問をすると、スティングはそのモツについての伝言が有ると言って席を立ち、一時休憩と言った様子でマサツグの方へ歩いて来る。その際マサツグも慌ててスティングの方へと駆け寄り、その用件を聞こうと会議室の中に入ると机の上には重要書類が散乱しており…その様子にマサツグが戸惑いを覚えて居ると、スティングは伝言を口頭では無く手紙として手渡し、マサツグはその手紙を受け取ると内容を確認し始める。
__カサッ……カサッ…パラッ…
『急でスマンがパーティを解消させて貰った!…
今から行こうと思っている場所が実はソロで
無いといけない場所で…
別にヤブに不満があったとかじゃないから安心してくれ!
…あのバルデウスと戦って良く分かったけど……
いや戦わなくても分かってた事だけど…
やっぱ俺達まだまだだなって事でついでに修行を少々!…
また何処かで会う事が有ったらよろしく頼む!…
随分一方的な事を書いて申し訳ないと思うが
そう言う事だから!…じゃ、アイツじゃないけど…
負けるなよ?…』
「…何やらモツ君…慌てて居た様にも見えたが?…
…問題は?…」
スティングから手渡された手紙にはモツが書いたであろう文字でパーティを解散した理由・行き先・謝罪などが書かれており、改めてスキル・レベル上げの旅に出ると決意表明されたモツの文章が手紙に書かれてあった。それを見たマサツグはやはりバルデウスが気になるのかと言った様子でモツの動向を気に掛して居ると、マサツグとモツの仲を心配した様子でスティングが手紙の内容について質問をし…マサツグが心配は要らないと言った様子でスティングに返事をすると、モツの伝言方法にツッコミを入れ始める!…
「あぁ~…無いです。全然…これっぽっちも!……
…てか、一国の王様を伝言板代わりに使うなよ!?…」
「あはははは…別に気にしてはいないから良いけど…」
「ッ!…色々とすいません!!…」
{…王様は分かる人で助かったぁ~…
本当に良く出来た人だなぁ……
…とは言え、俺もさすがに…装備がなぁ~…
レベル上げは当然として装備も如何にかしたい!…
…それも視野に入れて……まずはとにかく…}
__……ッ!…チラッ…ッ?…
相手は一国の王様…それを伝言板代わりに使うとは!?…ただ戸惑いしか覚えないモツの豪胆ぶりにマサツグが戸惑いを覚えて居ると、スティングはマサツグの言葉に苦笑いをしては気にしていないと言い…その返事を聞いてマサツグが改めてスティングの懐の深さに感心して居ると、手紙の内容に触発された様子でモツ同様…レベルアップに装備調達と色々な考え始める!…今後の冒険を踏まえて大事な事!…そんな事を考えつつ旗と気が付いた様子で自身の格好を確認すると今だ自分が孤児院に居る様な服装である事に気が付き、チラッとシロを確認するとダボダボTシャツ…おまけに裸足と色々と痛々しく誤解を受けそうと考えると、改めて行き先を確定させる!…
{……とにかく服を買いに行こう!!!…
このままだと色々誤解されかねん!!!…}
「…ご主人様?……」
__…ッ!…ポンッ…
なでなでなでなで……ッ~~♪…
「……とにかく色々お世話になりました…
そろそろ行こうと思います!」
マサツグが改めて服屋に行く!と考え決意すると、その様子にシロが不思議そうな表情を見せる。先程のチラ見も相まってかシロが口に人差し指を当ててはマサツグの顔を覗き込むよう様子を伺い、その様子にマサツグが気が付きシロの頭の上に手を置くと、頭を優しく撫で始める。特段何も警戒する事は無い…そう安心させるよう撫でるとシロは撫でられて嬉しいのかマサツグの脚にじゃれ付き、シロを安心させた所でマサツグが改めてスティングにお礼を言うと、スティングが逆にお礼を言うのはこっちだとばかりに慌てて深く感謝し始める!…
「ッ!…いや!…こちらこそ!……
最初の出会いから国の危機まで助けて貰ったんだ!…
寧ろ感謝し足りない位さ!…
何も出来なくて申し訳ない!…
だがお礼の言葉だけは言わせて貰う!!…
本当に!!…有難う!!!…」
__バッ!!…
「えっ!?…ちょ!?…待って!?…
そんな止めて下さい!!…」
__ババッ!!!…
「うええぇぇぇ!?!?…」
最初のリーナの出会いからカルト教団壊滅まで!…本当に助かったと感謝した様子でスティングがマサツグに頭を下げると、当然マサツグが慌て出し…頭を下げるスティングの後ろで役人や貴族達もが同じ様にマサツグに頭を下げ始め、その光景を目にしてマサツグが落ち着かないと言った様子で慌て出すと、ただ自分はゲームのイベントに巻き込まれて、なる様になっただけと困惑する。別に感謝される様な事はしていないとマサツグがその場で固まり…シロもマサツグの固まる様子を見て不思議そうな表情を見せる!…
__……ッ?…
{な!?…何なんだこれ!?…
一体如何しろと!?…誰か助けて!…}
__コッ…コッ…コッ…コッ…
「貴方ぁ~?…ちょっと気になる事が…
あら?……ッ!…」
スティング達一同が頭を下げる事によって会議室が奇妙な雰囲気に飲まれ始めると誰もが動けず…マサツグがその状態に戸惑っては如何にかしてくれ!…と心の中で叫んでいると、何の脈絡も無く会議室にアムネスがやって来る。アムネス自身何か相談が有って来たのだろうが、来て早々頭を下げるスティング達の姿を見る事となり…その光景に若干の困惑した後、更に視線の下の方で白い影を見つけると今度は下を向きその影の正体を確かめる。影の正体は言わずもがなシロの影であり、シロを見つけるなりこれまた困惑した様子を見せるのだがさすが元冒険者と言った所か、直ぐにそのケモミミ幼女の正体をあの子狼と看破する。
「……貴方…もしかして?…あの子狼ちゃん?…」
「ッ!…はいです!!…シロです!!!」
「ッ!…そう!…貴方人型に!…」
__スッ……ポンッ!…なでなでなでなで…
若干の間が有ったもののアムネスがシロを看破し、その確認の言葉を掛けるとシロはスティングの時と同様…自信満々の笑みを浮かべ、手を挙げて自己紹介をしては尻尾を振って見せる!…その反応を見てアムネスが可愛いと感じたのか若干頬を赤く染めては上機嫌で返事をし、シロと同じ目線まで屈んで頭を撫で始めると、シロは撫でられて嬉しいのか笑顔を見せては尻尾を振り出す。そうしてシロとコンタクトを取った所でアムネスはずっとシロの頭を撫で続け、突如ハッと思い付いた表情を見せるとシロにある事を吹き込み始める!…
「……ッ!…
と言う事はマサツグ君がご主人様って事よね?…いい?…
ご主人様にしっかりご奉仕するのですよ?…例えば…」
「ちょっ!?…変な事を吹き込まないで下さい!!!」
「あら?…そんなにムキにならなくても…
冗談ですわよ?…」
{アンタが言うと冗談に聞えんのだが?…}
アムネスが何やら良からぬ事をシロに吹き込もうとするとマサツグが慌てて止めに入り、その吹き込もうとした事にマサツグが戸惑いながらもアムネスに注意をすると、アムネスは妖しく笑みを浮かべては冗談と笑い始める!…その言葉と態度から明らかに冗談に聞こえないマサツグはシロを自身の後ろに隠してはアムネスに警戒をして見せ、その様子にアムネスが更に楽しそうに笑って居ると、シロが不思議そうにマサツグへ質問をする。
「……ご主人様?…ご奉仕って何で?…」
「忘れなさい!…」
__ン゛ッン゛ン゛…
興味を持った様子でシロがご奉仕の意味についてマサツグへ質問し始めると、慌ててマサツグが忘れるよう言い聞かせる!…その言葉にシロは不思議そうに首を傾げては若干戸惑った反応を見せ、マサツグとアムネスの二人を交互に見詰めていると、ここでスティングが二人の仲裁に入るよう咳払いを一つする!…何時頭を上げたのか分からないスティングもやり過ぎと感じた様子でチラッとアムネスを見ると、さすがのアムネスもスティングには弱いのか引き下がり…反省した様子で立ち上る。
「ッ!…はぁ~…はい…ゴメンナサイ!…
…っで、次は何処に行こうと思っているの?…」
「え?…何処って?…」
「何処って…国よ!国!!…
このままスプリングフィールドに
滞在し続ける訳じゃ無いでしょ?…
冒険者なんだから?…
…恐らくはそろそろ外に視線を
向けたいんじゃない?…」
「え?…あっ…あぁ…
まぁ…考えて居ると言えば考えてますけど…」
いつの間にか役人や貴族達も頭を上げては作業に戻っており、アムネスがフランクに次の行き先についてマサツグへ尋ね出すと、その問い掛けの答えにマサツグが戸惑う…思わず服屋と答えそうにもなるのだがグッと飲み込み!…何を尋ねているのか細かく質問をすると、アムネスは他の大陸の話をマサツグに持ち掛け始める。その話を聞いてマサツグが漸く理解すると戸惑いながらも一応は考えて居るとアムネスに話し、たまたまマサツグの返事を聞いたスティングまでもがその話に興味を持ち出すと、話はその大陸の方へと進み出すのだが…この時その話を良しとしない者が一人…会議室の扉の陰に隠れて話を聞いているのであった。




